局地営業・小規模1位採用も「弱者の戦略」でやる!
ランチェスター差別化戦略の考えを応用した求人広告
しばらく前のことです。ある日、通勤途中で買い物をしているコンビニエンスストアの店頭に求人広告が貼り出されていました。
このお店はコンビニエンスストアの業界で1番のシェアを獲得しているFc店です。
しかし、このお店の周辺は、競合するコンビニエンスストアはもちろん、ファーストフード店やスーパーなど、さまざまなお店や会社がひしめいている人材確保の激戦区なのです。
業界で1番だと言っても、この地域内においては同業種も多数あり、また異業種で競合する会社がいくつもあるので、アルバイトをする人たちにとっては、「ここで働きたい」という理由にはなりません。
また、「あいている時間を利用して、バイトを始めてみませんか?」という当店からのひとことは、他の会社も同じような表現を使っています。
つまり当たり障りのないものになっていることは、だれがみても分かる。
スタッフ募集のポスターは、ずっと定位置に貼り出されたままでした。
ランチェスター差別化戦略を応用した求人のやり方
ある日のことです。
定位置に貼り出されていたいつものスタッフ募集のポスターが消えて、新しいポスターへと張り替えられていました。
それからしばらくすると、いつものレジの中に若葉マークと研修中のネームカードをつけた人が立っていました。「人が増えたの?」ともう一人のスタッフに聞くと「はい。よかったです」と嬉しそうに、新しいスタッフを紹介してくれました。
「いったい、何が起きたのか」、尋ねると、新しく貼ったアルバイト募集のポスターの内容が「とても反響がよかった」というのです。
新しく貼り出したアルバイト募集のポスター?
確認をしてみると、時間あたりの金額を競合する他社より増やしたわけでもなく、採用のお祝い金「1万円!」と特別に何かをプレゼントすることもありませんでした。
これまでみてきたアルバイト募集の常識とは、真逆の発想でアルバイト募集のポスターは作られていました。
・「働く時間」は全く書かれていません。
・「時給の金額」も明らかしていません。
・カッコよくデザインし直したワケでもありません。
アルバイトさん パートさん 募集中とスタッフの方が手書きで書いたいたってカンタンなモノでした。
私たちは、従業員さんが働き安い職場づくりを心がけています。笑い越えが聞こえてくるような明るいお店を目指しています。
①家族・学校の時間が最優先です
②学校行事の時には休めます
③お子様の発熱などの時は休めます
④急な用事が入ったとき、シフト交代が可能です
子育てしている人に優しい職場だということがよく分かります。また時間と給料だけの貼り紙では感じることのできない人の温かみや安心感が手書きで伝わってきませんか。
これなら「ちょっと連絡してみようかなぁ」という気持ちになると感じました。
私の分析では、このアルバイト募集のポスターはランチェスター差別化戦略の考えを応用して作られています。差別化戦略とは、対象となるモノゴトを細かく分けて、自社の勝てる領域を見つけ出し、資源を集中することをいいます。つまり「効率的に成果を得ることができる」考え方です。
じっさいに、このアルバイト募集のポスターは、対象をご近所さんで、幼いお子様をもつ主婦の方に特定していることがよく分かります。また、幼いお子様をもつ主婦の困り事や急なトラブルにも対応できる職場環境やシステムを強みとして提案していることが好感を得られていると考えられます。
弱者の戦略
1.子どもさんをもつ主婦に特定していること=対象の細分化
2.お店から近隣エリアの方を対象としていること=局地営業
3.シフト交代が可能な仕組みがあること=職場環境の強み
細分化した対象で1位を目指すことを小規模一位主義といい、また、対象となる地域を広げるのではなく、狭く限定して有意に活動することを局地戦といいます。
これがまさに弱者の戦略です。
競合他社がひしめく激戦区であるにも関わらず、アルバイト募集に成功したのは戦略的な考えで採用の取り組みをおこなったからだとはっきり分析することができます。
強者の戦略
一方で強者の戦略には同質化戦略という考え方があります。同質化戦略をカンタンに説明すると、モノ真似をすることです。競合するライバルが何か違ったことを始めたときに、すかさず対応するのです。また競争条件の有利な強者は対象エリアを限定することなく広げ、ある分野で1位になったあと、次に近い分野にも力をいれて1位になることを目指します。そしてその数を多くするとより強さが維持することができます。このやり方を総合1位主義といいます。
ランチェスター法則には2つの戦略があります。
ちなみに、市場占有率が26.1%に到達したときの1位の会社を強者と考えています。市場占有率とは、ある特定の市場全体の中で、ある商品やサービスがどれくらいの割合を占めているかを示す比率のことをいいます。
ある特定市場全体の中で1位以下の会社は弱者と位置づけて考えて良いでしょう。
強者の戦略と弱者の戦略。この2つの戦略は考え方が全く違っており、取り組み方も違うことが理解いただけましたか。