【4】ご近所で、目指すお家の場所を尋ねるのはNG
約束の時間も刻一刻と迫ってきて、真冬だというのに額にうっすらと汗をかき始めると、
さらに気持ちが動転してきて、目指すお家が見つけられなくなることをよく経験しました。
そんな時についついやってしまう間違いが、その場の通行中の人に、
「このあたりに、○○さんというお家、ご存知ありませんか?」と尋ねてしまうことです。
実際、「そのお家なら、あそこですよ」と救われることがほとんどなのですが、
お申し出者にとっては眉をひそめたいことなのです。
その理由は、前回【3】でもあった理由と同類で、「あのお家になにがあったのかしら?」
と近所の人に詮索されるのが困るということが概ねの理由です。
お申し出者を取り巻く環境にも気を配り、お申し出者の自尊心を傷つける
ことのないように注意した振る舞いを心がけなければなりません。
【5】マフラーを取り、コートは脱いでからインターホンをプッシュ
真冬の最中の訪問の際に特に気をつけたいのは、マフラーやコートの扱いです。
お申し出者宅の少し離れた交差点やとなりの辻でコートやマフラーを脱ぎ、
バサバサ、バラバラしないように軽くまとめます。
まとめ方は、コートは袖をそのままにして、大きく裏返します。
そして、両方部分からすそまでを一面として順番に中央に織り込みます、つまり、3つ折りですね。
ただしその前に胴の部分にマフラーを挟み込む。
そうすると、マフラーや両袖はコートの中に隠れてしまって、バサバサとすることがなくなります。
コートからマフラーや袖がバサバサと飛び出しているようでは、「どんくさそうな担当者」
という第一印象を与えてしまうので神経を払ってくださいね。
そのようにして3つ折りになったコートを、どちらかの腕にかけましょう。
【6】インターホンに大きな声で話しかけない
ついつい一生懸命になり、インターホン越しに元気のいい声で、
社名や氏名を名乗ったりすることはありませんか?
これも、前出の【3】や【4】と同じ理由で注意しなければなりません。
インターホンは口をマイク部分に近づけると十分、相手には聞こえる音声になりますから、
あまりご近所の人に聞かれないように気を配ってあいさつしましょう。
【7】名刺は、名刺入れから2~3枚出し、スーツのポケットに準備
本来、理想的なビジネスマナーで教わる名刺交換は、相手の正面に立ち、名刺入れから
名刺を取り出し、名刺入れをトレー代わりに、名刺入れの上に名刺を一旦乗せてから、
名刺だけを差し出すということですが、相手が消費者としての立場の場合は、このような
堅苦しい名刺交換は不要です。
しかも、「交換」ではないですから。というのも、あちらからお名刺をいただけることは
ほとんどありませんので、相手の気軽さレベルに雰囲気を合わせることが空気の読める、
気の利く対応担当者という印象づくりになります。
具体的には、交差点あたりでコートを脱いだと同時に、名刺入れから名刺を2~3枚取り出し、
背広の胸ポケットや、腰ポケットに忍ばせておきます。お電話でお話しした相手はおひとりでも、
お家の中では相手がおひとりだとは限りませんので2~3枚。
相手はビジネス関係を築こうとしているわけではありませんので、いつもの取引企業の方のように、
名刺交換のタイミングや、あなたが差し出す名刺の用意ができるまで待ってくれたりもしませんので、
自分で名刺を差し出すべきタイミングを見計らわなければなりません。
その瞬間になめらかに差し出せる対応担当者であれば、
お申し出者も、あなたの聡明さや、気が利く姿に少し気持ちを和らげられることもあり得ます。
つまり、あまりに堅苦しい態度は、相手の警戒心を高めることにもなりますので、
通常のビジネスマナー風の名刺交換は不要です。
中村友妃子
【出所・参考文献】
『クレーム対応のプロが教える“最善の話し方”』(青春出版社刊)