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第10回 「ユーロ危機」は千載一遇のチャンス
~「超円高」になど負けてたまるか!~

次の売れ筋をつかむ術

ヨーロッパの信用不安が世界経済の緊張が高め、景気悪化のリスクが強まっている。

ドイツのメルケル首相が、2011年10月18日の独仏会談の後に述べた通り、
「数十年にわたって積み上げられて来た債務を、一度の会議で終わらせられるものではない。
長期にわたる厳しい対策が必要だ」。

この「信用不安」は、一進一退を繰り返しながら、相当期間続くと腹をくくった方が良い。

各国の中でも、この「ユーロ危機」のとばっちりを最も大きく受けているのは日本だ。
円が比較的安心だという理由から、ユーロやドルなどあらゆる通貨に対して「超円高」状態に陥っている。

しかし、変化はチャンス!いつの時代もどの国も常に問題を抱えている。
今こそ、内向きにならず、起業家精神を奮い起して商機をつかむべきだ!


◆「ユーロ危機」「超円高」の元凶、ヨーロッパの<ブタ諸国>

ユーロが、1999年1月の導入以来、最大の危機を迎えている。

ノーベル賞経済学者でマネタリストの故ミルトン・フリードマンは、ユーロ発足以前に、
「世界経済が真の難題に遭遇するとき、ユーロ圏は崩壊する。ユーロの寿命は15年」と予言した。
それが正しければ、ユーロの命はあと3年しかない。

ヨーロッパ各国は第一次、第二次大戦で互いに大きく傷ついたため、もう二度と戦争をしてはならないという総意の下、
EUが創設された。

そして、経済的互恵関係を強化しようと、経済学史上最大の社会実験であるユーロが誕生した。
国家を超えた単一通貨はヨーロッパの理想である。


しかし、「PIGS」(ピッグス)問題が、その理想を内側から破壊し始めた。

「PIGS」とは、ポルトガル、アイルランドとイタリア、ギリシャ、スペインの頭文字を並べた言葉だ。

2008年頃から英米の経済ジャーナリストが軽蔑的に使いはじめた単語で、文字通り、〈ブタ諸国〉と呼ばれる
ユーロ圏の劣等生国家を指す。

金融危機以前、「PIGS」は、ユーロ加盟の恩恵を最も受けていた。
ユーロ導入によって政策金利が一元化された結果、実態経済に比べて低い金利水準を享受することとなり、
2006年頃までは過剰流動性を背景とする不動産投資による高成長を謳歌した。

しかし、2007年夏以降の世界的な信用収縮、2008年9月のリーマン・ショックによって、スペインを中心とする
PIGSの不動産バブルは崩壊した。

さらに、そこに、2009年11月のドバイ・ショックが追い打ちをかけた。
ドバイに資金を貸し込んでいた欧州系金融機関の不良債権問題に注目が集まり、信用不安が拡大。
そして、欧米の格付け会社が、財務体質の弱いPIGSの国債の格付けを引き下げた。その結果、信用が一気に
低下したのである。

「PIGS」の中でも、最もデフォルト(債務不履行)に陥る恐れが懸念されているのがギリシャだ。
財政を粉飾してユーロに加盟したとも言われるギリシャの財政赤字はGDP比13%もある。
これは、本来、ユーロ導入国が守らねばならない基準である3%の4倍以上だ。
GDPに対する債務残高の比率も、ユーロ圏最悪の120%に達する。


同様に財政赤字のGDP比率が大きいアイルランド(12・5%)、スペイン(11・2%)、ポルトガル(8%)も不安視されている。

「PIGS」各国の国債は続落し、金利は急騰している。
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ=国債不履行に対する保証コスト)の価格は大幅上昇し、
欧州のベンチマークとされるドイツ10年債との利回りの格差も拡大している。

それら「PIGS」の国債や銀行の債権を多く持つ、フランスやドイツの金融機関も破綻の懸念が高まり、
さらには、フランスやドイツのソブリン(国家主権)の信用そのものが低下している。

それが、世界経済の緊張を高め、「超円高」の元凶となっている「ユーロ危機」の本質だ。



◆ヨーロッパは「民主主義」を捨てるのか?!

EU諸国は、今や、ユーロを存続させるために、
ヨーロッパ起源のもう一つの理想である民主主義を捨て去るかどうかの瀬戸際に立たされている。

その攻防をめぐって欧州議会では喧々諤々の論争が繰り広げられている。

2010年10月、ギリシャのパパンドレウ首相はドイツのメルケル首相との交渉の席で、EUの条約改正案に対して、
「国民投票で自国民の意見も聞かずに条約改正するのは民主主義に反する」と発言した。

たしかに国民の意見を一切聞かずに国がEUから巨額の借金をするなんて、そんな無茶な話はない。
しかし、ドイツは「嫌ならドイツはユーロを去る」とギリシャを威嚇した。

ギリシャ政府はEUの提示する債務削減案を飲まざるを得ない。
日々、報道されるギリシャのストや暴動は、急激なリストラを迫られた公務員や教職員や職を失った若者たちが
先鋭化した結果だ。

アイルランドが危機に陥った際にも、
「EUの救済案を政府が飲むのなら解散総選挙をして国民に真意を問うべきだ」という議論が起きた。

これに対してEUは、「解散総選挙はするな。先に予算案を承認してから解散せよ」と一方的に通達した。

ヨーロッパの民主主義はもはや瀕死の状態にある。

「PIGS」諸国で解散総選挙が行われれば、新たな政府はドイツをはじめとするEU各国による救済を拒否する
可能性も高い。

例えば、アイルランドの場合、同国が危機に陥ったのはユーロのせいでもある。

アイルランド人は他の「PIGS」諸国に比べて働き者だ。
しかし、ユーロの金利がアイルランドの成長率に比して低かったので、
国民が銀行からお金を借りて不動産を買い、不動産ブームが起こった。

そこに世界各国の投機マネーが入り込み、暴騰の末に売り浴びせられて破綻が起きた。

その結果、同国の銀行が膨大な不良債権を抱えることになったのだ。

同国の銀行を破綻から救うために、国民は850億ユーロ(約9兆4248億円)もの借金を背負わされ、
何年にもわたって税収の10%以上を他国の債権者に返済しなければならなくなる。

通貨はユーロなので、政府は財政出動も通貨増発もできない。
それゆえ、競争力を取り戻すには国内賃金の切り下げ以外に方法はない。
「PIGS」は金融市場の奴隷と化すのだ。

かと言って、ユーロを脱退して独自の自国通貨を発行すれば、為替レートは下落し、政府の借り入れコストは
さらに高くつく。
そして、時間の問題でジンバブエのようにハイパーインフレを引き起こす可能性が高い。



◆欧州全土はドイツの金融植民地となるのか?

現在のEUにおける実質的な最後の貸し手はドイツである。
つまり、救済によって、ヨーロッパの国々が次々とドイツの〈金融植民地〉に成り下がりつつあるのだ。

ドイツはワイマール共和国時代にハイパーインフレを経験しているので、
アメリカのようにお金をヘリコプターからばらまくような量的緩和策は国民感情が許さない。

金は出すが口も出すことになり、各国から高利貸しのように嫌われ出している。
一部では「金融独裁国家」といった悪口もささやかれる始末だ。

ドイツの工業製品は輸出競争力があるので、ここに来て世界経済全体が委縮するまでは、

ユーロ安のお陰で新興国などへの輸出が比較的堅調に推移し、特別ボーナスが出るほど景気が良くなっていた。

しかし、ギリシャとアイルランドまでは何とか救済できても、
ポルトガル、ベルギー、スペイン、イタリアと各国が次々に破綻に瀕した場合、ドイツ一国では救えない。

そのため、他国の銀行など見殺しにしてそれらの債権を持つドイツの銀行が危機に陥ったら、
そこに資本を注入して国有化した方がよいという意見も強まっている。

また、マルク復活論も勢いを増しているが、独自通貨に戻すと、それが高騰して輸出産業が壊滅しかねない。

現状ではユーロ安で短期的には輸出産業が潤っているので、「先々は危ない」という意見が通らない。
しかし、ドイツがユーロ脱退を決めた時点でユーロが終焉を迎えることは明らかだ。



◆長期的に見てユーロ圏は<今が買い時>だ!

しかし、著名投資家のジム・ロジャーズは、
「財政赤字国の救済は最終的にユーロを破壊するが、急に潰せないので今は買いだ」と言い、
「姿を消すのは10~15年先だからロング(買い持ち)にする」と述べている。

ユーロは乱高下が激しいので短期的なFX投資などには向かないが、長期的に見てユーロ圏は今が買い時に違いない。

日本と異なりヨーロッパはリーマンショック以前は好景気だったので、
急激に経済が縮小して浮き足立っているため、売れるものは何でも売りたいという人も出てくる。

ヨーロッパには価値の高い技術やライセンスがたくさんある。円高、ユーロ安の今こそヨーロッパに目を向けるべきだ。

東証2部上場の高級レストラン「ひらまつ」やワインショップの「エノテカ」は、
ヨーロッパのワインを大量に仕入れて驚くような価格で販売して成功を収めている。

また、ファッションのセレクトショップの中にも円高を活用して現地メーカーと長期的に有利な包括契約を結ぶところも
増えている。

海外の企業をM&Aするなど円高の恩恵を享受できるのは、資金に余裕のある大企業だけと思われがちだが、
そんなことはない。

様々な規制はあるが、競争力の高い企業、工場、技術、ライセンス、ブランド、製品を購入するには絶好の機会だ。

ヨーロッパには特に機械製造の分野で優れた技術を持つ企業が多い。

高い技術とブランドを活かした製品を現地で生産し、日本やアジア、新興国、アメリカでの販売を目指すことを
考えるべき時だ。

まずは、視察に行くだけでも十分に意味がある。



◆世界的な見本市・展示会で商機をつかめ!

昨今、サラリーマンに人気を呼んでいる副業に貴重な本の売買で中間マージンを得る「せどり」がある。

そんな「せどリーマン」が増えているが、同じように、
家具や器など何かの分野の目利きであれば、ヨーロッパからアンティークの掘り出し物を仕入れて販売する
「せどりビジネス」の展開も一考だ。

では、そうした企業や技術はどこで探し出せばよいのか?

最終的には先方を訪れ自分の目でしっかりと確かめねばならないが、まずそのきっかけ作りのために、
ヨーロッパ各地で催される展示会や見本市を視察するとよい。

例えば、ドイツのハノーバーで開催される「ハノーバー・メッセ」は世界最大の産業見本市だ。
複数の専門分野の見本市が同時期に一堂に会する複合見本市で、
毎年世界65カ国以上から約5000社の企業が出展し、20万人ものビジターが訪れる。

日本からも毎回50社程度が出展している。

また、フランクフルトでも年間40以上の見本市や展示会が行われる。

一方、スイスのバーゼルでは、時計宝飾の展示会やメッセが数多く開かれる。

家具ならばイタリアの「ミラノサローネ国際家具見本市」、
デザイン分野ならばフランスのパリで1月と9月に開かれる「メゾン・エ・オブジェ」が最大の催しだ。

食品では「パリ国際食品見本市SIAL(シアル)」、
スローフードに関してはイタリアのトリノで開催される「サローネ・デル・グスト」に参加すべきである。

これらの展示会や見本市の情報はJETROのホームページで調べられる。
視察レポートも掲載されているので参考にしていただきたい。

変化はチャンス!いつの時代もどの国も常に問題を抱えている。

内向きにならず、今こそ起業家精神を奮い起し、「ユーロ危機」「超円高」を活かして商機をつかもう!

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