ラベルが汚れているなどの特殊なワインを揃え1000円くらいの激安販売する店、酒屋がカクウチ的にやっている店、立ち飲みのあとにプロデューサーがしかけた店だ。
ただ、ワインは飲む人は飲むが飲まない人は飲まないことを考えると地方に敷衍する余地は意外と低いのかもしれない。
さて、ひそかに私が注目しているのが和酒バルだ。
今日はその和酒バルの中から注目の一店舗を紹介することにしよう。
店の名前は和酒バルKIRAZ。徳島の三芳菊酒造の社長の妹さんが経営している。
ホームページによれば、「まだ知られていない美味しい食材やスパイスをスペイン料理と融合させ、日本酒とともに楽しんでいただき、地方でコツコツと美味しいものづくりに励んでいる生産者さんをご紹介していきたいと考えている」そうだ。
三芳菊酒造は若手の作り手で従来の日本酒の作りの常識から逸脱したとも言える革新的な日本酒を作っているようだ。
その他全国の特徴ある日本酒を品揃えして、料理にあわせておすすめして、ワイングラスで提供している。料金も一杯500円~800円と手ごろである。
まずは、インパクトあるクリーミーなにごりからスタートした。
料理は6皿のコースにした。
ゆばといくらのカクテルような和のアミューズからはじまり、生ハムなどの入ったボリュームあるスペイン料理の前菜が続く。
料理は手作り感が伝わるし、食べログで高い評価を得ている片鱗を感じる。
そして、日本酒を好みに合わせて的確に提案してくれる。
「売れているのはニーズがあるからだ」というものを起点にする発想がある人にとっては、「なぜその商品を品揃えすることになったのか」「なぜそのサービスをすることになったのか」という背景(リソース)がない。その売り方は品揃えした段階で完結する。
しかし、「なぜその商品を品揃えすることになったのか」「なぜそのサービスをすることになったのか」という理念のもとに店をやっている人にとっては、品揃え自体はそれほど重要なことではなく、こだわりもない。
したがって、さらに自分の役割を全うするためには、もっと発展形のものがあるはずで、また「その商品を品揃えすることになったのか」「なぜそのサービスをすることになったのか」をまた追求する。
ものが完結ではないので、この店はさらに発展していく。
そして、これらの人たちはその価値観の多様性を認めている。
ニーズがなくなるとやめてしまう店とは異なり、入り口にある人を同じ価値観に次々と導くことができる。
逆に、ニーズを提供する店はものが普及されると市場が成熟して完結するので、そこから過当競争が始まり、価格競争に移行する。
それが多くの店の現状だ。
価格競争に巻きこまれているのは、利便性というニーズを満たしているからであり、価値観を共有していないからだ。
利便性を売っている店と、店や企業の使命に基づきサービスを提供している店では一見すると同じに見えるが、実はとても隔たりは大きいわけだ。
私はこの和酒バルKIRAZに大いなる可能性を感じた。