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税務・会計

第26号 中小企業の本当の消費税対策~その5~

会社を守り抜くための緊急対策

 小手先で消費税増税を乗り切ることはできません。消費税増税対策で本当に大事なことは二つ。それは、事業の存在価値そして収益構造を再度、確認・変革することです。
 26号では、「存在価値」のお話を、27号では「収益構造」の話をします。

◆存在価値を明確にする
 事業の存在価値・存在意義というものは「地域社会に貢献する」といった経営理念とは明らかに違うものです。
 何のために事業をやっているのか、そしてこれから何のために事業をやり続けて行くのかといったことです。事業の「誇り」とも言えます。
 この地域に、お客様に、取引先に対して、何が存在価値なのかを明文化するのです。
 トップをはじめ全社員は何となく分かっていることが多いのですが、同じ言葉でそれを表現することがとても大事になります。
 もちろん、存在価値を文書化するのは社長の責任です。しかし、社長一人で考えなければならないものでもありません。
 別に社員が全員で考えてもいいのです。
 大事なことは、短い言葉でまとめて、全員が同じ言葉で話ができることです。ですから、100字程度にまとめることが必要です。
 A社と取引しているのは当社とB社の場合、これまでA社へ100円で納品していた商材について、当社とB社はともに100円に5%の消費税を加算していたとします。
 そこで消費税率のアップで、当社は8円を加算しましたが、B社は5円のままだった場合、A社が取引先の選定を価格だけで判断しているのであれば、間違いなくB社に取引が集中し、当社は競争に敗れてしまうことは目に見えています。
 ここで、当社の存在価値が何かを考えていくのです。もちろん、コスト削減をして本体価格の100円を95円まで引き下げても、消費税増税前と同じ粗利益を確保できるならば、それも大切な方策です。
 しかし、コスト削減ができず、8%になっても、B社と同様、105円で販売した場合、本体価格は105円÷1.08=97円になり、約3円の値引きになり、それだけ粗利益が減少してしまいます。
 8%の次は10%です。もしかしたらそれ以上になるかもしれません。そうなりますと、コスト削減も限界があるでしょうし、消費税増税が進めば進むほど値引きになってしまいます。
 もう、事業の継続は困難になります。
 お金を支払う側は、税率が何%であっても、結局は、支払総額で判断することになるため、105円か108円で判断することには違いがありません。
 存在価値とは、当社と取引したい、しなければならない理由のようなものです。
 それがない限り、価格競争のみとなってしまい、価格競争する会社は疲弊していきます。
 東京都町田市に、デンカのヤマグチさんという電気店があります。近くには大手のヤマダ電気があるそうです。
 例えばヤマダ電気で20万円のテレビが、そこでは40万円で販売しているとのこと。
 ヤマグチさんは、電化製品を販売しているのではなく、お客様のかゆいところに手が届くサービスを提供しているということです。
 お客様から電球を換えてほしいと連絡が入れば飛んで行き、犬の散歩をしてほしいと言われても飛んでいくそうです。
 顧客は、65歳以上で、子供や孫がいても手伝ってくれないけど、ここの社員はしてくれる。だから、今後もここで買うといいます。
 おそらく消費税が上がってもそれほど影響はない。そんな感じすらします。
 存在価値について、別の視点から考えてみます。
 長野県に川上村という村があり、農業にかかわっている人の年収がすごいらしく、なんでも、一人当たり2500万円位程度らしいのです。だから、若者も多く住んでいるようです。
 この村の村長さんが、役場の企画のお仕事をしていたときのこと。路線バスを廃止にしなければならない状況に来たらしいのです。
 路線バスの存在価値は、A地点からB地点まで村民を乗せること。これが普通です。
 村民の方とお話しをしていますと、たまたま路線バスが近くを通り、その時、「バスが走っているのを見ると安心する」と言われたそうです。
 今日も同じ時間帯に路線バスが走っていることが、村民にとって安心感を与えていたのです。住む地域に安心感を与えるものは、とても素晴らしい存在価値になります。
 これまで考えつかなかった存在価値です。
 事業も同じことです。視点を変えてみることで、新たな存在価値に出会えることもあります。
 ヤマト宅急便のCMでは、「場所に届けるんじゃない。人に届けるんだ」と言っています。この言葉から、様々なサービスがイメージできます。これも存在価値。そんな気がします。

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