私がコンサルタントとして独立した1997年代後半はフィル・ロマーノ氏がダラスにイーチーズを作ったころだった。ちょうどそのころアメリカでは女性の家庭回帰現象と人口の南下現象が起こっていた。
イーチーズができる少し前、家族団らんに向けた伝統的な家庭料理であるローストチキンを提供して「ボストンチキン」が急成長していた。何度となく上場外食チェーンを作ったロマーノ氏は、ダラスに高級スーパーとレストランを融合したコンセプトの店を作った。これが大ヒットし、日本からも視察する業界人が多く訪れていた。ダラスのあと、ヒューストン、アトランタ、ニューヨークに二店舗と快進撃は続いた。
しかし、人口の南下現象によるおいしい店不毛の地での大成功と裏腹に、もともとゼイバー、エリ・ゼーバー、ディーン&デルーカ、郊外にシュチュー・レオナルド、ウエッグマンをひかえるマンハッタン出店は成功の兆候が見えず、その勢いは急降下した。
高級食材を取り寄せるという手法は、ロハス志向の時代の勢いに呑みこまれていった。「よいものをひろめることはいいことだ」というミッションでエンゲージメントのリンケージをはかるホールフーズは快進撃を続けた。コロンバス・サークルにあるタイムワーナーのホールフーズを見たときに、「この勢いに対抗できるものはない」とすら私は思っていた。
しかし、そうではなかったようだ。十数年前より洗練されてエキサイティングになって、また、新しい流れが始まった。
マジソンスクエアガーデンに行列ができるハンバーガー屋がある。グルメハンバーガーの「Shake Shack」だ。ユニオンスクエア・カフェで名高いダニー・メイヤーのハンバーガー屋だ。土日になると行列はパワーアップして30分以上も並ぶことになる。
しかし、「Shake Shack」に並んでいることを楽しんでいる。一番高いハンバーガーをドリンク、ポテト付きで買うと15ドル弱になるが、ホールフーズに対抗するレストランにとって大切なのは、価格ではないということだろう。
少し下るとユニオンスクエアがあり、その途中に「グラマシー・ターバン」というエキサイティングなレストランがある。ザガットのポピュラーレストランの三本指に入るこの店、予約がとれないが、決して安いレストランではない。
そして、もっともエキサイティングさ一番感じるのが、Eatalyだ。イタリーは代官山にもあるが、マンハッタンのイタリーは雰囲気があまりにも違う。トロントのマルシェのエや日本の割烹料理屋キサイティングさ、ディーン&デルーカの洗練された雰囲気、ゼイバーの品質と雑多な雰囲気、サンセバスチャンのバルのような情緒、このような多機能が集約されている。このような要素に鑑み、リーテイル&レストランのハイブリッドと称される。まさに、十数年前にロマーノ氏がやろうとしていたことではないかと気づかされる。
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