オリンピックやサッカー・ワールドカップなどの世界的スポーツイベントは、新しい技術が普及するきっかけになる場合が多いが、中東カタールで現在行われている(2022年11月20日〜12月18日)サッカーワールドカップで注目されているのは、センサー内蔵ボール、ビデオカメラ、センサー、AIなどを使ったビデオアシスタント審判のシステム、スタジアムの冷房、聴衆追跡カメラだ。
今回のワールドカップ全64試合は、センサー内蔵のサッカーボール「アル・リフラ(Al Rihla)」を使用、このボールには正確なオフサイド判定などをサポートするため内部に500Hzの慣性測定ユニットセンサー(IMU)が搭載され、1秒間に500回の割合で試合のすべてのボールタッチをトラッキング、正確なボールの動きに関するデータを収集して数秒以内にビデオマッチオフィシャルに送信することができる。
スタジアムの屋根の下に取り付けられた12台のトラッキングカメラを使って、各選手の体の最大29のデータポイントを毎秒50回追跡、選手の手足やボールの位置を追跡するデータポイントはAI(人工知能)システムに情報を提供し、半自動オフサイド技術など意思決定の最適化を支援している。
最先端のセンサーネットワークとエッジコンピューティングは、KINEXON社とアディダスにより開発され、選手がいつボールに触れたかの正確な情報を自動的に提供できるもので、すでにFIFAアラブカップやクラブワールドカップ2021アブダビ大会などでテストが行われている。
半自動オフサイド技術の導入は、審判によるフィールド上の重要な判断から人的ミスを取り除くことになり、判定に文句を言う人は減ると思われる。
■スタジアムの冷房
今回のワールドカップは、中東の暑さのために従来夏に行われていた大会を異例の11月下旬からの開催となったが、スタジアムには冷却システムが採用されており、中継を見ている限りでは観客や選手が暑さを感じている印象は受けていない。
スタジアムのパイプや通気孔に空気を取り込み、冷却してフィルターにかけ、再び外に押し出してスタジアム内に涼しい泡を作るという冷房システムは、断熱材と人がいる所だけ冷却する「スポット冷却」と呼ばれる技術を駆使して、スタジアム内を17〜24度に保っているという。
■聴衆追跡カメラ
カタール大会では、期間中の人々の動きを追跡するために、8つの競技場すべてに15,000台以上のカメラを設置している。
決勝戦が行われる8万人以上収容のルセールスタジアムでは、顔認識技術を使用してファンを追跡しているが、これはインドネシアで起こった130人以上の死者を出したサッカーの試合のような状況を回避するためだ。
チケットの売り上げや人々が入場する場所など、いくつかのデータポイントに依存するアルゴリズムを使って、AIによる群衆のパターン予測をしている。
センサー技術とAIなどを駆使した最新技術は、日本チームの健闘の次に注目していきたいポイントだ。
======== DATA =========
●adidas Suspension System
https://news.adidas.com/football/adidas-reveals-the-first-fifa-world-cup–official-match-ball-featuring-connected-ball-technology/s/cccb7187-a67c-4166-b57d-2b28f1d36fa0
●ビデオアシスタントレフェリー(VAR)とは、FIFA
https://www.jfa.jp/rule/var.html
●KINEXON
https://kinexon.com/blog/fifa-preferred-provider-live-player-and-ball-tracking/