勝ち組と負け組が明確になる今、経営者の判断がブレると会社は、これから負け組に入ってしまうでしょう。しかし、経営者の判断が理念を軸に、ブレなければ、会社は、生き残り、勝ち残ることが可能です。
なぜなら、先行きの見えない日本で現場は、経営の判断が常にブレない会社なら、その会社を信頼して“ついていこう”と思い、顧客の声に耳を傾け始めるからです。
会社は、永続する必要があり、永続させるには儲からなければならず、そのためには、顧客の声を聴き、必要とされる会社になり、利益を生み出すことが不可欠です。
経営者は代わりますが、変わらぬ経営理念を軸にブレない経営を実践し、会社の風土を築けば、現場が一つとなり、顧客になくてはならない会社には何が必要か?探り当てることができるのです。
そこで30回連載を終わり、今回からは全3回で“企業風土”をキーワードに会社が企業風土をどのように経営理念とリンクさせれば顧客を創造できるか?を、現場士気を向上することで売り上げをアップさせている会社を事例と共に解説いたします。
~企業風土を現場に浸透させる独立の仕組みとは?!~
店舗数国内1255店、海外141店を展開、年商839億円を生み出す一大カレーチェーン「COCO壱番屋」は1978年の第1号店オープン以来、順調に店舗数を増やし事業を拡大しています。
同社の成功要因は、独自の<のれん分け制度=ブルームシステム>が現場の独立の仕組みとなり、店舗で働く初期の段階から企業風土を形成する以下の3つの要素を実践することで、現場が「経営者になることよりも、経営者であること」の大切さを理解し、独立を目標にベクトルを一つにしているからなのです。
<「COCO壱番屋」の企業風土を形成する3つの要素>
1・社是 「ニコニコ・キビキビ・ハキハキ」
同社は、「社是」を~共通言語~とし、現場の誰もが接客を通じて「社是」を形から(極論だが)でも行動レベルに落とし込むことで現場ベクトルを常に一つの目的(ミッション=お店の存在意義)へと向かわせています。
* 共通言語とは?
・・・現場が意識し共有する言葉(現場ベクトルを一つにし、企業風土を構築し、他社との差異化を図る武器になる)
2・ミッション「経営を通じ人々に感動を与え続け、地域・社会に必要とされる存在となること」
現場が店舗で働く初期の段階から「このような人(独立を希望する人)になりたい。」と思える先輩と出会い、将来の夢をいつか実現したいとその思いを確かなものにしてもらうことで、先輩から独立という目標に向かう目的(お店の存在意義=ミッション(使命))を現場の仕事を通じて教えてもらう。
3・経営目的 「当社にかかわるすべての人々と幸福感を共有すること」
同社は店舗が利益を生み出さなければならない理由を、経営(独立)の目的(生み出される利益を全ての人々と分かち合い、共に幸せになる)で定義し、独立するのはそのための手段に過ぎないと明言している。
~一人前力が生まれる独自の独立支援制度とは?!~
COCO壱番屋で働く誰もが、先の企業風土の存在を実感できるのは、同社で働く人々の多くが独立を夢見ているからで、そこには同社独自の<のれん分け制度=ブルームシステム>という独立支援制度が従来のFC制度と異なっているからです。
従来のFC(フランチャイズ)制度では、単に儲けたい、成功したい人が参加希望してくる可能性が高いが、ブルームシステムは以下の基準で参加希望資格を厳しくスクリーンすることで、先述の企業風土の伝承を重要視しています。
<COCO壱番屋FC加盟条件>
*夫婦2人で専業として経営すること
*社員であること
*独立社員資格3等級以上の取得(技術49%、人間性51%の評価制度)
*独立時の自己資金200万円以上
「COCO壱番屋」のFC経営者が単に儲けることを目標とせず、企業風土を現場に伝承することが独立する意味であると理解できるのは、上述のFC加盟条件の中の下記2項目が存在し、企業風土の伝承に深くリンクしているからです。
・ 夫婦2人で専業として経営することで、夫婦が現場の仕事を通じて共に幸福感を分かち合い、経営目的(先述)(「当社にかかわるすべての人々と幸福感を共有すること」)を実感している
・ 社是(先述)「ニコニコ・キビキビ・ハキハキ」の実践を通して、技術より人間性(感謝をする気持ち)の評価を得なければ独立社員資格を取得できない
会社を辞めなければ100%独立できる(平均4,5年)独立支援制度であるにも関わらず、独立できる確立は同社では7%といわれています。
なぜなら、評価制度で等級を上げるには、評価比重が大きい人間性の評価を得ることが不可欠で、そのためにはCOCO壱番屋が重要視する人間性(感謝する気持ち)という定量化できないもの(結果、成長スピード(技術の修得だけではなく、人間性の重要さの理解と確立)に差がでる→独立まで忍耐する必要がある)を評価してもらうしか方法はないからです。
~企業風土を武器にするにはビジネスモデルが必須!!~
COCO壱番屋の強さは企業風土を武器にし、他社と差異化するために一切値引きをせず店舗経営において(値引きなど)数値的な経営手法を現場で短期的に採用しなくとも、
・本社が指示する・接客=社是「ニコ・キビ・ハキ」を徹底し、
・本社がつくり上げた売り方(トッピングやごはんの量、カレーの辛さの指定など)で商品を提供することで、
売上げを維持(イベントで本社がサポート)さえすれば利益を生み出せる秀逸なビジネスモデル(利益を生み出す仕組み)を構築している点です。
モノの溢れたこれからの時代、大量生産、大量消費、大量廃棄は消費者の支持を得ることが難しくなります。
しかし同社がチェーン経営を戦略とする他の企業と一線を画することができたのは、大量の商品をつくり、それらを売りつくすために
値引きをしないと利益を生み出さないこれまでのチェーン経営のビジネスモデルではなく、
値引きをしなくても利益を生み出せるビジネスモデルを確立し、
そこで働く人々の人間性を「ニコ・キビ・ハキ」を通して、育んだからです。
COCO壱番屋は、今後も引き続き内外を問わず地域へ出店することによって、その地で採用される人々の人間性を育むことで、<ミッション>(会社(店舗)の存在意義)「経営を通じ人々に感動を与え続け、地域・社会に必要とされる存在となること」の実現が可能となると確信しているのです。
COCO壱番屋HPは