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第30回 鹿部温泉(北海道) 高さ15メートル!天然の「間欠泉」

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■北の港町に噴き上がる「間欠泉
 温泉が大地の恵みであることを実感できるスポットのひとつが、間欠泉だ。間欠泉とは、一定の周期で熱湯や水蒸気が噴き上がる温泉のこと。
 
 ゴゴゴゴゴッという音を響かせ、空高く温泉が噴出する姿は、神々しさを覚えるほど。現在の間欠泉の多くは観光スポットとなり、気軽に見学できるが、間欠泉を発見した当時の人々は、熱湯が噴き上がる現象を目の当たりにして、畏れの感情を抱いたに違いない。
 
 間欠泉といえば、アメリカのイエローストーンが世界的にも有名だ。最も規模の大きい間欠泉は、7~12日の周期で1回の噴出は1時間以上に及ぶ。高さは、なんと最大で75メートル。約15階のビルに相当する高さである。
 
 日本では、登別温泉(北海道)、鬼首温泉(宮城県)、上諏訪温泉(長野県)、熱海温泉(静岡県)、峰温泉(静岡県)、別府温泉(大分県)の竜巻地獄などが有名だ。しかし、熱海温泉の大湯間欠泉や上諏訪温泉の間欠泉などは、噴出力が弱まり、今では観光用に人工的に噴出させている。天然の間欠泉は、貴重な存在なのだ。
 
 そんな天然の間欠泉のひとつが、北海道の道南、鹿部(しかべ)温泉にある。なだらかな稜線が美しい駒ヶ岳の山麓に位置する自然あふれる港町だ。内浦湾に面した鹿部温泉には、30以上の源泉があり、温泉資源が豊富であることでも知られる。
 
■100℃の熱湯が10分間隔で
 4軒の宿と1軒の共同浴場で構成される温泉街は、繁華街があるわけでもなく、ごく普通の静かな港町といった風情だが、温泉街の南端には、「しかべ間歇泉(かんけつせん)公園」があり、観光スポットとなっている。
 
 公園内の間欠泉は、大正13年、温泉を掘削中に偶然見つかったもので、約100℃の熱湯が約10分の間隔で噴き上がる。その高さは、最大15メートルにも及ぶという。
 
30.jpg
 
 温泉が噴出するまでの待ち時間は、敷地内の足湯に浸かることもできる。間欠泉の湯を利用しているという。間欠泉に浸かりながら、間欠泉を見る。温泉好きにはたまらないシチュエーションである。
 
 足湯に浸かっていると、やがてゴボゴボッという低い音が地底から響いてきた。すると数秒後、プシューッと勢いよく温泉が湧き出した。多くの間欠泉がそうであるが、噴出直前はおどろおどろしい音が響くが、噴き出してからは意外とスマートである。
 
 残念ながら、強風で水しぶきが観客にかからないように、高さ10メートルほどの地点に、蓋が吊るしてあり、温泉がそれ以上の高さに噴き上がらないようになっている。そのため、若干迫力には欠けるものの、地熱のパワーを体感するには十分である。
 
 公園内には、「眺望の館」という間欠泉を上から覗けるスポットもある。2回目の噴出は上から見学し、3回目の噴出は立入禁止区域ギリギリまで接近し、「温泉の噴水」を見上げた。どの角度から見ても、間欠泉は美しい。
 
■入浴は大正創業の老舗旅館で
 間欠泉を見学したあとは、ぜひ鹿部温泉の湯に浸かってもらいたい。素朴な共同浴場もあるが、旅館などでも日帰り入浴を受け付けているので、温泉初心者にはこちらがおすすめ。
 
 なかでも、大正7年創業の老舗旅館「鹿の湯」は、純和風旅館の趣があり、ピカピカに磨かれた館内も印象的。北海道には、歴史的にあまり上質の和風旅館は存在しないが、鹿の湯の雰囲気は本州の和風旅館に負けていない。源泉を3本も有しているのも魅力だ。
 
 わずかに黄色をおびた透明湯は、もちろん源泉かけ流し。舐めると塩味がする塩化物泉。体の芯から温まる。小ぶりの露天風呂は、岩や木々に囲まれた日本庭園のつくりで、なんとも情緒がある。一方で、すぐ近くに港があるので磯の香りが漂い、頭上を海鳥が飛んでいく。そんな独特の風情も魅力である。
 
 

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