会社やその経営者の場合、複数の不動産を持つ例は多いものです。
会社が不動産を所有していれば、事業に必要な不動産であることがほとんどで、決算書を読んでいけばその詳細は判明します。
ところが、会社経営者個人がどんな不動産を所有しているかは銀行でも把握できない場合があります。
たとえば会社の融資はA銀行のみでおこない、社長の自宅以外の不動産を購入するときはB銀行にした場合など、 A銀行からすれば社長所有不動産の存在はみすごされることになります。
もちろん自宅以外の所有不動産が収益物件で社長がそこからの収入を得ている場合は確定申告書の銀行提出で、その不動産の存在が判明しますが、A銀行との取引が会社取引だけの場合、それさえもみすごされるわけです。
資産を所有する場合、所有者・債務者によって、その購入資金を融資してもらう銀行を分けると、債務者になにかがおきたときに財産を守れる可能性は高くなります。
じつは、会社や社長の資産、とくに不動産をあぶりだすものに「共同担保目録」というものがあります。
共同担保とは、同一債権の担保として複数不動産に設定されている担保物権のことで、たとえば、戸建て住宅なら、土地と、その上に建つ建物を共同担保とするなどとしてリストになったものが、共同担保目録と呼ばれています。この場合、不動産は2つなのですが、同じ担保が2つに共通に設定されるのです。これは担保価値を保全するための措置で、共同担保は略して共担とも呼ばれています。共同担保目録を取得する場合は、登記事項証明書の申請時にそれを必要とする旨の表示をすれば取得できます。
共同担保目録じたいは下記のようなものです。
複数不動産を所有している場合、この共同担保目録をじっくりみて、そこに書かれた地番表示の謄本をひとつづつ取得していくと、その会社、社長の所有不動産の全貌がみえてくることが多いものです。
たとえば、 所有者が甲乙一郎と、その人が経営する㈱甲乙の不動産の一覧が下記だとすると、A銀行は担保に入れている物件1と共同担保B銀行分から物件2の存在しか把握していない可能性があります。物件5については担保設定も対応借入もないことから存在すら知らないかもしれません。こんなふうに共同担保目録から所有不動産はあぶりだしができるし、逆に債権者の把握度合いを推測もできるのです。
じっさいのところ、担保設定した不動産の担保余力がでてきたときに、まめに根抵当権を解除してリスクを回避している経営者もいます。
また、経営する会社が破たんしても社長個人で所有する不動産は守れているケースもあるのです。