社会保険料のみならず税金でも滞納を重ねると財産の調査が行われ差押えがされます。
押えられる財産としては不動産、売掛金、保証金、預金があげられますが、まず最初に不動産が差押えられます。すでに抵当権や根抵当権が設定されていて回収見込みがない不動産でも差押えされているのが現実です。
余力がなくてまったく回収できないであろうから国税徴収法第48条「超過差押及び無益な差押の禁止」(注1)に該当し、競売もできないだろうし、無駄な行為だと思う経営者も多いのですが、担保を付けている銀行側にしてみれば期限の利益喪失事由に該当し、融資をストップしてきます。
しかも、それは差押えが解除になるまで続きます。経営者にしてみれば影響は大きいのです。この状態から脱するために税務署なり自治体の徴税部署なり、年金事務所へ経営者が行くことになり交渉を始めます。
ところが税や社会保険の滞納に交渉などというものはありえず、ひたすら、回収の担当者による督促と、財産の確認がされます。
仮にここまできても差押えの解除のお願いに行かないとすれば、税務署・市役所・年金事務所の職員による調査訪問が行われ営業どころではなくなっていきます。
このあたりから、経営者は次に何がおこなわれるだろうかと考え始め、不安でいっぱいになり、本業に専念できなくなっていきます。
個人事業者の場合、意外と行われないのが預金の差押えで、2019年9月26日大阪高裁の判決(注2)とそれによる回収方針の徹底がされてるようです。
それでは、次にどのような資産が差押えの対象になるかというと、保証金や売掛金などですが、滞納者が法人であれば、決算申告書の内訳書を閲覧されて事業を続けるためにどうしても必要なものに差押えをしてきます。
最近は自治体や年金事務所の徴税担当者が滞納者と面談、話し合いという手続をふまずに、差押えしてくるケースも増えているように思います。そのほうが効率的に回収でき、徴収担当者の成績が上がるのでしかたないことですが、取引銀行の預金の動きや決算申告書の内訳書を確認し、提出された書類の内容も考慮したうえで売掛金をいっせいに差押えしてくるということも多く行われています。あたりまえですが、それが行われると会社はいっきに倒産に向かうのです。
税金や社会保険の滞納にはそのもとになる原因があります。
滞納会社の決算書を見ると、ふだんから納税額や社会保険料負担を考えながら、事業のやりかたを見直していけば回避できただろうにと思うことが少なくありません。
注1:
(超過差押及び無益な差押の禁止)
国税徴収法 第四十八条
国税を徴収するために必要な財産以外の財産は、差し押えることができない。
2 差し押えることができる財産の価額がその差押に係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先だつ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額をこえる見込がないときは、その財産は、差し押えることができない。
注2:
2019年9月26日大阪高裁の判決
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