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経済・株式・資産

第143回 税金・社会保険料の滞納をすると・・・

あなたの会社と資産を守る一手

税金、社会保険料の滞納をし始めた企業の経営者は多くのケースでその実情を理解していません。


たいていは、徴収者がなんらかのアクションをおこして始めてことの重大さに気づきます。たとえば 所有不動産への差押えがじっさいにされて、重大な局面に立たされていると実感しますが、これがおこるまでは、たかだか数か月の滞納くらいで年金事務所や市役所、税務署がそんなことをするわけないと考えているようです。

 

さらに、徴収者からの来所依頼などにも応じないときは突然会社に訪問してくることもあります。訪問された場合、決算書や通帳・請求書などを見せてくれと命じられることもありますし、駐車場にある車のナンバーをひかえていって差押えの準備に着手されることもあります。

 

最近になって増えてきたのは、督促の書面が数回届き、滞納者に面談することもなくすぐに資産に対する差押えがなされるケースです。税務署、市役所、年金事務所は裁判所に申し立てを行い債務名義を得ることなく、すぐに滞納者の資産の差押えができます。これらは国税徴収法47条、地方税法331条・373条、といった根拠にもとづくもので督促状を郵送してから10日たてば所有資産への差押えができてしまうのです。(注1)

 

たとえば、督促状を3月1日に送れば3月12日には資産の差押えができます。ここまで書いても会社所有の資産を調べるのは難しいのではないかと考える経営者も多いのですが、じつはかなり簡単に調べることができます。税務署で申告決算書を見ることができ、その内訳書で取引銀行がわかり預金口座を照回というかたちで調べることができます。固定資産をもっていれば内訳書に記載されています。また売掛金の内訳書には会社名と住所が記載されています。

 

これらをもとに資産の差押えを行い滞納金を回収するのはたやすいことなのです。しかもこの徴収者の調査権限は絶大です。ただ、そうはいっても徴収者がどの資産に差押えをかけるかは滞納者の状態によります。
例えば、社会保険料が3か月分遅れで支払われていて、滞納金額が3百万円だとすると、それ以上の金額の売掛金があれば、それを差押えすることによって滞納はいっぺんに解消しますが、いっぺんに複数の販売先に一度に差押えをするのが普通です。


請求書を調べられたり、徴収部署を訪問したときに細かく売り上げの状況を聞かれたら、その数日後に売掛金の差押えがされると思ったほうがよいです。

 

この差押えによって徴収側は一度で滞納を解決できるのですが、滞納企業は資金繰りがめちゃくちゃになり、買掛金の支払いができなくなり、従業員への給与が払えなくなります。もちろんこの段階で銀行融資に頼ることはできません。それゆえに、ここまでくると倒産に向かうのが普通です。

 

預金に対して差押えをすることもありますが、普通預金・当座預金などは差押えした時点での残高にしか効力が及ばないため結果的にうまくいかないことも多いものです。ただ、当座預金であれば手形の決済日の前日最後に差押えをするとか、売掛金の振込入金日に差押えをしてくるなどといったことも行われていますが、売掛金の差押えに比べれば回収効率がわるいのは事実です。

 

銀行融資の返済金であれば経営改善計画などでリスケの交渉をすることもできますが、社会保険料や税金は一定の猶予の枠組みはあるものの、話し合いで決めるという意味での交渉に応じてはくれません。徴収担当者の目的はあくまでも滞納の整理なのです。一般的に滞納するものは利益が出ていようといまいと負担せざるをえないものになります。社会保険料、消費税の滞納が多いのもそれゆえです。

 

常日ころから財務のことを考えて、固定費の比率を減らすようにしていくことがベターになります。企業は規模が大きくなったり、縮小したりすることもあります。企業規模が大きくなり従業員を増やすことで社会保険料の負担が増加し、消費税の負担も増えます。ところが、売上が減り企業規模が縮小したときにこれらは負担になるものです。

 

(注1)

国税徴収法第四十七条 (差押の要件)
次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき。
二 納税者が国税通則法第三十七条第一項各号(督促)に掲げる国税をその納期限(繰上請求がされた国税については、当該請求に係る期限)までに完納しないとき。
2 国税の納期限後前項第一号に規定する十日を経過した日までに、督促を受けた滞納者につき国税通則法第三十八条第一項各号(繰上請求)の一に該当する事実が生じたときは、徴収職員は、直ちにその財産を差し押えることができる。
3 第二次納税義務者又は保証人について第一項の規定を適用する場合には、同項中「督促状」とあるのは、「納付催告書」とする。

 

地方税法第三百三十一条 (市町村民税に係る滞納処分)
第三百三十一条 市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
二 滞納者が繰上徴収に係る告知により指定された納期限までに市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
地方税法第三百七十三条(固定資産税に係る滞納処分)
 固定資産税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該固定資産税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る固定資産税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
二 滞納者が繰上徴収に係る告知により指定された納期限までに固定資産税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。

 

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