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税務・会計

第10号 資金調達と連結バランスシート

会社を守り抜くための緊急対策

 第8号で少しお話しましたが、バランスシートにおいて、資産に換金性がなく、実質的に債務超過状態になっている場合、社長がすべきことは、①資金調達と②儲かる仕組みの選択・集中になります。

◆試算表で見る資金調達の仕方と儲かる仕組みの選択と集中
 資金調達の仕方は試算表を見れば分かりますが、収益(=売上)と資本そして負債の3つあります。一番望ましい資金調達は売上の入金です。売上ではありません。売上の入金です。これまでの売掛金の回収だけでなく、新規の売上の入金のタイミングも考えなければなりません。
 また、仕入れ代金についても、前号までの会社のように、創業時から現金仕入れを続けていては資金繰りが大変になる為、信用買いに変更していかなければなりません。現金仕入れを信用買いにすることも資金調達になります。支払いが遅くなる為です。
 もちろん同時並行して借入れや増資の検討も必要になります。
 とかく創業当初は、とにかく売上をあげておきたいものなので、売上をあげる仕組み、つまり収益構造(儲かる仕組みとも言います)は存在していないようなものです。
 しかし、ある一定の時期がきますと、儲かる仕組みを固定すべき時期がくるものです。
 よく事業の選択集中をしなさいといわれますが、それは大企業において言えることであり、中小企業は、そんなに多くの事業ができるわけではありません。
 中小企業は、事業の選択・集中よりむしろ、儲かる仕組みの選択・集中が大事なのです。
 儲かる仕組みには資金収支のバランスも入ってきます。やはり、入金は早く、支出は遅くが鉄則です。しかし、創業当初は、どうしても、支出が早く入金が遅くなりがちです。それを変革していく必要があります。
 儲かる仕組みの一番分かりやすい変革事例が、コピー機製造販売会社でしょうか。
 コピー機メーカーは、最初、コピー機自体を販売するという儲かる仕組みを考えていましたが、コピー機は高額でなかなか売れなかったため、コピー機を置いてもらい、使用した量に見合うカウントで売上をあげる方法に転換したところ、売上が伸びたという事例です。まさに収益構造の変革です。

◆資金調達と連結バランスシートの関係
 資金がなければ会社の運営は出来ない為、社長の仕事は、資金調達に尽きるといっても過言はないからこそ、社長個人と会社との資金移動を簡単には否定できませんし、さらに、間違った資金調達を行えば、後々の経営に大きな影響を与えてしまいます。
 資金調達の是非も基本的には連結バランスシートでその是非を判断します。
 あえて基本的とお話したわけは、資金調達はバランスシートだけでは完結しないからです。
 ちなみに、社長個人の預金の範疇で、会社への資金提供を行っている場合は、特段、問題視することはありません。社長個人と会社の資金の行き来は、連結バランスシートには記載されないため、この意味では、問題はないと考えます。
 しかし、いつも、会社は社長個人からの資金調達を充てには出来ませんし、社長個人にも資金的な限界があるはずです。
 ですから、本号と次号で中小企業にとって大事な3つの資金調達について考えていきます。

◆収益と資本
 御社の試算表を見てください。まず、確認してほしいのは、いつの時点の試算表かです。確実に先月末の試算表が手元にあるでしょうか。なければ、御社の経理は仕事をしていないことになります。経理は、翌月5日までに試算表を作成しなければいけないのですから。
 その試算表の貸方(右側)に御社の資金調達の内容が記載されています。通常であれば、試算表は、上から負債・資本(財産)・収益の順に並んでいます。
 一番好ましい資金調達は、収益、その中でも売上です。しかし、売上も入金があってはじめて資金調達といえることから、多額の売掛金等未収入金がある場合は、売上等の収益から未収分を差し引いた金額を資金調達額だと計算しなければなりません。
 収益の次に、望ましい資金調達は、資本(財産)になります。資本は大きく2つに区分されます。出資者からの出資金と利益です。
 出資金は配当というコストがかかりますが、中小企業の多くは配当していないため、コストはかからない資金調達と考えてもいいでしょう。そして借金と違い、有償減資以外は返金しなくてもいい資金調達です。
 実はここに大きな落とし穴があるのです。いい商材やビジネスモデルであればあるほど、経営者は収益以外の資金調達に走ってしまうのです。
 これは、社長ひとりだけが問題なのではありません。たとえば、社長が、第三者に、自社の事業について話をしたとしましょう。
 社長は、往々にして話しを大きくするものです。その話を聞き投資家等が触手を出してきます。もちろん、将来、上場してキャピタルゲインを得るためです。
 簡単に上場することは困難ですが、投資家からすれば、10戦1勝でも、利益が出ることもあるため、いい会社を見つけて、早めに唾をつけておくかが勝負になります。唾をつけるという意味は、もちろん資金援助です。投資家は、いかにもすぐにお金が出ますよと社長の気を引きます。喉から手が出るくらいお金が欲しい社長は隙だらけです。なんとかお願いしたいとすり寄ることになります。こうなると投資家の思うつぼです。会社の実質的な支配がはじまります。
 そのようなことに気がつかない社長は、銀行から借りるより、簡単に資金調達が出来ると勘違いして、とにかく、少しでも多くの資金調達を図ろうとします。
 上場する場合は、社長の株式のシェアも大事になるため、何度も、株価の算定をして、公認会計士に少しでも株価を高く計算してもらい、投資額は大きく、社長の株式のシェアを減少させないようにしていきます。
 一種、マネーゲームの始まりです。こうなってきますと、売上を上げるより、資金調達で頭が一杯になってきます。
 会社の発展も衰退も、誰と付き合っているかで決まると言われています。
 付き合っている人が、資金者ばかりですと、本業にプラスになりません。資金者は、社長の事業によかれと思い、次から次へと人を紹介してきます。社長たちは紹介された人と会うだけで、あっという間に一日が過ぎて行きます。
 なぜかと言いますと、自社の事業や技術を説明するために、2時間以上も費やしてしまうからです。
 特に、社長が技術者ですと、技術の話ですぐに2,3時間は過ぎてしまいます。相手は、技術の話はほとんどわからないことが多いにも関わらず、話し続けます。聞く相手は、どうやれば儲かるのかを一番聞きたいものです。相手も疲れてしまいます。
 技術者が技術の話をすることはとても楽しいようです。しかし、時間ばかり経過して、そして、仕事をした気になり、一日が終わるのです。
 一番必要な資金調達が収益による入金であるにも関わらず、頭は別のところに向いているのです。気がついた時には、何年も売上が上がっていない会社もあります。
 先ほどお話しましたが、会社、とくに社長が誰と付き合っているのかがとても大事になります。
 とくに資金関係は気になるところです。まず、出資者が誰かは、税務申告書を見ればわかりますが、鵜呑みにはできません。
 中には、100%オーナー会社であるにも関わらず、オーナー社長と話をしていると、どうも腑に落ちないことがあるからです。
 確かに形式的には100%で、会社の定款にも、設立時の発起人が社長1人で、全額出資していることになっています。
 しかし、誰かを気にしているのです。
 よくよく聞いてみますと、実は、実質的なオーナーが別にいるというのです。実質的なオーナーは、名前を出すことが出来ない為、社長にお金を貸し、そのお金で会社を設立したために、いつも、実質的なオーナーのことを気にしながら話をしているのです。
 この場合は、例えば、この会社が上場した場合、貸したお金の○倍の返金をする等の内容の裏契約があることも多いです。
 社長は、自らのためというよりも、この実質的オーナーのために、上場しなければならない十字架を創業時から背負っているのです。
 そうなりますと、更に無理な資金調達を行うことになります。
 先ほどのマネーゲームの話にも通じますが、もっと悪質なケースもあります。将来、上場を目指すと偽って、資金を集める人もいて、本当に上場する気がないにもかかわらず、とにかくお金を集めることだけに神経を集中するのです。
 上場もしていないのに、株価が1株500万円として資金調達している社長もいたほどです。その会社に入った資金を社長個人に回し、個人的な投資や生活費に使っていたこともあり、結局、その会社は上場できないどころか破産してしまいました。
 この会社には、連結バランスシートはありませんでしたが、社長個人が投資に失敗していたとの話もあり、連結バランスシートは債務超過だったと考えます。
 後1つの資金調達のお話は次号にします。

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第11号 社長と会社の資金移動の是非次のページ

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