所有不動産に地方自治体からの差押をうけている会社から、どうしたらいいのでしょうと相談を受けることが多いのですが、差押の解除はひとすじなわではいかないのです。
地方自治体からの差押は固定資産税や都市計画税、法人市民税、償却資産税の支払いが遅れた場合にされるケースがほとんどですが、支払遅延であってもすぐに差押がされるわけでなく、督促がされても無視していたり、分割納付のとりきめをしても支払いを完全に無視している場合などに差押がされます。だから、まず差押されそうな原因、税金の納付の遅れなどがあったら即連絡をして分割納付でもいいので約束どおり納付をしていくことが必要になるのです。
自治体などからの差押がこわいのは、たんにそれだけの理由によるものでもなく、場合によっては銀行融資が停止になったり、最悪、銀行融資の期限の利益喪失事由に該当し借入金の一括全額返済を要求されることがあるのです(注1:金銭消費貸借契約における期限の利益喪失)
ちなみに銀行取引約定書では、期限の利益の喪失事由に、預金の差押、担保(不動産)の差押が記載されています。
所有不動産に差押さえがされても、その不動産が無剰余で、その価値以上に借りているから大丈夫と思っても前記期限の利益喪失事由に該当し破たんの道を歩むことになります。
とはいってもすでに破たんしている会社の不動産に差押がされても無剰余なら、担保をつけている銀行が競売にださない限りは競売することはできないのです。
よく無剰余なんだから、差押は違法で不服申し立てをすれば解除できるという方がいますが、高松高裁の判決を理由に却下してきます。どんな文面で却下されるかというと下記のような文書が届きます。
ところで、所有不動産に差押があっても、無剰余で、かつ担保をつけている債権者の理解が得られる場合(ということは、すでに不良債務者の状態だが、担保をつけている債権者に約束して納得のいく金額で返済している場合)、企業が継続していくこともできますが、ぎりぎり生きていける会社は財務内容がほぼ同じモノとなります。
どんな財務内容かというと、当座比率が高いということです。
つまり、資産勘定における現金、預金の割合が高く、それゆえに資金繰りが必要ない会社です。
とはいっても、そんな会社の場合には預金の差押もありえますので、やはり税金の支払いはちゃんとやることが第一です。