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第138話 サプライチェーンが中国に戻ってきた

中国経済の最新動向

 中国経済はコロナ禍の影響を脱却し、急速に回復を実現している。前年同期に比べ、今年第1四半期のGDP成長率が▼6.8%に対し、第2四半期3.2%、第3四半期4.7%と、2期連続でプラス成長を実現した。第4四半期は6%前後になり、通年の実績が約2%と見込まれる。国際通貨基金(IMF)は2020年の世界経済見通しについて、主要国の中で中国が唯一プラス成長を実現する国だと予測している。

 

 コロナ抑止の成功によって、中国の生産と供給が安定化している。グローバル企業は安定志向を重視し、投資やサプライチェーンなど再び中国にシフトする動きが活発化している。その結果、中国の輸出と外国直接投資の急増をもたらしている。

 

◆11月の輸出は過去最大

 中国税関の発表によれば、11月の輸出はドルベースで前年同月比21.1%増、伸び率が9年ぶりに最高を更新した。輸出金額は2680.7億ドル、1979年統計開始以来の最大を記録した。輸入4.5%増、輸出から輸入を差し引いた貿易黒字が102.9%増の754.2億ドルにのぼり、史上最大だ。

 

 表1に示すように、11月中国の5大貿易相手国・地域であるアメリカ、EU、ASEAN、日本、韓国への輸出はそれぞれ46.1%、26%、8.6%、日本5.6%、9.5%と増加した。特に、対米輸出は46.1%増の519.8億ドルにのぼり、過去最大を記録。対米貿易黒字も374億ドル、過去最高の18年11月355億ドルを上回り記録を更新した。トランプ政権が発動した米中貿易戦争は、思惑が外れた結果となった。

 

chin1381.png

出所)中国税関統計により沈才彬が作成。EUの数字は英国を除くものである。

 

 1~11月国・地域別輸出の累計は米国とEUがいずれも5.7%増。欧米への輸出急増は欧米諸国の景気回復を反映している。それに対し、日本向けの輸出は11月に5.6%増に止まり、1~11月累計も▼1.2%と依然とマイナス圏を脱却していない。欧米に比べれば日本の景気回復が遅れている事実が浮き彫りになっている。

 

 図1に示すように、今年6月以降、中国の輸出は6カ月連続で前年同月を上回り、しかも月ごとに伸び率が高まっている。その結果、1~11月累計値は前年同期に比べて2.5%増となっている。武漢でコロナ感染拡大のピーク時に発生した「脱中国」は姿を消し、サプライチェーンが中国に戻ってきた証となる。

 

chin1382.png

 出所)中国税関統計により沈才彬が作成。

 

◆中国輸出急増の5大要素

 コロナ感染のパンデミック(世界的な流行)は終息の見通しが立たない中、中国経済も輸出も一人勝ちの様相を示している。

 

 それではなぜ中国の輸出が急増しているか?次の5つの要素が挙げられる。

 

 第一に、中国はコロナ鎮圧の成功によって、生産と供給が安定化し、安定志向を重視するグローバル企業は、資金とサプライチェーンを再び中国にシフトさせる動きが活発化している。

 

 中国は今年2~3月に、コロナ感染拡大により、サプライチェーンが寸断し、外国からの商品注文が相次いでキャンセルされた。しかし、コロナ抑制の成功によって、5月から海外からの注文が徐々に増え、7月からは注文が爆発的に増え始めた。言い換えれば、中国輸出急増の前提条件はコロナ抑制の成功及び生産と供給の安定化である。

 

 第二に、コロナはライフスタイルの変化をもたらした。感染予防のために人々は外出を控え、仕事もテレワークが新常態として定着している。パソコンや家電、自転車、家具など、いわゆる「巣こもり需要」が急増している。中国はこのニーズに応え、1~11月にノートパソコンが18.4%増、家電製品22.2%増、家具11.2%増と、大幅に輸出を拡大させた。

 

 第三に、欧米諸国のコロナ感染拡大によって、医療品需要が急増している。例えば、1~11月にマスクを含む中国の繊維製品輸出は前年同期比で33%増を記録した。

 

 第四に、中国ネット通販の輸出が拡大し、1~9月は前年同期比で52.8%と大幅に増加した。

 

 第五に、インド、バングラデシュ、ミャンマーなどの国々がコロナ感染拡大によって、生産と供給が不安定となり、サプライチェーンがこれらの地域から中国に逆流する現象が起きている。例えば、1~11月の中国プラスチック製品輸出は20.1%増、前述の繊維製品が33%増となっている。

 

◆対中直接投資も再び増勢

 外国直接投資も中国に戻ってきた。コロナ感染拡大のピーク時に、海外から中国への直接投資は前年同月に比べ、今年2月▼25.6%、3月▼14.1%と大幅に減少した(図2を参照)。

 

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 出所)中国商務省の発表により沈才彬が作成。括弧内は伸び率。

 

 しかし、コロナ鎮圧の成功によって、中国への直接投資が4月よりプラスに転換し、11月まで8カ月連続で増え続けている。実行ベースで見れば、1~11月対中直接投資の累計は8,993億元にのぼり、前年比6.3%増えた。米ドルに換算すれば、累計1,295億ドルとなり、前年比4.1%増となっている。

 

 国連貿易開発会議(UNCTAD)が10月27日に発表した「投資トレンドモニター」によると、2020年上半期の世界の対内直接投資は前年同期比で49%減少、通年も40%減となる見通しだ。先進国も新興途上国も相次いで減少する中、対内投資4.1%増の中国は一人勝ちと言わざるを得ない。これもコロナ鎮圧の成功と見事な経済回復と切っても切れない関係にある。

 

遠のく「脱中国」

 欧州最大の保険会社、独アリアンツグループ傘下の信用保険会社ユーラーヘルメス社は12月に「サプライチェーンに関する調査報告書」を発表した。同社は米・独・英・仏・伊5ヵ国1200社を対象に、10月中旬から11月上旬にかけて、自動車、電気通信、エネルギー、機械、ケミカル及び農産物など6分野のサプライチェーンについて、アンケート調査を実施した。

 

 報告書によれば、コロナ感染拡大後、94%の企業がサプライチェーン寸断、約20%の企業が深刻なサプライチェーン寸断を経験したという。コロナの影響に対応するために、55%の企業が向こう6~12ヵ月以内に新しいサプライチェーンを構築する計画がある。但し、サプライチェーンの国内回帰を考える企業は15%未満にとどまっている。

 

 新しいサプライチェーン拠点はどの国を選択するか?優先順位として、最も多くの企業が中国を選び、豪州、カナダ、フランス、ベルギー、英国などが続く。具体的に、英国企業の30%、イタリア企業の18%、フランス企業の14%、米国企業の12%が中国を新しいサプライチェーン拠点と考えている。

 

 トランプ政権は今年5月にサプライチェーンを中国から米国に引き戻すために、米国企業を支援する用意があると表明していた。安倍政権も米国に追随し、産業界に「脱中国」を呼びかけた。しかし、現実は日米を含む世界主要企業のサプライチェーンも直接投資も再び中国にシフトし、「脱中国」が遠のく結果となっている。まさに笛吹けど踊らず、である。(了)

 

 

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