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経済・株式・資産

第52話 「政冷経温」―2014年日中関係を読むキーワード―

中国経済の最新動向

 2014年日中関係の特徴は「政冷経冷」ではなく、「政冷経熱」でもなく、「政冷経温」だと思う。筆者は、日中間の政治的な冷たい関係が続くが、両国の経済関係は緩やかに改善されると見ているからである。
 
 実際、経済関係改善の兆しは既に出始めている。日中間のモノ、カネ、ヒトの流れはいずれも回復の方向に向かっている。
 
 まず、モノの流れを見てみよう。財務省貿易統計によれば、2013年11月の輸出全体が前年同期比18.4%増に対し、対中輸出は33.1%増で、連続8ヵ月の増加となる。同月中国からの輸入も19.4%増えた。11月の対中輸出総額は1兆1,426億円にのぼり、輸出全体5兆9,005億円の19.4%を占め、米国(1兆1,313億円)の19.2%を上回り、首位を再奪回した。
 
 次はカネの流れである。中国商務省の発表によれば、13年1~11月日本からの直接投資は67.59億ドルにのぼり、前年同期比2.3%増となっている。ヤマダ電機や明治乳業など中国から撤退する個別ケースがあったが、全体的には中国撤退の動きが広がっていないのは実情である。
 
 最後にヒトの流れを見よう。日本政府観光局(JNTO)によれば、来日中国人観光客は、13年9月15万人突破(28.5%増)、10月12万人突破(74.1%増)、11月10万人突破(96%増)と、3ヵ月連続で毎月の過去最高を記録し、個人旅行、団体旅行ともに回復基調を継続した。
 
 2014年はこうしたモノ、カネ、ヒトの流れの回復基調が続き、「経温」の様相を示すと思う。
 
 「経温」のけん引役は自動車産業と見られる。
 
 2012月9月に日本政府の尖閣諸島国有化をきっかけに、日中関係は急速に悪化し、中国国内では日本製品不買運動が広がった。その結果、日本自動車メーカー各社は中国での新車販売台数が急落した。図1の通り、トヨタは12年9月48.9%減、10月44.1%減、日産はそれぞれ35.3%減と40.7%減、ホンダ40.5%減と53.5%減、マツダ35%減と44.9%減を記録した。
 
china52_01.jpg
出所)日本自動車各社の発表により沈才彬が作成。

  ところが、13年9月以降、中国における日本自動車各社の新車販売台数は急増している。図2のように、トヨタは9月63.5%増、10月80.6%増、11月60.7%増となっているほか、日産はそれぞれ83.4%増、127.5%増、95.7%増、ホンダはそれぞれ118%増、211.6%増、99.8%増、マツダは34.4%増、88.2%増、68%増となっている。12年9月以降の急減から13年9月以降の急増へ、まさにジェットコースターのようである。
 
china52_02.jpg出所)日本自動車各社の発表により沈才彬が作成。

 中国における新車販売台数の急増に伴い、自動車及びその部品の対中輸出も急増している。10月自動車の対中輸出は数量ベースで前年同期比294.1%、自動車部品は35.5%とそれぞれ増えた。11月もそれぞれ241.6%、109.1%と増えた。
 
 2013年中国の新車販売台数は2100万大台を突破するのは確実な状態となり、世界で売れた車の4台に1台を占める。米国のピークは1740万台である。それを考えると、2100万台突破は人類史上前人未踏の領域に到達すると言える。
 
 だが、中国は世界最大規模の自動車消費大国になったにもかかわらず、100人に車の保有台数は僅か8.5台しかなく、日本60台、米国80台など先進国平均50台に比べれば、ギャップはまだ大きい。市場拡大の余地が大きく、2020年まで3000万台突破は視野に入る。日本自動車各社にとっては、世界最大市場の中国でどのぐらいのシェアを占めるかが企業の存亡にかかわる。
 
 自動車産業は日本GDPの約1割、雇用の約8%を占める基幹産業である。自動車産業の盛衰は日本経済全体の盛衰を左右する。経済の視点から、安倍政権の取っている「中国けん制」戦略は本当に国益にかなうか、疑問が生じる。持論だが、積極的に日中関係を改善することこそ、日中双方の利益になる。

 

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