住宅バブルが崩壊へ
国民にとって、最大の耐久消費財は言うまでもなくマイホームである。安くても1戸数千万円の価格で、消費へのインパクトは絶大だ。
図5の通り、中国の住宅販売面積は総人口と同じ、2021年にピークに達した。22年からはマイナスに転じ、約27%も減少した。今年1~6月にさらに前年同期比で5.3%減少した。
出所)国家統計局の統計により筆者が作成。
政府当局の統計によれば、2023年6月現在、中国は合計6億戸の住宅を持っている。中国の世帯数が約5億、総人口14億を考えれば、深刻な住宅過剰が明らかである。沿海地域の大都市では住宅の空室率が20%に上り、内陸部の都市では30%以上となっている。
今後、総人口及び現役世代の減少によって、中国の住宅販売面積はピーク時を超えるシナリオが考えられず、不動産バブルが崩壊するリスクが高い。
実際、中国の不動産業界は今、深刻な不況に陥っており、多くの不動産企業は経営破綻に直面している。例えば、不動産大手の「恒大集団」は8月17日、ニューヨークの裁判所に、外国企業が米国内で保有する資産の保全を可能にするアメリカ連邦破産法15条の適用を申請した。
この恒大集団は2022年度の純利益が527億元(約1兆540億円)の大赤字、負債総額は48兆円にのぼる。昨年よりデフォルト(債務不履行)状態がずっと続いている。
経営危機に陥っている中国の不動産企業は恒大集団だけではない。最大手の「碧桂園」は8月10日、今年1~6月の最終利益が1兆円前後の赤字に転落する見通しだと発表し、「資金調達で深刻な困難に直面している」と表明した。
関連産業を含めれば、不動産産業は中国のGDPの約3割を占め、経済成長をけん引する最大の産業分野である。不動産バブルの崩壊は中国経済に破壊的なインパクトを与えかねない。30年前の日本バブル崩壊のような事態が発生すれば、巨額の不良債権が積み上がり、金融危機に繋がるリスクが高まる。
「3Mブーム」のピークアウトによって、中国の景気低迷が長引く可能性が出てきた。世界2位の経済大国が危機的な状態に陥ると、その影響が世界的なものになる。当然、対中輸出減少など日本経済への悪影響も無視できない。