■携帯オーディオの歴史
デジタル化は、一瞬にして全てを変えてしまうパワーを秘めています。その一端を、携帯型デジタルプレーヤーの歴史から振り返ってみましょう。
そもそも、音楽を屋外にも携帯して聴くスタイルは、ソニーのカセットテープを用いた”ウォークマン”から始まって一大ブームを巻き起こし、”ウォークマン”が音楽プレーヤーの代名詞として君臨したのは周知の事実です。それ程までに強力だった”ウォークマン”が、本格的なデジタル配信時代を迎えると、いつの間にかApple のiPodに取って代わられてしまいまいました。
オーディオでは、デジタル化によって、以下のような変化を起こりました:
1、テープ巻き取りやCDの回転など、複雑な機構が不要になり、新興メーカーでも、部品を組み合わせるだけで、オーディオ機器を作れるようになった。
2、デジタル音声信号は劣化や変化が少なく、一般ユーザーが聴く範囲では、歴史とノウハウを持つオーディオブランドと、新興メーカーの差が判らなくなった。
3、製品の優劣は、音質から、革新的な機能性や、使い勝手の良さで判断されるようになった。
つまり、ソニーが持つ音質面でのアドバンテージよりも、Appleの提供する音楽配信の利便性に、多くのユーザーが魅力を感じた結果が、iPodの躍進に繋がりました。付け加えると、アップルは音楽配信において、それまで適用されていた著作権管理上の制限緩和を働きかけて操作の簡素化も果たし、豊富なコンテンツを用意して真の利便性を実現しました。技術力の差ではないのです。
その後もAppleは配信コンテンツの充実と継続的な製品コストダウンを続けて、爆発的に裾野を広げ、結果、iPodはシェア争いを超え、音楽を聴く人口をも増やしたとされています。
CD並の高音質を、小型軽量で持ち運び簡単に。しかもリーズナブルな価格で。配信を含め、デジタルならではの恩恵を活かした製品が、ライフスタイルに大きな影響を与えた一例と言えるでしょう。
■そして今、再びソニーの”ウォークマン”が面白い!
iPodが使い勝手、デザイン、機能性、音質、価格で圧倒的な存在となり、多くのメーカーは携帯型デジタルプレーヤー市場からの撤退を余儀なくされました。一時はiPodにお株を奪われながらも、地道に製品を磨き続けたソニーは、近年、日本市場において存在感を増しています。
その原動力は、日本のユーザーが必要な機能を丹念に織り込んだ事。音質の継続的な向上はもちろん、騒音下でも静寂なリスニング環境を保てるノイズキャンセリング機能を標準的な機能として内蔵した他、特に日本人の支持を得ているのが、再生スピードの可変と歌詞表示機能です。例えば、語学の学習を行うとき、再生スピードを遅くして聴き取りやすくできます。再生スピードが遅くなっても、カセットテープ時代のスロー再生のように声色は低くなりません。逆に、会議や講演の録音など、情報を早聴きしたいときも、声色は高くならず自然に聴き取れます。これも、デジタル技術ならではのメリットです。カラオケ好きの日本人には、音楽を聴く際に歌詞が表示される機能もすこぶる評判です。歌詞データを、音楽配信と同じ手順で購入できる利便性も実現しました。
ここでも、成功の鍵は、技術力の差ではなく、ユーザーのニーズをすくい上げ、真に実用的なシステムを提供した姿勢だと言えそうです。今後もスマートホンや電子ブックなど、様々な新しいデジタル機器が登場しますが、商品の企画において、iPodの成功や”ウォークマン”復活の事例は大いに参考になりそうです。
■ソニー “ウォークマン”「NW-A850」
今回注目したウォークマンについて、詳しくご紹介しましょう。音楽だけでなく、録画したTV番組や映画も視聴できます。遠方への出張で長い移動時間にも重宝です。
・新幹線や飛行機の中でも騒音を打ち消して軽減するノイズキャンセリング機能内蔵。
・ワイド2.8型のカラー有機ELディスプレイを搭載し、美しい映像も楽しめる。
・ソニー製の最新レコーダーから、録画番組を転送して視聴可能。
・再生スピード可変機能。
・歌詞表示機能。
・FMラジオが聴ける。