経営者の読書といえば、
やはり、ビジネス書、実用書、
歴史小説あたりが人気です。
それと、古典を愛読する方も少なくありません。
ビジネス書や実用書から、今を知る。
歴史小説や古典から過去を学んで、未来を予測する。
人気が高いのも納得ですよね。
一方で、読書の傾向が似てくるのも事実。
したがって、他の人があまり読まないジャンルの本を読むことには
大きな意味があります。
たとえば、現代の小説。
仕事に役立ちそうな印象がないせいか、
経営者の口から「現代小説が好き」という言葉を
聞くことは、めったにありません。
実際、ビジネスに直結しそうな小説は少ないでしょう。
しかし、中には決して見逃してはならない、
掘り出し物や大穴に該当するような
隠れた名著があります!
今回紹介するのは
『握る男』原宏一(著)
![40-1.jpg](http://www.jmca.jp/column/dan/40-1.jpg)
です。
著者の原氏は、コピーライターを経て作家になったこともあってか、
社会を見る眼の鋭さ、独自のユーモア感覚に定評があります。
ビジネスに通じるもの、ヒントになる作品が多い!
定年後の男性たちが、暇つぶしのために形だけの会社を作り、
会社ごっこを始める『極楽カンパニー』
居酒屋に天下った役人が、官僚的な仕事力を発揮して
店を改革していく『天下り酒場』
24歳の落ち目の女性アイドルを選挙に出馬させ、
“政界アイドル”として復活させようと目論む『アイドル新党』。
タイトルどおり、
基本的には、現実離れしたユーモア小説です。
そして、舞台となる業界のことを
よく調べているんですね。
最初は切り口のユニークさに、ニヤリとしてしまうのですが、
読み進めるうちに、どんどん笑えなくなります。
日本社会の問題や暗部が浮き彫りにされ、
いろいろ考えさせられてしまいます。
本書『握る男』も同様。
飲食業界を舞台に、
一人の中卒少年が、日本の「食王」となるまでの物語。
これがまた強烈!
“握る”には、文字どおりの寿司を握ることに加え、
複数の意味が込められています。
経営者なら、思い当たることがいろいろあるはずです。
出世すること、
組織のトップに立つこと、
人をつかうこと、
事業を大きくすること、
トップであり続けること…
読み出したら止められない、
引きずりこまれるような魔力を秘めた一冊です。
ビジネス書ではなかなか得られない“何か”を
もたらしてくれることでしょう!
尚、本書を読むときに、おすすめの音楽は
『モーニン』(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)
です。
曲名を知らずとも、誰もが一度は聴いたことがある名曲「モーニン」を
始め、これぞジャズ!
アート・ブレイキーを中心とした凄腕たちによる、
鋭く、深みある演奏が本書の痛快さを盛り立ててくれます。
ぜひ合わせてお楽しみください。
では、また次回。