日本経営合理化協会の徳島・淡路島視察ツアーで、「電脳交通」というベンチャー企業を立ち上げた近藤社長のお話を伺った。
近藤社長は祖父の代からの「吉野川タクシー」という会社を引き継ぎ、自らドライバーや配車係などをしながら赤字で零細のタクシー会社を5年で再建したが、全国に6,000社あるタクシー会社は保有台数10〜20台の小規模事業社が70%で、平均営業利益が2%、ドライバーの平均年齢は59.5歳と危機的状況にある。
そのため、近藤氏は「タクシー業界を変えなければいけない」と電脳交通を立ち上げた。
大手は消費者向けの配車アプリを作りテレビCMなどを行っているが、成長投資にお金を回せない小規模事業社は、未だに98%が電話予約で、配車係は黒電話・メモ帳・無線機で対応している。
そのためミスも多く非効率で、そのような事業者が本当に欲しいシステムを提供しようと自社でテストを繰り返して、タクシー会社をDX化(デジタル化)するシステムを開発した。
このシステムでは、タクシー1台当たり月3,500円の定額料金でお客のデータベース、クラウド型配車システム、コールセンターの受注業務などが使えるため、採用する企業は毎年2倍以上のペースで増え、6年半で45都道府県で使われている。
その他にも、赤字路線の地方のバスに代わり、バスとタクシーの間の料金でドアツードア(自宅前から目的地)の相乗りタクシーを運行し、想定の2倍の人が利用している事例など他の交通機関とも連携を進めており、宅配事業者との連携や、JALと連携して空港から自宅までの相乗りタクシー(スマートシャトル)の実証実験も行っている。
全国でタクシーエリア最小の徳島県から出た30代社長による電脳交通が、タクシー業界を変革してゆくことに期待している。
■ライドシェア
コロナ禍前のシリコンバレー視察ツアーの際、宿泊していたサンフランシスコ中心部のホテル前で、夜の9時過ぎに帰ってくる車を30分ほど観察していたことがあったが、ホテルに戻ってくる車の90%がウーバーかリフトのライドシェアで、タクシーは10台に1台ぐらいしかなかった。
「ライドシェア」というのは、登録した一般の人が自分の車でタクシーのようにお客を乗せて走るもので、お客と運転手の双方を結びつけるアプリが「ライドシェア」システムだ。
「ライドシェア」の登場は、タクシー業界にとっては思わぬ競争相手の出現で、一般の人の乗用車と客の奪い合いをしなければいけなくなった。
世界でも日本でもタクシーは変わり始めている。
======== DATA =========
●電脳交通
https://cybertransporters.com
●ウーバー
https://www.uber.com/jp/ja/
●リフト(Lyft)
https://www.lyft.com