およそ役員と名のついたビジネスマンにとって、絶対妥協を許すことのできない条件とは、「人を育てる」ということである。
中国・春秋時代の名宰相といわれた管仲の言葉に、
「一年の計は穀を樹(う)うるに如かず、十年の計は水を樹(う)うるに如かず、終身の計は人を樹(う)うるに如かず」
とある。
すぐれた企業の条件が、従業員や株主、消費者など、自分の会社と直接・間接に利害を共有するすべての関係者
(ステーク・ホル ダー)に対する責任を連続的に、すなわち終身はたすことであるとするならば、およそ取締役の冠を
かぶる者としては、つねに次代を託すにふさわしい後継者の 育成に心をくだく必要がある。
それをするためには、ものの順番として、まず自らがリーダーとしての資格を身につけておかねばならない。
「すぐれた経営者の最大の共通的特徴は、日々の自己啓発を怠らないということである」という、
ドラッカー博士の言葉がある。一 見平凡だが、ナルホドとうなずける。
部下育てを行う際のキーワードは、次の6つに絞られてくる。
・聴く……
部下の意見に十分に耳を傾けること。動機づけの原点は、まず聴くことである。
・知らせる……
これも動機づけの要因。会社や仕事の現状や将来の方向性を知らせる。
・決める……
管理者とは意思決定者なり。部下の目標を優先順位を明確にしたうえでけっていすることも、決めるうちに入る。
・任せる……
人は任せられれば、やる気が出る。したがって、実力もつく。
・チェックする……
方針はどこまで徹底し、具体化し、正しく表現されているか、チェックなしには是正措置は取り得ない。
・ほめる……
バランスとしては、八褒め二叱りが適当。「大声で褒め、小さい声で叱れ」という言葉もある。
当コラムの愛読者の方はすでにお気づきの方もいらっしゃるだろうが、
第14回で触れたリーダーの基本行為と共通するところが 非常に多い。
「人育て」ができないようでは管理職失格である。
新 将命