1月20日からスタートするトランプ政権内には、イーロン・マスク(政府効率化局・通称DOGEの責任者)、デヴィッド・サックス(暗号資産とAI分野の担当)、マーク・アンドリーセン(大統領顧問的な役割)など、普段はワシントンから距離を置いていたテック(IT)界有力者が続々と要職に就く予定だ。
このことで、かつての「ウォール街と財務省」のような、政界とビジネス界の蜜月関係を再現しようとする動きが見られるが、2期目のトランプ政権(トランプ2.0)には、「MAGA(Make America Great Again=アメリカを再び偉大な国にしよう)派(反移民・保護主義)」、「共和党の主流派(減税・小さな政府志向)」、シリコンバレー出身の「テック派」という大きく3つの派閥が存在することになる。
MAGA派は「かつての製造業の黄金期を復活させる」ことを重視し、移民や自由貿易に対して懐疑的なのに対して、テック派は「技術革新」と「国際的人材流動」を好み、新しい産業やサービスを拡大することで経済を牽引したいとしており、アメリカ・ファーストの「中身」のズレがある。
MAGA派は中国など外国との貿易に関税等を強化する方向だが、テック企業は国際的な資金・人材・市場を重視しているため激しい保護主義には反対の立場だし、高度人材含めた移民に制限をかけたいMAGA派に対して、テック派は優秀な外国人エンジニアや研究者を積極的に受け入れたい。
トランプ大統領はこれらの3つの派閥間の衝突をむしろ歓迎し、最終的に自らが決定権を握るスタイルを好むため、政策に一貫性が欠けやすく、予想外の決定が飛び出すリスクが高い。
また、トランプ大統領は株価を重要指標として捉えていると言われているので、大幅な株価の下落が起これば保護主義や移民制限を和らげるなど、政策を大きく転換する可能性がある。
■ビットコイン
トランプ大統領は選挙運動中にアメリカを「地球上の仮想通貨の首都」にすると約束しており、当選後にビットコイン現物ETFには120億ドルの資金が流入、価格は10万ドルを突破し、2024年初から2倍以上になり、イーサリアムやソラナといった仮想通貨も大きく値上がりした。
仮想通貨交換業大手を提訴するなど、規制を先導していたゲンスラー米証券取引委員会(SEC)委員長が、トランプ氏の就任式当日に退任する予定となっており、後任には仮想通貨に好意的な保守派のポール・アトキンス弁護士が就任、商務長官に指名されたハワード・ラトニックは、仮想通貨企業テザーから資産管理業務を請け負っている米金融サービス会社キャンター・フィッツジェラルドのCEO、ベンチャー投資家のデービッド・サックスがAIと仮想通貨の政策責任者に就く。
また、「ドージ」の支持者であるイーロン・マスクとバイオテクノロジー企業の創業者ビベック・ラマスワミが、「DOGE=ドージ」と呼ばれる政府効率化省を率いる。
このため、仮想通貨支持派はトランプ政権が仮想通貨と金融業界の扱いを区別し、より融和的な法律やルールを適用することを望み、強気になっている。
ビットコインはコロナ禍で高騰し、2021年11月に6万4,000ドルの最高値を付けたが、2022年にサム・バンクマンフリードの仮想通貨交換所FTXの破綻を受けて暴落し、1万6,000ドルを割り込むなど、これまでも急騰と暴落を繰り返してきた。
ビットコインは変動が大きくなりそうな「トランプ2.0」の4年間でも、最も予測が困難なものになるかも知れない。