事務所や工場、店舗を訪れますと、経験上、大抵、売上等の損益計算書は、想定できることが多いのですが、残念ながら、バランスシートまでは分かりません。
行列のできるお店のように繁盛しているお店がある日突然、破産申し立てを行い、負債総額何億円ということもよくあります。
ちなみにバランスシートは、社員にも分からないことが多いのではないでしょうか。
会社は経営資料を配布しますが、通常は、生産データや損益関係資料に限定され、バランスシートは、会議では提出されることはありません。
営業会議の場合、損益のみの公表でも理解はできますが、役員や幹部が出席する経営会議においても損益のみの公表に留め、バランスシートまで公表しない会社もありますが、それはどうなのか、少し疑問に感じます。
社長は、誰も信頼していないのか、借金について負い目を感じているかどうかは分かりませんが、特に二代目経営者に多くみられる傾向です。
「もともと、社長の行動は、社員の8割は理解しない」
残念なことですが、かなりの確率で当たっている言葉です、
この言葉の意味を社長はもっと考えておくべきです。
社長は、社員の給料を払っている側であり、社員は社長から給料をもらう側にいます。
払う側ともらう側とでは、根本的に人種が違うことを知っていたほうがいいのです。
社長は、会社のことを思い、法律スレスレのことを行うこともあるかもしれません。また、いわゆる、反社会的な人たちと、好きか嫌いかを問わず、付き合わざるを得ないこともあります。
社長は会社のためであり、社員は理解してくれているはずだと思わないほうがいいと思います。
社員は、先ず、このような社長の行動を理解できませんし、ヘタをすれば、ツイッターなどで、平気に暴露、つまり内部告発されることもあります。
もちろん、社員の中には、社長のことを本当に理解している人もいることでしょう。むしろラッキーと思うくらいの気持ちが必要なのかも知れません。
ところで利益が上がっているのに、なぜ、給料やボーナスが上がらないのか、理解できない社員は多いものです。
簡単な話、利益=現金ではありませんし、仮に、利益=現金でも、借入がありますと、そこから借金の返済が発生するためです。
ですから、利益が上がっても、お金があるとは限らないため、そんなに簡単には人件費を上げることはできないのです。
経営者の中には、借金をしていることをなかなか社員には言えない人がいます。というより、そのような経営者の方が多いのではないでしょうか。
経営のために必要な借金をしているにも関わらず、何となく、借金をしているという事実だけで、社員に負い目を感じている経営者もいます。
それこそ、社長と社員との間に溝がある証拠です。
社長が借金をして、何か、自分のことに費消したのであれば、それは社員に言えませんが、経営のために借金をしているのであれば、もっと堂々としていればいいのです。
そして「社員は、自分のことを理解していない」
そう思うことです。
キャッシュフロー計算書はとても良くできています。キャッシュフロー計算書は大きく三つに分かれています。
Ⅰ 営業活動におけるキャッシュフロー
Ⅱ 投資活動におけるキャッシュフロー
Ⅲ 財務活動におけるキャッシュフロー
営業活動におけるキャッシュフローは、損益計算書で言いますと大体、営業利益のようなものと考えてください。
社員が、利益が上がっているから・・・という利益は、この営業利益のこともありますが、大抵、売上総利益(通称、粗利益)を指すことが多いものです。
仮に営業利益としても、利益が上がったからといって給料を上げることは簡単にはできません。
なぜかといいますと、会社には営業活動以外に、投資活動や財務活動があるためです。
中小企業でも、キャッシュフロー計算書を社内で、ある一定以上のレベルの社員には公開しているところもあります。
もちろん、社長は勇気のいることかもしれませんが、一度、公開すればあとは簡単に継続可能です。
また、賃上げは、利益が上がったからといっては簡単にできない理由が他にもあります。
賃上げは一人ひとりの金額は少なくても、社員の数が多ければ人件費の増加金額はかなり多額になりますし、もちろん、一ヶ月で終わるわけではなく、ずっと続きます。
ということは、ちょっとした利益など吹っ飛んでしまうこともあります。
「賃上げは損益で判断してはいけない」
このことを理解しなければなりません。
では、どのような状態になれば賃上げができるのでしょうか。
判断基準は、バランスシートです。バランスシートの心地よさなのです。損益計算書がよくてもバランスシートが苦しい場合、賃上げはできません。バランスシートはそんなに簡単には回復はできません。
このことを良く考えて賃上げをすべきなのです。