- ホーム
- 社長のメシの種 4.0
- 第20回 電動キックスクーター
最近、米カリフォルニアで目を引くのは「Bird」「Lime」などの電動キックスクーター(electric scooter)で、昨年末時点で全米に10万台が置かれているという。
これは既に中国やヨーロッパ、アメリカで定着している自転車のシェアリングサービスの電動スクーター版で、自転車より手軽な移動手段として利用者が急増している。
シェア自転車は所定の駐輪場に返却する「ドック型」が多いのに対し、電動キックスクーターは基本的にステーションがなく、利用者が自由に乗り捨てできる「アンロック・アンド・ゴー」という方式になっており、時速24kmと快適に走れることもあり、自宅から最寄り駅など近距離の移動に便利なため、アメリカでは電動スクーターの乗車回数が1日24万件に達しており、売上は1日1台100ドルに及んでいる。
今後、電動キッククーター市場は、2015年の148億ドル規模から、2024年には380億ドル規模に成長するという予想(グランド・ビュー・リサーチ)もあり、自動車のライドシェアではUber(ウーバー)やLyft(リフト)も参入しようとしているし、11月にはフォードがサンフランシスコ本拠の「Spin」を買収した。
電動キックスクーターで一躍脚光を浴びた「Bird」はLyftとUberで重役を務めたTravis VanderZanden氏が設立、今年史上最速でユニコーン企業(時価総額10億ドル以上で未上場のスタートアップ)となり、現在の企業価値は20億ドルとされている。
Birdは専用アプリをダウンロードし周囲にあるBirdのスクーターを検索、スクーターを見つけたら車体のQRコードをスキャンして利用でき、料金は基本料金の1ドル+1分あたり15セントと安価だ。
走行可能距離はフル充電で約30kmとされ、乗り捨された電動キックスクーターは夜間に「チャージャーズ」と呼ばれる業者が回収して充電し、翌日利用が予想される場所に配置する仕組みとなっている。
中国ネット大手Tencent(テンセント)出身者が設立したLIMEは、電動キックスクーター以外に既に電動アシスト付き自転車、通常の自転車シェアリングサービスも行っており、昨年6月に最初にこの事業をアメリカで始めている。
今年7月には、Googleの親会社Alphabetの投資部門GVの主導で3億3,500万ドルを増資し、4億7,500万ドルの資金調達を行っている。
電動キックスクーターには投資資金が集まり注目されているが、スクーターが街中に散乱し交通の妨げになったり、街の外観を損なったりするという批判や、新しいサービスのため法律やインフラが整備されていないため、危険性を懸念する声も上がっている。
カリフォルニア州では電動キックスクーターに乗る人は18歳以上、ヘルメット着用、運転免許を持っている必要があり、2人乗りは禁止とされているし、自転車レーンがない場合は車道を走るべきとされているが、私はヘルメット無しで歩道を走り去る電動キックスクーターを何台も見かけている。
しかし、自転車が前後2m、ハンドル幅60cmで駐輪する道路専有面積が1.2m2なのに対し、電動スクーターは長さ1.2m、ハンドル幅45cm占有面積0.54m2と半分以下だし、各社はGPSによりスクーターの場所を把握して対応する姿勢を見せ、Birdはユーザーに無料でヘルメットを渡すなど安全や環境面への配慮も始まっている。
道路交通法の規制が厳しい日本では更に電動キックスクーターの普及は課題が多いかも知れないが、欧米では新しい移動手段として急速に普及している。
======== DATA =========
●Bird
●LIME
●Spin