今年6月に放送された「NHKスペシャル・人体」でも、臓器同士が「エクソソーム」と呼ばれるメッセージ物質で情報のやり取りをしていることが取り上げられていた。
30年前から存在は発見されていた「エクソソーム(exosome)」は、当初「細胞の不要物的な存在」とされていたが、2008年に内部に「mRNA」や「miRNA」を含む核酸物質が内包され、それが他の細胞へと受け渡されていることが分かり、研究が一気に進んだ。
体の中のあらゆる細胞が直径50〜150 nm(ナノメートル:10億分の1メートル)の顆粒状の「エクソソーム」を出しており、体の中には「エクソソーム」が100兆個以上流れていると考えられている。
「エクソソーム」は細胞と細胞の間に存在するだけでなく、体液(血液、髄液、尿など)にも存在して体内を循環し、細胞間の情報伝達に使われていると考えられている。
最近では「エクソソーム」内の「mRNA(メッセンジャーRNA)」を利用して、新型コロナウイルス(COVID-19)用のワクチンも作られている。
Craif(クライフ)
「エクソソーム」は細胞内のタンパク質、核酸などを含むため、由来する細胞の特徴を反映していると考えられ、がん細胞から放出される「エクソソーム」は、がん細胞の生存、悪性化、転移などに関与し、がん細胞に有利に働くように機能していると考えられている。
悪性度の高いがん細胞から放出された「エクソソーム」が悪性度の低い細胞に働きかけ、その細胞の性質を変化させることを証明した報告も出ているが、「エクソソーム」内の「miRNA(マイクロRNA)」を検出してガンの早期発見を目指す「Craif(クライフ)」というベンチャー企業を、日本経営合理化協会の「本郷バレー・リモート視察セミナー」で訪問した。
「Craif(クライフ)」は、小野瀬隆一CEOと名古屋大学工学部生命分子工学の安井隆雄准教授により設立された「人々が天寿を全うする社会の実現」を目指した、尿検査によるガンの早期発見を目指す企業だ。
ここのコア技術である「酸化亜鉛ナノワイヤ」を使って1滴の尿から1,300種以上の「miRNA」を回収、その発現パターンを機械学習してガン進展に役割を持つ「miRNA」を検出することで、従来の血液検査や画像診断、内視鏡などでは発見しにくいガンを早期発見する仕組みだ。
来年2月から肺ガン、卵巣ガンの検査を開始するとしており、期待している。
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●Craif(クライフ)
https://craif.com