日本ではバス、トラック、タクシーなどの運転手不足が「2024年問題」として懸念されているが、中国ではロボタクシー(自動運転タクシー)が普及し始め、タクシー運転手や教習所教官の職を奪うのではないかと懸念されている。
検索で有名なバイドゥ(百度)が2022年に開始したロボタクシーサービス「アポロ・ゴー(Apollo Go)」は、武漢で400台以上が走り、中国10都市に拡大、サービス開始以来全国で600万回の乗車実績がある。
年末までに武漢で1,000台、2030年までに100都市で運営する計画を公表しているが、バイドゥが乗車料金の60%を負担しているため、安さも魅力となっている。
武漢のロボタクシーのほとんどは「レベル4」の自動運転車で、道路上のほとんどの状況では人間の介入を必要としないが、駐車場のような場所では混乱する可能性もある。
安全性を巡っては中国でも懸念が持たれているが、アメリカが事故発生を受けて承認手続きを停止したのに対して、中国は試験運行を積極的に進めている。
◾️日米のロボタクシー
アメリカではGoogleのウェイモ(Waymo)が商業ベースで完全自動運転タクシーを運行、もう一つのゼネラルモーターズ(GM)のクルーズ(Cruise)は、昨年サンフランシスコで自動運転車が歩行者を負傷させたことを受け、ロボットタクシー事業の営業を停止していた。
クルーズは7月23日にダラス、ヒューストン、フェニックスでサービスを再開すると発表しているが、テスラはロボットタクシーの発表を8月から10月に延期するなど、アメリカでの進展は緩慢だ。
日本ではホンダが、昨年10月にGM・クルーズと2026年初頭に日本での自動運転タクシーサービスを開始する基本合意をしている。
来年から東京・台場エリアで運転席などを備えない自動運転専用車「クルーズ・オリジン」で実証を開始、その後中央区、港区、千代田区へと順次拡大を図り、最大500台まで導入する計画だ。
トヨタはタクシーを見送り、自動運転バス・シャトルサービスを考え、日産は横浜・みなとみらい地区で走行実証を行う予定だ。
◾️中国の状況
中国では19都市がロボタクシーや自動運転バスの試験走行を行っており、7都市では完全自動運転の試験サービスの承認を得ている。
また、トヨタが出資する小馬智行(ポニー・エーアイ)は200台を運行し、2026年までに1,000台増やす予定、自動運転技術スタートアップ・文遠知行(ウィーライド)は、自動運転のタクシー、バン、バス、街路清掃車を走行中、電子商取引のアリババが支援するオートXは、北京、上海などの都市でロボタクシーを展開、上海汽車集団(SAIC)は2021年末からロボタクシーを運行している。
中国には1,000万人のタクシー運転手がおり、その内700万人がライドシェア会社で働いている。
彼らの多くは他の産業で職を失った後で、運転手が稼ぐ最後の手段のため、7月にはソーシャルメディアで「自動運転車はタクシードライバーの暮らしを奪っているか」というハッシュタグも登場するなど、ロボタクシーによる失業の話題が検索ランキングのトップに急上昇している。
運転手不足が悩みの日本にとっては、自動運転バスやロボタクシーが解決策の一つになりそうだが、景気が後退している中国では「失業」懸念となっている。
======== DATA =========
●百度・Apollo Go
https://en.apollo.auto/
●Google・Waymo
https://waymo.com
●GM・Cruise
https://www.getcruise.com
●ホンダ「日本での自動運転タクシーサービスを2026年初頭に開始予定」
https://global.honda/jp/news/2023/c231019a.html
●小馬智行(ポニー・エーアイ)
https://www.pony.ai
●文遠知行(ウィーライド)
https://www.weride.ai
●オートX
https://www.autox.ai/ja/
●上海汽車集団(SAIC)
https://www.saicmotor.com/english/