賛多弁護士:財務省等が公表した、「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(注1)では、
「取引価格の再交渉において、
①仕入税額控除が制限される分について、
②免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税の負担をも考慮した上で双方納得の上で取引価格を設定すれば、
結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではありません。」と記載されています。
太田社長:免税事業者とよく話し合って、免税事業者の納得の上で、取引対価を合理的な金額だけ引き下げることは法律違反とはならないのですね。
賛多弁護士:はい、そのとおりです。
①については、インボイス制度実施後3年間は仕入れ額相当額の8割、その後の3年間は同5割の控除ができることとされています。
ですので、「仕入税額控除が制限される分」というのは、時期によって異なることにはご注意ください。
太田社長: ああ、そういうことになりますね。
賛多弁護士:また、②についても、免税事業者が負担していた消費税も払えないような価格を設定した場合には、独占禁止法や下請法上問題となります。
太田社長:まあ、それはそうでしょうね。
免税事業者に、こちらがお願いして課税事業者になって頂く場合には、こちらから値上げの協議などをしないと、何らか問題になるのでしょうか。
賛多弁護士:さすが社長、鋭くていらっしゃいますね。
先ほどご説明したQ&Aでも、免税事業者が要請に応じて課税事業者となるに際し、「消費税の適正な転嫁分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置く場合」についても「独占禁止法上又は下請法上、問題となるおそれがあ」る、と記載されています。
太田社長:ああ、やはり、取引価格については「明示的に協議する」ことが必要なんですね。
賛多弁護士:そうなのです。結果的に、取引価格が据え置きになっても構わないので、御社の方から、消費税負担分の転嫁(要するに「値上げ」)の必要性についての協議を持ち掛け、実際に協議をして、その協議の詳細を記録に残しておくことが必要です。
太田社長:わかりました。また疑問が生じたら、ご質問させて頂きますね。
賛多弁護士:はい、いつでもお尋ねください。
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執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 木元 有香
(注1) 「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(令和4年1月19日 財務省、公正取引委員会、経済産業省、中小企業庁、国土交通省、改正:令和4年3月8日)
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice_qanda.html
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