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採用・法律

第124回 隣地を使用する権利

中小企業の新たな法律リスク

スーパーマーケットを経営する伊藤社長が、賛多弁護士のところへ法律相談に訪れました。

***

伊藤社長:今日は、私が住んでいる家に関する相談をお願いしたいです。私の家は築50年の一軒家でして、隣地との間に塀を設置しています。塀は、コンクリートブロックで造られており、前の所有者によると、家を新築したときに一緒に施工してもらったようです。家については、私が前の所有者から購入した時に大規模な修繕を行ったのですが、塀については、その際に行いませんでした。この度、塀が老朽化してきたので、塀の修繕工事を行うことを予定しています。

 

賛多弁護士:なるほど。どのような点が気がかりなのでしょうか。

 

伊藤社長:修繕工事を行う業者さんに状況を見てもらったところ、塀の修繕を行うためには隣地に立ち入って作業をする必要があると言われてしまいました。隣地には大きな倉庫が建っており、以前は人の出入りを確認することができましたが、最近はあまり使用されていないようで、隣地の使用について相談をすることができません。無断で隣地に立ち入って作業をしてもらうのは、さすがに問題ですよね。

 

賛多弁護士:はい。無断で立ち入ることは避けてください。令和5年4月1日に施行された民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)の内容を踏まえてご説明します。

 

伊藤社長:よろしくお願いいたします。

 

賛多弁護士:まず、伊藤社長が隣地の所有者等に対して隣地の使用をお願いし、その隣地の所有者等が伊藤社長のお願いを承諾した場合、伊藤社長は、問題なく隣地を使用することができます。

 

伊藤社長:はい。

 

賛多弁護士:問題は、隣地の所有者等が承諾をしない場合です。この場合、改正前の民法では、土地の所有者が、境界又はその付近において、障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲であれば、隣地の使用を請求することができると定められており、伊藤社長が、隣地の所有者等に対して隣地の使用を承諾すべきことを求める訴えを提起し、承諾に代わる判決を得ることで隣地を使用することができると考えられていました。

 

伊藤社長:裁判をしなければならないのでは、負担が大きいですね。

 

賛多弁護士:そうですね。この度、民法が改正し、土地の所有者は、①境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕、②境界標の調査又は境界に関する測量、又は③民法第233条第3項の規定による枝の切取りのため必要な範囲内で、隣地を使用することができるという内容になりました(ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできません)。

 

伊藤社長:元々は隣地の使用を請求することができるという内容でしたが、隣地を使用することができるという内容になったのですね。

 

賛多弁護士:はい。他方で、隣地の所有者等の利益に配慮する必要があるため、①使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び使用者(隣地を現に使用している者)のために損害が最も少ないものを選ばなければならず、かつ②あらかじめ、使用の目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び使用者に通知しなければなりません。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく通知することをもって足ります。

 

伊藤社長:分かりました。

 

賛多弁護士:原則は隣地の所有者及び使用者への通知が必要になりますので、まずは、不動産登記簿を確認して、土地の所有者を把握するところから始めましょう。

 

伊藤社長:よろしくお願いいたします。

***

上記の隣地を使用する権利の他に、電気、ガス又は水道水等の供給に関し継続的給付を受けるための設備を設置等する権利や、境界線を越えた竹木の枝の切除及び根の切取りの権利についても改正されました。改正法の概要については、法務省のページにまとめられています。

・法務省「新制度の概要・ポイント」

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00499.html

 

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 小杉太一

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