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社員教育・営業

第1回 社長の悩みを”90%解決”する全員営業【問題提起編】

社長のための“全員営業”

営業と組織の問題が解決すれば、経営上、社長の悩みの90%は吹き飛ぶ

 
 全員営業コンサルティングの開発者、経営コンサルタントの辻伸一です。
 本コラムでは、すべての部門・すべての社員を営業戦力化する『全員営業』に関連して、社長が思い描く会社組織と売上基盤を整えるポイントについてお伝えします。
 
 会社には、様々な部門が存在します。しかし、私が過去出会った中では、社員数が50~100名を超える過程で、100%といってよい確率で、全ての社員の意識に、会社の売上は営業部門が作るものという意識が芽生えていきます。
 
 しかし、会社といっても、いきなり大きくなったわけではありません。最初は、社長一人から数人、そして数十人、やがて数百人へと大きくなっていったのです。その過程で、各部門が実施する仕事が格段に増え、とても一人の人間ではこなしきれず、やがて数人でもこなしきれなくなるにつれ、各部門の抱える人数が必然的に大きくなっていったにすぎません。
 
 その根底をたどれば、なぜ、そのような部門や社員の増加が必要になったのでしょうか?
 
 ・商品の構成が格段に増えたから、そして数多く作る必要ができたため・・・
 ・お客様が増え、売上や件数が増えるにつれ、必要になったから・・・
 ・仕入れや支払の件数、社員数が増え、給与計算や採用手続が常時発生してきたから・・・
 
 社内で行う仕事の作業を中心に考えれば、上記のようなことが原因と考えられるでしょう。
 
 例えば、もし、利益を上げることが経営の最重要事項であるならば、会社というのは可能な限り人が少ないままでいる方が、固定費が抑えられて都合が良いはずではないでしょうか?
 
 にも関わらず、なぜ、人を増やす必要があったのでしょうか? あるいは、社長自身も、なぜ、会社が忙しくなるにつれて、人を増やすことに疑問を持たなかったのでしょうか?
 
 現場作業の負担増というレベルよりも、高い次元にたって考えれば、部門・社員が増えてきたのは、社外で行われる競争に打ち勝つためであり、会社全体としてお客様を増やす力を一層つけるために他なりません。
 
 このことこそが、すべての部門・すべての社員の存在意義の根本です。
 
 しかし、部門数が増え、社員数も増えるにつれ、お客様と直接接することがない部門・社員の存在も増えてきます。そうなると、会社が10~15人位までなら、いちいち社長が説明しなくても、「あのお客様が自分たちの給料の源」ということを、全ての社員が肌感覚で理解できていたものが、やがて規模拡大と年月経過の中で、会社に来て指示されたことをやっていれば、月末に給料が自動的に振り込まれるものだという意識へと変化してしまっているのです。
 
 全員営業とは、会社と仕事が持つ本来の存在意義に焦点をあてる経営施策であり、全ての社員に自分たちの給料はお客様あってこそ、自分が携わっている仕事は、お客様作りに必要とされるから存在しているのだということを、改めて見つめ直すことが最初の出発点といえます。
 
 もし、すべての部門・すべて社員が、仕事とは、「会社で決められたこと、上司から言われたことをやる」のではなく、『自分の給料に関係するお客様を増やすために、お客様に喜ばれることを増やし、お客様に嫌がられることを減らす』のだということを真剣に考え始めると会社はどう変わっていくでしょうか?
 
 もちろん、本来の自分の職務を全うした上での話です。ゆえに、営業戦力として考えた場合、一人ひとりの力は大きくないかもしれません。しかし、いままでの仕事で「これくらいでいいか」と終わらせていたことを、全員が一歩ずつ深くやるように変わっていったり、営業とは違う部門に一年で最も忙しい時間帯に引き合いの電話がかかってきたとしても、なおざりな対応をすること等は、なくなると思われませんか?
 
 あるいは、社長の目が届かないところで、上司の判断も仰げない状況で、社員が意思決定せざるをえないときに、会社の業績(≒自分の給料)とお客様作りという2つの軸をもとに、自らの言動を判断できるようになっていくと思われませんか・・・。
 
 誤解を恐れずに言えば、どの会社にも、最初から人財などいません。そもそも人財という言葉は、本来の語源からすれば曲解であり、1万人を超すような大企業ならともかく、中小企業の経営現場からすれば言葉遊びに近いものです。いま会社にいる全ての社員をどう組み合わせて、人材(≒現有戦力)を最大限に活かしきるかしかないのです。このことこそが、中小企業の経営者が本来真剣に考えるべきことであり、その結果、業績好調な大企業になった暁には、後付けとして人財と呼べばいい話です。
 
 さて今回は記念すべき第1回につき、もう一つ、全員営業と会社経営との関係性についてお伝えしたいと思います。
 
 会社の経営資源で代表的なものは、『人、物、金、情報、時間』といわれます。経営全体を構成する要因と照らし合わせると、『人≒営業・組織』、『物≒商品・サービス』、『金≒財務会計』の3項目が直接的なものであり、「情報」と「時間」については、人・物・金のすべてに関連する内容であるとともに、この3つに関わらなければ、単体では影響を与えない副次的なものといえます。
 
 ゆえに、経営に直接的に影響を与える要因としては、経営資源として、いまから25年以上前にいわれていた『人、物、金』が中心であることは、現在でもなんら変わりはないのです。
 
 本コラムの読者は、お勉強よりも実利が好きな社長様ばかりかと存じますので、細かな一桁単位の割合は省きますが、経営資源の主たる3項目の経営への影響度については、私の今迄のコンサルティング結果からの考察では、『人≒営業・組織』で60%、『物≒商品・サービス』で30%、『金≒財務会計』で10%となります。
 
 会社の経営状況を考慮すれば、その優先度や影響度が幾分変化することはありますが、基本形としては、上記の割合を抑えた上で、社長は会社を経営すれば、意思決定において大きく外れることは、極端に少なくなります。
 
 その証拠に、社長が、現時点の会社経営で悩まれていること、心配事やトラブルが起きることは何に原因があるでしょうか?
 
 もし、営業戦略がピタリとはまり、現場活動も順調で、定価販売が出来て、売上も伸びて、社員の定着もよく、お客様との間で基本的なトラブルは滅多に発生しないとすれば、今抱えている悩みのどれくらいが解消するでしょうか?
 
 経営の影響する要因とは、その名の通り、トラブルや悩み事が発生する要因ともいえます。商品の介在しない営業はなく、営業なしに商品が自分で歩いてお客様の元にいくこともありません。ゆえに、「人≒営業と組織」が順調であるなら、粗悪品を確信犯的に扱っていない限り「物≒商品・サービス」についても短期的には問題は生じません。
 
 あとは「金≒財務会計」ですが、創業10~50年以上の会社においては、業績がトントン~黒字の状態であれば、お金の問題は、大概の場合、営業の後から遅れてついてくるものです。ただ、営業とは異質な要因であるため、営業単体だけでは解決しきれない場合が必ず出てきます。
 
 ゆえに、本当なら100%解決といいたいところですが、90%になっているのです。
 
 いままで述べてきたことが、今回のタイトルにあるように、〝全員営業“により、営業・組織に同時に手をつけることで、まずは経営の60%を革新しさえすれば、及第点以上の商品を取り扱っている限り、社長が抱えている悩みの90%は、当面吹き飛ぶという所以です。
 
 次回、2回目のコラムでは「社長の悩みを“90%解決”する全員営業【実践篇】」と題して、今回の問題提起を解決するための実践ポイントをお話します。
 
 

 【今回のポイント(〆の一言)】

 意思決定が集中し、ただでさえ忙しい中小企業の社長は、あれこれ中途半場に関わるより、経営の一番の急所が何かを理解し、まずは、そこに本気で取り組むべきである。
 

第2回  社長の悩みを”90%解決”する全員営業【実践編】次のページ

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