こんにちは!1位づくり戦略コンサルタントの佐藤 元相です。
受注失敗の痛みは、多くの企業にとって不可避な経験です。特に下請け町工場のような中小企業にとって、競争が激化するビジネス環境で、取引先からの受注を逃すことは致命的なことになりかねません。しかし、その痛みを克服し、学び、成長することができる企業も存在します。
今回のコラムでは、下請け町工場が取引先からの失注をきっかけに、営業戦略を見直し、真のパートナーシップを築いた実話をご紹介します。
失注という痛み
この町工場では、仕事の依頼があるたびに、見積もりを出して受注していました。その後は、年賀状ハガキで挨拶程度のコミュニケーションを取っていました。社長は営業も兼任し、顧客を訪問して関係を築く役割を果たしていました。しかし、ある時から、今まで通り見積もりを出したにもかかわらず失注することが多くなってしまいました。これは、社長にとって大変ショックな出来事でした。なぜなら、これまでのやり方が通用しなくなったことを示していたからです。
社長は失注する要因を考えました。その結果、従来のやり方では、顧客とのコミュニケーションが不足していることに気づきました。顧客は単なる取引相手ではなく、パートナーであり、そのニーズを正確に理解し、提供できる価値を提供しなければならないと考えたのです。
手書きのハガキと真摯なコミュニケーション
この認識から、社長は新たな営業戦略を展開しました。まず、手書きのハガキを使ったコミュニケーションに注力しました。新規受注のためだけでなく、既存のお客さまへの挨拶ハガキなど、手書きで感謝の意を伝えることを日課としました。この取り組みは、お客さまとの関係をより強固にし、信頼を築く助けとなりました。
しかし、最も重要なのは、失注した先にも手書きのハガキを送ったことです。ハガキには以下のようなメッセージを含めました。
「この度はお見積もりの依頼をいただきありがとうございました。残念ながら御社のご希望に添えず申し訳ありません。しかし、技術的な説明やサポートが必要であれば、何でもお手伝いさせていただきます。」
このメッセージは、単なる挨拶ではなく、顧客に真摯に協力し、サポートする意志を表すものでした。そして、これが意外な反応を引き起こしました。
担当者からの連絡があり、「今回、お断りしたのは、見積もり金額が原因ではなく、クライアント様の要望に満たす製品提案ができないことなのです」との言葉が返ってきました。その言葉を聞いた社長は、「それならば一緒に考えて課題解決しませんか?」提案しました。すると担当者は「ぜひ」と応じ双方が協力して、新たな解決策を見つける道を選びました。
こうして、取引先との関係が単なる下請けからパートナーシップへと変化しました。お互いが課題解決に向けて協力し、信頼を築き、成果を上げることが目標とされました。
真のパートナーシップで競争力を高める
この事例は、経営戦略の一つとして、ランチェスター顧客維持戦略にあたります。ランチェスター顧客維持戦略は、顧客のシェア率(占有率)を高めていくことを大事にしています。この町工場は、失注したことから学び、顧客との真摯なコミュニケーションを通じて関係性を深め新たなビジネス機会を見つけ出したのです。
顧客のニーズや課題を理解し、その解決策を共に見つけ出す姿勢が、ビジネスの発展に不可欠です。そして、この姿勢こそが、ランチェスター顧客維持戦略においても重要な要素なのです。
顧客とのパートナーシップを築くことは、単なる取引関係を超えて、お互いにとって価値ある関係を構築することです。注文を受けることだけが目的ではなく、お客さまが抱える課題や問題を共に解決し、彼らの成功に貢献することが価値を認められ、競争力を高めることになるのです。
最後に、顧客の課題解決を共にする。これが、現代の営業のあり方であり、ランチェスター戦略の本質です。お客さまとの信頼を築き、協力し、共に成長することで、企業は競争力を高め、持続的な成功を収めることができるでしょう。この町工場の事例は、私たちにとって貴重な教訓となり、ビジネスの未来に希望をもたらしています。