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- 第93回 「スカイカー(空飛ぶクルマ)」がいよいよ現実に!
~EV・自動運転の次の主戦場で日の丸メーカーはどう戦う?~
SF映画やアニメに登場する「スカイカー(空飛ぶクルマ)」が、いよいよ現実に空を飛び回る日が近づいてきた!
●「スカイカー(空飛ぶクルマ)」がいよいよ離陸の時を迎える
夢の技術だったEV(電気自動車)や自動運転が現実のものとなりつつある近年、乗り物に関する人類の次の夢は「スカイカー(空飛ぶクルマ)」にちがいない。
以下は、1962年(昭和37年)に発行された男児向け雑誌『少年』(光文社)誌上掲載の「未来予想図」に描かれた「21世紀 交通のエース 空のマイカー」の絵(伊藤展安氏画)だ。
りゅうじんと同世代であれば、1965年(昭和40年)からTBS(東京放送)系で放映されたアニメ『スーパージェッタ―』の「流星号」を覚えておられるだろう。
そんな夢物語だった「スカイカー(空飛ぶクルマ)」がいよいよ離陸の時を迎えつつあるのだ。
●「日の丸スカイカー」が2020年東京五輪の開会式で聖火を点灯する!?
トヨタが支援する日本製の「スカイカー」が、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開会式で聖火を点灯すると話題を呼んでいる。
この世紀のプロジェクトを推進しているエンジン役が、一般社団法人「CARTIVATOR Resource Management」だ
「スカイカー」実現のために、資金資材の管理及び団体の運営を担い、活動・開発は若手技術者・ベンチャー関係者を中心とする有志の参加者が推進している。
「CARTIVATOR(カーティベーター)」とは、「モビリティを通じて次代に夢を繋ぐ」ことを使命に、日本発の「スカイカー」を開発する有志の活動だ。
2012年に発足し、2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会での発表、2025年の第一モデル発売を目標としている。
2017年に、トヨタグループ15社からの支援が決定。2018年末までに有人の試作機を完成させる予定だ。
2018年8月には、有志団体による活動と平行して、2020年以降の空飛ぶクルマ実用化に向けて、「株式会社SkyDrive」を設立した。
「CARTIVATOR」と「SkyDrive」が連携しつつ、2020年のデモフライトの実現、そして、未来のモビリティ社会に貢献出来る企業を目指して、鋭意努力するとしている。
●官民の“空飛ぶクルマ”関係者が一堂に会する協議会を開催
2018年8月29日は、日本の「スカイカー」(空飛ぶクルマ)の将来にとって、初めの一歩となる歴史的会合が開催された。
国土交通省が経済産業省と合同で、日本における“空飛ぶクルマ”の実現に向け、官民の関係者が一堂に会する「空の移動革命に向けた官民協議会」を設立し、その第1回会合を開催したのだ。
会合では、前述のCARTIVATORの他、Drone Fund、NEC日本電気、プロドローン、テトラ・アビエーション、Temma、 アメリカの配車サービス大手のUber Technologies Inc.がプレゼンテーションを行った。
リリースには以下のように記されている。
日本においても、自動車や航空機の業界などの有志が集まる団体や、ドローンなどのベンチャー企業、投資ファンドなどの様々な分野の関係者が、都市の渋滞を避けた通勤、通学や通園、離島や山間部での新しい移動手段、災害時の救急搬送や迅速な物資輸送などの構想を描いて、「空飛ぶクルマ」の研究開発を始めている。
こうした構想を具体化し、日本における新しいサービスとして発展させていくためには、「民」の将来構想や技術開発の見通しをベースに、「官」が、民間の取組みを適時適切に支援し、社会に受容されるルール作りなどを整合的に進めていくことが重要です。こうした取組みをロードマップに反映し、官民の歩調をそろえつつ、空飛ぶクルマの実現を促進して行く。
●“空飛ぶクルマ”実用化へ、経産省が2019年度予算要求
経済産業省は、2019年度予算の概算要求に、空飛ぶクルマなど先端技術の研究開発を強化する関連費用を盛り込む。
同省では、「空飛ぶクルマ」を「ドローン」と「飛行機」の間に位置づけられる移動手段と見ている。
電動モーターでプロペラを回して、空を飛ぶことなどが想定されていて、海外では、次世代の成長分野として開発競争が始まっている。
政府は、安全基準や管理についての議論を進め、年内にロードマップを策定する方針で、経済産業省も2019年度予算の概算要求に、こうした先端技術の強化に向けた研究開発費を盛り込むこととなった。
●欧米では「スカイカー」の予約販売が既に始まっている
欧米では、道を走り、空を飛ぶことができる予約販売が既に始まっている。
スロバキア初の「AeroMobil(エアロモービル)」は、走行時は翼を格納し、空を飛ぶ際は小型飛行機へと変形する「スカイカー」だ。
2017年にドイツで開催されたフランクフルトモーターショーに、「AeroMobil4.0」が出展され、予約販売を開始した。
搭乗者数は2人で、自動車時は最高時速160km、飛行速度は360kmで、航続距離は最大750kmとのこと。
発売時期は2020年。市販モデルは限定500機で、販売価格は120万~150万ユーロ(1億4千万~1億7千5百万円)。
ヨーロッパでは飛行の認可を取得済みで、今後、アメリカ、中国と販路を拡大する予定だ。
「AeroMobil」は、BMWやフォルクスワーゲン、アウディでエンジニア兼デザイナーとして自動車の開発に携わったステファン・クライン氏と、発案者で共同創業者のユライ・バスリックCEOによって、スロバキアにおいて、1990年代から20年以上にわたり研究開発が進められてきた。
現在、世界で一般消費者向けの商用化に最も近いとされる、この「空飛ぶクルマ」の走行と飛行の両方の動力となるエンジン「Rotax 912」は、普通の自動車用のレギュラーガソリンを燃料に駆動し、どこでもガソリンスタンドで給油できる。
車体は、ボディー・シェル、ウィング、ホイールに至るまで、スチールのシャーシをカーボンファイバー製の高度な合成素材で覆い、F1のレースカー並みの強度を確保した上で、極限まで軽量化されている。
そのため、重量はわずか400kgしかなく、一般的な日本製の軽自動車よりもはるかに軽い。
2人乗りで、地上走行時の全幅は1.6m、全長はやや長めの6mだが、たいていの標準的な駐車スペースに停めることが可能で、ガソリンスタンドの利用も問題ない。
空を飛ぶ際は飛行モードをオンにすれば、スーパーカーのルーフがオープンするように、車体の左右に格納されている翼が自動的に広がり、全幅8mの航空機にトランスフォームする。
セスナなどの小型飛行機と同じ約200mの滑走後、車体後部にあるプロペラを使って飛行する。自動操縦機能や高度なパラシュート・システムも装備されており、誰もが安全な空の旅を楽しむことができる。
●フォードとライト兄弟を生んだアメリカが黙って見過ごすはずがない!
自動車の発明は1886年に開発に成功したドイツのカール・ベンツに譲ったものの、アメリカのヘンリー・フォードが、1903年に3度目の創業で「T型フォード」によって自動車の国際的大衆化を実現した。
また、同年、ライト兄弟が世界初の飛行機の有人動力飛行を成し遂げた。
世界に冠たる自動車王国・航空王国であり、進取の気性に富むアメリカが、「空飛ぶクルマ」という前途有望なフロンティアを見逃すはずがない。
ヨーロッパの「エアロモービル」に先んじて、2010年から「空飛ぶクルマ」の予約販売を開始している企業がアメリカ・マサチューセッツ州ボストンの郊外にある。
「テラフジア」(Terrafugia)だ。同社は既に空陸両用車「トランジション」(Transition)の販売をスタートしている。
また、さらに画期的な新モデル「The TF-X」の開発構想を発表した。同機は従来から知られる他社の「空飛ぶクルマ」とは、構造上、根本的に異なる点が2つある。
1つは、離着陸時にだけ出てくる両翼のプロペラによってヘリコプターのように垂直離着陸が可能で、滑走が不要なため利便性が格段に高い。
もう1つはプラグイン・ハイブリッド車である点だ。電気自動車のスタンドなどからバッテリーの充電ができる他、飛行中にエンジンを駆動することによってもチャージされる。道路走行は電力で離着陸も電力補助で行うため、静かでよりクリーンなのだ。
●垂直離着陸機能を備えた地上も走れる航空機「VTOL」
垂直離着陸機能を備えた航空機は、「VTOL」(Vertical Take-Off and Landing)と呼ばれるが、VTOL機の中には道路上を走行可能な機種も開発されている。「空飛ぶクルマ」ならぬ「地上も走れる飛行機」だ。
アリゾナ州フェニックス郊外にある 「クロスブレード・エアロスペース」(Krossblade Aerospace)が開発中の「スカイ・クルーザー」(SkyCruiser)は、垂直離着陸、ホバリング、高速飛行、道路上の走行まで可能な、まさに「地上も走れる飛行機」である。
しかも、動力はすべて電気モーターのEV(電気自動車)だ。発電用のエンジンでバッテリーを充電し、4つのモーターでプロペラを駆動して垂直に上昇・降下する。
翼を広げて飛行する際には、垂直移動用のプロペラは格納され、モーターで回る最後尾の2つのプロペラで前進する。
飛行時のサイズは、全幅9.5m、全長8.4m、全高2.3mだが、道路走行時には翼とプロペラは車体に格納するため、全幅1.5m、全高1.8mにコンパクトに変身する。
地上での最高時速は120km。飛行時の巡行速度は時速505km、航続距離は1620kmに及ぶ。
垂直離着陸が可能な「地上も走れる飛行機」は、空港まで行かずとも広場さえあれば、その場で乗降できる。
例えば、ロサンゼルスからサンフランシスコまで545km(東京~神戸とほぼ同距離)を移動する場合、従来ならば、クルマで空港まで移動し、搭乗時刻を待って離陸。着陸後、クルマで目的地まで移動すると3時間以上を要する。それが、わずか1時間強で目的地に到達できるようになるのだ。
「VTOL」とEVの技術の融合によって、20世紀型の旅客機や自動車と比較して劇的に時間と燃料をセーブできる高速移動マシンが現実のものとなる。
●世界で最も売れている1千万円代の「スカイカー」
米国オレゴン州に本拠を置くサムソンスカイ(Samson Sky)社は、2018年9月、スカイカーの「スイッチブレード」(Switchblade)の世界予約受注が800台に到達したと発表した。
同社の「スイッチブレード」は、三輪デザインの空飛ぶ車だ。ボディはカーボンファイバー製で、全長はおよそ6.2m、全幅はおよそ8.2m。
自動車から飛行機への変身は、格納式の左右の翼と尾翼を引き出す方式で行い、所要時間は約3分。
1.6リットルのV型4気筒ガソリンエンジンを搭載し、最大出力は190hp。最高時速305kmで飛行でき、路上での最高速度は時速200kmに達する。
購入者が自ら組み立てるキットでの販売で、価格は12万ドル(約1330万円)。追加で2万ドル支払えば、組み立てを依頼することもできる。
同社は、世界24か国、米国の46州の顧客から、この「スイッチブレード」の予約受注を獲得したという。
●配車ビジネスの「Uber」がプレゼンする「空飛ぶタクシー」
米国における配車ビジネス大手の「Uber」の最高執行責任者が来日し、同社で進めている「空飛ぶタクシー」を、東京を含む5都市で実験しるとプレゼンテーションを行った。
どの国でも実際に道路を走行し、空を飛行するには、さまざまなハードルがあるものの、「空飛ぶタクシー」が実現すれば、新たな移動手段として効率的で、時間を大幅に節約できることはまちがいない。
●EVの次の主戦場「空飛ぶクルマ」で日の丸メーカーはどう戦う?
世界の自動車販売台数で世界のTOP10に、トヨタ、日産、ホンダ、スズキの4社が名を連ねる自動車大国の日本が、爆発的に拡大する可能性を秘めた「空飛ぶクルマ」市場に対して、手をこまねいてはいられない。
既に2014年には、アメリカ・サンフランシスコで開催された、ブルームバーグ主催の「ネクスト・ビッグシング・サミット」(Bloomberg‘s Next Big Thing Summit)で、トヨタ自動車の技術管理部担当の吉貴寛良常務(当時)が、「空飛ぶクルマ」の研究・開発を進めていることを明らかにした。
詳細は一切明かされていないが、富士山の麓にあるトヨタの東富士研究所で、プロペラを使ってホーバークラフトのように地上に浮かび上がる「ホバーカー」の開発を目指し、車体浮揚技術を研究していると見られる。
おそらく、自由自在に空を飛び回れる乗り物ではなく、路面から浮上した状態で移動するクルマだと推測される。
同社は世界中に車輪とタイヤを持たない「空飛ぶクルマ」を最初に広める企業となるかも知れない。
同じくこのサミットに登壇したNHTSA(アメリカ運輸省道路交通安全局)のデビッド・フリードマン局長は、トヨタの先端研究は「将来有望な革新的技術である」とコメントした。
●「スカイカー市場」で“ものづくり大国”日本の真価を発揮!
一方、ホンダ(本田技研工業)こそが、日本初の「空飛ぶクルマ」を開発すると見る専門家も多い。
同社は、2014年に、日本で初めての小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」(HondaJet)の量産型1号機の初飛行に成功。
構想から半世紀を経て、いよいよホンダ製の航空機が量産体制に入った。
7名乗りの同機は、日本円で450万ドル(約5億8000万円)するが、2015年にアメリカで販売をスタートして以来、北米、中南米、欧州、東南アジア、中国、インド、中東で発売し、今や小型ジェット機の分野で世界ナンバーワンとなっている。
アメリカでは、石油危機の際に低燃費によって人気を博したホンダの「シビック」になぞらえて、燃費の良さから「空飛ぶシビック」と呼ばれている。
2018年6月には、ついに日本での販売が開始を発表。7代目の八郷隆弘社長が、「ホンダがこういうものをつくっていることを日本でも理解してもらい、チャレンジしている姿を見せたい」と述べた。
航空機事業への参入は、創業者、故・本田宗一郎氏の悲願であり、同社が自動車事業にまだ参入していなかった1962年(昭和37年)に航空機事業への参入を宣言し、航空機開発のエンジニアを募っていた。
5代目社長の吉野浩行氏と6代目社長の伊東孝紳氏も、東大と京大で航空工学を専攻していた。
宗一郎氏の空への憧れは強く、ホンダのエンブレムであるウイングマークは「いつかは空へ羽ばたきたい」という願いを込めて採用されたものだ。
また、同社は、2009年に、コンセプトカーとして、フランスの工業・自動車デザイナーのジョナサン・マイーディン(Jonathan Mahieddine)氏がクリエイトしたホバーカー「FUZO」のデザインを発表している。
車体はカーボン素材で4機のタービンエンジンを搭載。垂直に離着陸し、空中に浮き上がったまま、最高時速約560kmで飛行することができるとのこと。
EV(電気自動車)やドローンの市場では、アメリカや中国の後塵を拝している“ものづくり大国”日本の自動車メーカーだが、次の主戦場と目される「スカイカー(空飛ぶクルマ)」では、その本領を遺憾なく発揮することを期待したいものだ。
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