4 経営者が今すぐ取り組む施策
では、不祥事に関連して具体的にどのような施策を講じればよいでしょうか。
1.従業員の「声なき声」を拾い上げる仕組みづくり
不祥事は、日頃から組織内に潜在する問題が表面化した結果です。その対処としては、従業員が安心して声を上げられる環境が不可欠です。会社に対する批判的な声を、経営陣が逃さないことが重要です。
①匿名での意見箱や相談窓口の設置:ハラスメントやコンプライアンス違反に関する相談を、匿名でも受け付けられる窓口を設けます。
②心理的安全性の高い組織風土の醸成:上司が部下の意見を否定せず、自由に発言できる雰囲気を作ることが重要です。定期的な1on1ミーティングを通じて、従業員一人ひとりの悩みや不安に耳を傾けましょう。また、上下だけでなく、別の部署のメンバーと関われる仕組みを備えるなど、社内での従業員同士の関わりを多角的に作っていくような施策が望ましいでしょう。
③不満をポジティブに捉える文化:「不満は改善の種」という考え方を共有します。不満が出た時に頭ごなしに否定せず、どうすればより良い組織になるかを共に考える機会としましょう。
2. 客観的な調査を速やかに
実際に何か起きた際のフローも重要です。
①有事の際の対応プロセスの明確化:不祥事やトラブルが発生した際の対応フローを事前に定めておきます。誰が窓口となり、どのような情報を、どのタイミングで開示するのかを明確にしておくことが、迅速かつ誠実な対応を可能にします。決して身内だけで判断を終わらせないことも重要です。
②第三者委員会の速やかな設置
最近の不祥事案件で目立つのが、発覚時に、自社内で調査委員会を設置し、身内での調査を行ったうえで、処分を判断してしまうケースです。記憶に新しいものでは、著名なフジテレビ案件、いじめによる自殺者が出た宝塚歌劇団案件も同じ構造でした。事案そのものも深刻ですが、いずれも、会社が身内のみの調査で判断しようとした過程に批判が集中しました。結果として、外部専門家や弁護士を入れた第三者委員会を設置し直し、再調査に踏み出すという流れも共通しています。率直に言って、これは経営判断のミスというほかないと思われます。
経営者の皆さんは、不祥事があった際には、身内だけで判断しないことを肝に銘じて、素早く客観的な調査に着手できるようにフローを作りましょう。それが、会社を守る大切な判断につながります。
5 まとめ
この猛暑の夏を騒がせた甲子園名門校の事例は、私たちに「問題が起きた時こそ、その組織の真価が問われる」という普遍的な教訓を与えてくれています。不祥事を一時的に隠すことはできても、その不誠実さは必ず組織を弱体化し、やがてはより大きな代償となって跳ね返ってくるのです。
大切なのは、日頃から「声なき声」に耳を傾け、有事の際には身内だけで判断せず、誠実かつ透明性の高い対応を貫くこと。それが、従業員の安全を守り、顧客の信頼を再構築し、社会からの期待に応える唯一の道です。ウェルビーイング経営の本質とは、まさにこの「誠実さ」という土台に他ならないことを、改めてお伝えしたいと思います。























