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第85話 ブータンの「ABC」 *「D」もあり

北村森の「今月のヒット商品」

ブータンを初めて訪れました。首都であるティンプーからクルマで9時間かかる町であるティンティビ周辺を中心とした、農村地帯への調査取材が目的です。

仕事の話をここでしたいわけではなくて、ブータンにいたときから「このコラムを通して皆さんにお伝えできれば」と感じていた内容を今回綴ります。どうってことのない話かもしれませんけれど。

 

今回のブータン出張、かなりタフな行程でした。首都からの長時間移動もそうですし、現地調査の場所によってはけっこう暑く、日差しも厳しいものでしたから。

 

そうなると毎日の楽しみは食事とお酒です。で、皆さんにお伝えしたいなあ、と思ったのは、お酒のほう。ブータン各地には「アラ(Ara)」という蒸留酒が根づいているんですが、これ、酒造会社が生産したのをお店で広く売っているのではなくて、家ごとにつくっているのだそうです。家の数だけ味があるらしく、地元の人は「おかあさんの味なんです」と語っていました。

自宅で容易に使える小さな蒸留器を使って仕上げるとも教わりました。見せてもらったら、縦に長細いバケツのような形状です(ドラム缶よりも、はるかに小さいサイズ)。そして使う材料は、地域や家によって異なる、とも…。お米からつくるアラ、蕎麦からつくるアラと、私が実際に口にしたものもそれぞれでした。それらの味は、焼酎をイメージしていただいてかまわない感じです。今回、出張で移動するなかでいくつものアラに出逢いましたが、ぐっと深い味わいのアラもあれば、ごく軽やかなアラもありました。色は透明なものも、そうでないものも…。上の画像は、蕎麦のアラです。薄い紅色を帯びていました。

 

農村地帯での調査を終えて、首都のティンプーに戻りました。今回の出張でのブータン側のパートナーと、おつかれさまの会食を楽しむ時間を得られたのですが、その夜に勧めてもらったのが上の画像です。これは「バンチャン(Bangchang)」という名の醸造酒。お米や麦、コーンなどを用いているそうで、とても優しい甘みを感じさせます。このお酒の名前、日本人からすると、なんだか親しみがわきもしますね。

 

実は、バンチャンを飲む前、最初の乾杯で卓上に運ばれてきたのは、この上の画像の一杯でした。その名は「シンチャン(Singxhang)」。小麦やコーンを使った醸造酒といいます。こちらは酸味の心地よいお酒でした。

で、杯が進むなかで、ブータン側のパートナーがこう笑って話してくれました。

「これがブータンの『ABC』です」

アラ、バンチャン、シンチャン。地域に根づき、愛飲されている身近なお酒への思いを込めて「ABC」と呼んでいるんです、と…。まあ、シンチャンは厳密には「S」ですが、そこは目くじら立てず、こう呼称しているらしい。

あくる朝、もうひとりのブータン側パートナーがこう言っていました。

「『ABC』プラス『D』ですよ」

えっ、まだまだ人気のお酒があったのですか。

「いえ、『D』は『drunk(酔っぱらい)』です」

なかなかに気の利いたひとことだなあ。と笑ってしまいました。アラ、バンチャン、シンチャンいずれも、私に関していえば酔い醒めすっきりでしたけれど、確かにすいすいと入って、飲んだ当夜はいい感じに酔ってしまってはおりました。

こうした経験をしてみて、改めて感じたのは、出張なり観光なりで遠くに旅したとき、記憶に深く刻まれるものとはやっぱり「そこにすでにあって、ほかならぬ地元の人にちゃんと愛されている、そうしたなんらかの存在」なのだなあということでした。私自身、地域ブランディングに携わる際に再度、しっかりと肝に銘じようと思います。

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