モノが消費者までに届けれれるまでには、輸送、倉庫・物流、流通というプロセスを経ている。倉庫設備・物流設備のトータルプランナーを掲げて、業績を着実に伸ばしているのが、株式会社パワー工業(本社・東京都港区)である。同社のコンセプトは「限られた倉庫スペースの収納力をアップさせ、効率の良い稼動力を高めていく。保管コストを抑え、さらに品質管理も向上させていける。そのような倉庫・物流設備を提案していく」である。
経済の不況下も加わって、倉庫業界は低迷傾向が続いている。そういう中でも、倉庫の設備投資は増加の傾向にある。その要因の一つは、ユーザー側のニーズの変化である。これまで自前で保有していた物流施設を売却し、賃貸に切り替えることで資産効率を高めるニーズが高まっているからだ。水面下で動き出している現実がある。
同社は「新たな発想で次世代の倉庫・物流をサポートする」というコンセプトも掲げている。独自の開発商品を持つ。「パワーステージ」(特許申請済)という倉庫設備のシステムである。その特徴は、保管スペースが2倍、自在に設置できるので季節取扱の商品に適している。もちろん、溶接不要で簡単に組み立てが可能(はめ込みとボトルアップ)である。特殊メッキ鋼板を使用しているのでサビに強く、再利用が可能である。工期も従来の三分の一で完成する。
同社の野澤拓美社長はこの業界で40年のキャリアを持つ。仕事を進める上で大事なことは“現場力”と強調する。どういう職種であれ、会社の看板はあるが、最終的には「一人ひとりの人間の力」であるという。いつも社員に訴えているのは「生涯一営業マン」という営業マン魂である。プロ野球選手の「生涯一捕手」と同じように、社長自ら率先垂範で現場を駆け回っている。いかに、現場の発想で仕事を進められるか、に注意を払っている。
40年間、現場を回っている野澤社長の実感である。「看板で仕事ができるかもしれないが、最後は一営業マンで決まるもの」という。また、業種によっても違いはあるが、仕事を成功させるには「人と人のつながりが鉄則だ」という口ぐせを持つ。人脈が仕事の上で重要であることは間違いない。それを築くのも、時間をかけた「一対一のつながり」から始まるという考えを訴えている。
団塊世代の野澤拓美社長は、言葉で教えられるものではない、という。「私自身の現場で覚えた、実感が“生涯一営業マン”という言葉に集約されています。“一人のお客様を大事に”ということも同じことです」と言い切る。この不況下でも、着実に業績を上げている企業の一つである。現場に出向く営業マンが顧客のいまのニーズを把握できるか、が問われているのである。
上妻英夫