千葉県の銚子市は全国屈指の漁港の町。その地域でベンチャー企業として成長している会社の一つが株式会社イワイ(本社・銚子市)。同社は岩井昭雄社長(71歳)が27歳で独立した食品包装の資材メーカーで創業して43年の会社である。地域は水産加工の業者がひしめく水産の町で、水産物を入れる木箱の製造販売がスタートだった。「お客様から要望を聞くことから始め、できる限りその要望にこたえる容器を作製することで成長することが出来ました」と岩井社長。
年商25億円(イワイグループ)を売り上げる会社で、卸が8割、製造が2割の包装資材メーカーである。食品資材製造から機器関連、ラベル・シール製造、企画・デザイン、衛生関連、物流資材、農業資材まで幅広く手がけている。特に、ラベル印刷工場を独自に持つ会社は少なく、独自性の強い企業になっている。成長のきっかけになったのが、「デザイン企画料を無料」「小ロットの受注で仕上げスピードが速い」などの特徴を掲げて成長を続けている。
「包装資材でラベル印刷工場を持っているところは少ないと思います。クライアントの要望が『小ロットで速く、価格もリーズナブルで』という要望には自社で印刷工場を持つしかない、という決断で始めました」(岩井昭雄社長)。全国にも、長崎、鹿児島、ひたちなか市に拠点も設けている。他社が値引き競争に巻き込まれている中で、自社で価格を決まられるという優位性に立った商売を展開することができているのである。
東日本大震災(3・11)をきっかけに、8ヵ月後、太陽光・風力などのエネルギーによる発電事業に取り組み、(株)ブレイクスルーの新会社を設立。イワイの10箇所の工場・倉庫の屋上にカナダ、中国、台湾、インドの海外4カ国のソーラーパネルを取り付け、実験中。省エネと売電の事業に本格的に取り組み始めた。「新しい商売は新規の顧客を獲得するのは大変なこと。電力は装置産業の視点で始められます」と岩井社長。
岩井社長の好きな言葉は「生涯現役、生涯勉強」である。母親の影響で「人に迷惑をかけない」ことを心がけているという。また、美術、芸術の鑑賞が趣味という岩井社長。卒寿(90歳)まで生きた葛飾北斎(江戸時代後期の浮世絵師)が語ったと言われる「天があと10年の間、命を長らえることを許されたら、本物の画工になり得たであろう」という意味に深く関心を持っているという。
「福沢心訓」という福沢諭吉(慶応義塾の創設者)の七つの条件、これは後日、他の人が書き残したといわれている。その中の「世の中で一番楽しく立派なことは一生涯を貫く仕事を持つこと」「世の中で一番尊いことは人の為に奉仕して決して恩に着せぬこと」を大切にしている。
上妻英夫