博多の味“明太子”にこだわりながら、食品の商品開発、品質管理を重要視、積極的に「食の総合プロデュース企業」を
目指しているのが、やまやコミュニケーションズ(株)(本社・福岡市)である。
昭和49年の創業以来、素材、製法、味に徹底してこだわり続けている企業であり、
一方、周辺 事業も含めて多角化事業にも積極的である。
原材料の仕入れも一貫して、営業の社員が原料捕獲隊として漁船に乗り込み、
「辛子明太子にふさわしい卵(スケトウダラ)」を求めて交渉するということも少 なくない。
アラスカ湾、ベーリング海、オホーツク海などで水揚げされたスケトウダラの卵を現地調達、仕入れた原卵を通常3日から4日間
程度の漬け込みが多いが、独自の製法(匠のたれを使用)で168時間(7日間)の低温熟成させて、コクと旨みを引き出している。
同社の辛子明太子は、「ゆず風味でコクがある」というのが常連客の褒め言葉である。
賞味期限や不当表示で問題になっている食品業界。
同社は先取りで、数年前から安全、安心した商品づくりを徹底している。
品質管理チームが中心になって、食品の安全性研究を行うと同時に、顧客の満足と安心をテーマに品質管理システムを構築。
国際標準規格のISO9001の認証を取得(2003年4月)、その工場で製造されている。
自称、研究開発型企業を名乗っているので、新技術の開発、既存製品の改良・改善を積極的に進めている。
「辛子明太子以外の商品も積極的に展開していくことを目標にしている」と山本正秀社長(37歳)。
同社は「やまや」か ら「やまやコミュニケーションズ」に7年前、社名変更をしている。
顧客や取引先とのコミュニケーションを最も大事に、食品メーカーとしてのグローバル化へ飛躍する節目にしたいという戦略
が社名変更に踏み切っている。
同社の合言葉は「わくわく」と「チャレンジ」。
陣頭指揮を執る山本社長は、スタッフに「とりあえず、やったら」「元気を出してやろう」と檄を飛ばす。
やらなければ何もわからない時代であるという。
また、物事には常に両面あるが、いい面を見るクセがあり、根っからのプラス思考の持ち主だ。
暗い人、暗く考える ところにはチャンスは来ない、という考えを持っている。
同社は「食の総合プロデュース業」を掲げて、株式会社辛太郎本舗、「YAMAYA USA INC」など、7社の関連会社を持つ。
グローバル化が急激に進 む状況を睨み、積極的に先手を打ちながら、着実に足元を固める事業展開を進めている。
先の見えにくい時代だけに、山本社長の「ツベコベ言わないでやれ」という口ぐせは的を得ているかもしれない。
いま、スピード経営が叫ばれているだけに、「とりあえず、やったら」は壁を打ち破る糸口になる可能性が高い。
上妻英夫