menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

人事・労務

第2話 年末賞与支給のための準備に向けて

賃金決定の定石

 今年もあと2カ月。11月は年末賞与を翌月に控え、社員の勤務成績を評価し賞与支給のための準備をする時期でもあります。今年はコロナショックの影響を受けて、年末賞与の大幅な落ち込みが予想されていますが、厳しい状況下ほどわが社における賞与の位置付けを明確にして軸のブレない対応することが大切です。今回は賞与をテーマにお話しましょう。

 

 ところで、皆さんは賞与を初めてもらった時のことを覚えていらっしゃいますか?

 

 社会人1年目の年末賞与。私の場合、試用期間が明けた7月は「寸志」でしたから、人生初の「賞与」はその年の年末賞与でした。評価が反映されるということに加え、事前に労使交渉の経緯が随時公表されていたこともあってか、緊張と期待が入り混じる中で支給明細票を受け取った記憶があります。人事評価の結果が支給額に反映された支給額ですから、安堵、嬉しさ、悔しさ、「来期こそは」という決意、様々な思いが交錯する瞬間でした。

 

 賞与には、年収に占める割合が大きいという賃金面から見た特性だけでなく、社員の士気(モラール)やモチベーション(動機付け)に大きな影響を与えるだけの力があります。経営者や人事担当者の皆様には、賞与支給のタイミングを社員のやる気向上や育成ための好機として、ぜひ活かしていただきたいものです。

 

 この「賞与」という言葉の定義は、労働基準法の条文中にはありません。同法施行時の通達で、「賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものをいうこと。」と定められているだけです。わが国における賞与は、年1回の決算賞与の考え方に沿って広まり、決算賞与の前払い的な位置付けで夏冬2回の賞与支給が行われるようになり、次第に慣行として定着していったものと考えられます。

 

 労使交渉の場面では今もなお「一時金」と呼ばれている賞与ですが、もはや生活一時金や賃金の後払いといった考え方をとる余地はなく、その本質はあくまでも「利益の分配」にあります。賞与の本質が利益分配にあるのですから、個々の会社の就業規則や給与規程上でも、「賞与は会社の営業成績に応じ、従業員の勤務成績にもとづいて夏季および年末に支給する。」と定められることが多く、業績が悪ければ不支給ということも当然あり得ることとなります。

 

 今般のコロナ禍の下、これまでにも幾つかの大手旅行会社や航空会社において、年末賞与を不支給とすることが報道されていますが、これは「業績回復の見通しが立たない中では、賞与ゼロもやむを得ない」という経営判断が下されたことを示しています。

 

 もっとも、業績不振を理由に賞与不支給とするとしても、その判断には難しさが伴います。賞与を払わなかったが故に稼ぎ頭の優秀社員から辞めてしまい、社員の求心力が低下すれば、業績回復が遠のくかもしれません。どんなに業績が悪くとも基本給の1.0カ月程度を準備する会社が多いのは、社員の生活を守るとともに人材流出のリスクを回避するためでもあるのです。

 

 仮に今冬の賞与支給が難しかったとしても、「来期に向けてどのような経営戦略で臨むのか」「どうやって収益を回復させるのか」については、社長が具体的な将来展望を描き、社員に向けた力強いメッセージを発信しなければ来期に繋げていくことはできません。

 

 わが社の賞与支給方針を決めるにあたっては、業績の良否もさることながら、どんな時であっても「社員のやる気を引き出し、来期の業績向上に繋げるための最善策は何か」を念頭に置いてご対応いただきたいと思います。

第1話 新連載のスタートに寄せて前のページ

第3話 テレワークを導入することの意味次のページ

JMCAおすすめ商品・サービスopen_in_new

関連セミナー・商品

  1. 賃金処遇と人事施策のやり方

    音声・映像

    賃金処遇と人事施策のやり方

  2. 緊急事態下での「賃金と処遇」

    音声・映像

    緊急事態下での「賃金と処遇」

  3. 役員報酬・賞与・退職金の正しい決め方

    音声・映像

    役員報酬・賞与・退職金の正しい決め方

関連記事

  1. 第53話 5年後に迫る『正社員の最低賃金25万円』を見据えたベースアップを!

  2. 第28話 転居を伴う人事異動と賃金施策

  3. 第57話 「最低賃金で働く人たち」とはどのような人材なのか 〜制度と慣習に埋もれさせることのない経験者の活用を〜

最新の経営コラム

  1. 相談7:含み損のある土地があるのですが、別会社で買うのがいいか、個人で買うのがいいか、どちらでしょうか?

  2. 第9回 注意しても部下が変わらないのはなぜか? ~原因は人ではなく仕組みにある~

  3. 第146回 地味ながら世のクラウド化の追い風を受けて高成長を遂げる サイバーリンクス

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. ビジネス見聞録

    第3回 今月のビジネスキーワード「テレワーク」
  2. 人間学・古典

    第36回 「温泉大国の文化」
  3. マネジメント

    国のかたち、組織のかたち(66) 米価安定をめぐる闘争⑫(奇妙な集荷争奪戦)
  4. マネジメント

    故事成語に学ぶ(25) 三人言ひて虎を成す
  5. コミュニケーション

    第141回「話して『楽しい存在』になる」
keyboard_arrow_up