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第37話 「自創経営における人格能力の育みその7 思考方法編(4)」

東川鷹年の「中小企業の人育て」

自創経営とは、業績を上げ続け、社員が安心して働き続けられる強い会社を創るために“任すから任せるに足りる人”を育てる『仕組み』です。

この『仕組み』は仕事人間として単に職務遂行能力を高めるだけの社員を育成するだけではなく、自らの人生をより豊かにする事ができ、かつ会社や社会に貢献できる“人格能力”を高めるために、仕事を通じて人間的に成長する『仕組み』となっています。

この“人格能力”の土台となる脳力開発には大きく分けて3面あり、その中の第2面が『思考方法(モノの見方・考え方)』です。

いくら第1面の『心構え』が立派でも、「考え方」が偏っていたり、ゆがんだりしては、より良い結果を出す事は出来ません。

この「考え方」も、その人の「行動」に表れていると考えられます。人の「行動」を観て、どのような「考え方」でいるかを判断することができます。

第2面の『思考方法(モノの見方・考え方)』には5つあり、4つ目の指針は、『確定的要素から出発して考える』 です。

この指針の反対面となる“良くない考え方”が、『確定的でない要素に振り回される』 です。

簡単に言えば、「噂、先入観、思い込みなどが含まれた要素で判断する」考え方です。

噂話や、先入観、思い込みなどが含まれた言動に振り回されると、勘違いや誤解、悪いイメージなどを持つ場合があり、間違った行動を引き起こすことによって、相手からの信頼を失ったり、マイナスの状況に転じることがあります。

例えば、

「お客様から値引きを求められています。値引きをすれば受注できるのですが…」

と、部下の営業マンから相談をされたらどうしますか?

この営業マンの言葉をそのまま鵜呑みにして「じゃぁ、仕方がない。値引きに応じよう」と即決するのは管理職失格です。

また、全く話に乗らないで、頭ごなしに「値引きは駄目だ!」という管理職も同様です。

実際にあった話で、確定的要素から出発して考えるために、管理職が営業同行を行いました。「お客様が値引きを求めている」ことは事実でした。

しかし、値引きをすれば、本当に受注できるのかを確認したところ、お客様の顔色が変わったのです。

「値引きをすれば受注ができる」というのは、営業マンの思い込みでした。
そこで、価値に見合う価格であることをあらためて説明する事によって正価で受注する事が出来ました。

もし、営業マンの確定的でない要素(ここでは思い込み)に振り回され、値引いた金額で受注すると、利益を下げることになります。

必ず事実の確認を行うことによって、確定的要素とし、そこから出発してこれからどうすべきかを考えることが大切なのです。

確定的でない要素には、「過去の経験」も含まれます。

「過去の経験」を引きずり、誤った判断(行動)をしている人を見かけます。

例えば、

「以前、あのお客様に断られた。」
 →(また断られたくないから、行かないでおこう。)

「昔、このお客様からクレームがあり、話を聞いてもらえなかった。」
 →(どうせ話を聞いてもらえないだろうから行かないでおこう。)

「ミスをしてしまった・・・」
 →(またミスをして落ち込みたくないから止めておこう。)

過去の経験にとらわれて、行動がおこせなくなるのは悪循環を引もたらします。

過去うまくいかなかったのは確定的な事実としても、これからも「うまくいかない」と“確定”しているわけではないのです。

環境・経済・市場・組織そして人などは“変化”をしている可能性があります。

現段階では変化をしているかどうかは確定的ではない要素なので、常に現状を確認することが重要です。

他人の言動が確定的要素かどうか?を考えるだけではなく、自らが、思い込みや先入観、偏見などの不確定要素によって、より良くなる機会を損なっていないかを考えることも重要です。

例えば、

「自分は努力しているのに、どうしてうまくいかないの?」

と、嘆きの声を聞く事があります。

その努力は、思い込んだ“つもり努力”なのかもしれません。『正しい努力』でなければ、いつまでたってもその努力は報われません。

では、『正しい努力』とはどのような努力なのでしょうか?

誰もが将来に向かって「もっと良くなりたい」と願う気持ちはあります。

自らの将来を“より良い状態”へ築き上げるために、今よりも“より魅力的な行動”をとることが大切です。

今の現状はあくまでも“出発点”にすぎません。

今は「うまくいっていない」としても、それが“終わり”ではないのです。

「うまくいっていない」のは、悪いことではなく、そこで立ち止まったまま、行動を変えよう(起こそう)としない事が良くないのです。

また、現状が「うまくいっている」としても、それに甘んじることなく、より良い状態へと発展させるために、もっと行動を変えることが大切なのです。

そのために、とるべき『正しい“努力”』とは、

【1】ありのままの現状を正確に把握する“努力”をする
「現状、どうなっているのか?」
「今、何がどこまで出来ているのか?」
「今は“未だ”何がどれだけ出来ていないのか?」(これが成長の糧!)

【2】今は未だできていない事に対して、過去を振りかえり
   『次なる手立て』を明らかにする“努力”をする

「過去はどうなっていたのか?」
「過去に何をしたのか?(しなかったのか?)」
「次はどうすべきなのか?」

【3】将来の希望を具体的に検討する“努力”をすること
「これから何をどこまでやるべきなのか?」
「そのためにどのようにすべきなのか?」

今回の思考方法では、特に①の客観的な現状を把握するにあたり、

「何が出来ていて、“未だ”何が出来ていないのか?」

を正確につかむことが重要です。

「“未だ”できていないことが、これからできるようになる」

という『決意』が真の出発点となり、成長への弾みとなるのです。

自創経営による人財育成の仕組みでは、

【3】の「将来の希望を具体的に検討する“努力”」として、チャレンジシートを活用して年間目標を設定します。その年間目標を必達するために、月間計画、週間計画、および日々の行動計画へと具体的に落とし込みます。

計画に基づいた日次、週次、月次の行動を行い、ランクUPノートを活用して反省を行い、【2】の『次なる手立て』を導き出します。

その際、【1】の「ありのままの現状を正確に把握する“努力”」が重要となるのです。

チャレンジシート、ランクUPノートを活用して、全員が“成長対話”を行い、
「現状はどのようになっているのか?」
「それは確定的な事実なのか?」
「これからどのようにすべきか?」

などを話し合い「お互いにより良くなっている状態」という成長課題を明らかにし、その課題解決方法を一緒に考える『仕組み』なのです。

経営目標を必達し続ける『強い会社』を創るために、全社員が常に「確定的要素から出発する」考え方を身につける育成を行うことが、事業を長期に渡り発展させ続けることにつながるのです。

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