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- 東川鷹年の「中小企業の人育て」
- 第23話 「ピンチはチャンス!有難う!」の精神やで
春が来ると、先代社長のこの言葉を思い出す。
「ぬくぬくとした環境だけでは、“進化”する事はでけへん。あそこの花に群がる蝶を見てみぃ。きれいに羽ばたいてるやろ。しかし、あの蝶たちも、厳しい冬に土の中で、幼虫からさなぎへと着実に成長し、力を付けてきたからこそ、土から這い上がり、木へ登る事ができ、最終的に蝶へと進化する事が出来たんや!
我々も、ピンチと思える厳しい冬の時代が来ている今こそ、全社員が成長を遂げるチャンスや!『ピンチはチャンスや!有り難う!』の精神やで!」と、2度のオイルショックがあった頃、頻繁に社員を激励して回られた。
「このピンチを乗り越えようとする過程において、1人ひとりが“自ら考え行動する”ように成長したら、会社は、必ず強く“進化”するで!それを愉しみに頑張ろうやないか!」と、飛翔計画を打ち立てて、会社が進化している状態として、上場を宣言。
さらに、「課長以上は全員億万長者にする!」と発表し、大きく羽ばたく事を宣言された。社員に夢を描かせるきっかけを与えてくれた先代社長の意向に応えるべく、「この飛翔計画を、絵に書いたモチで終わらせてはいけない。何としても実現させねばなるまい。」と、私を含め全社員が震えるような勇気と希望に立ちあがった事を昨日の事のように思い出す。
そこから全社員が“成長”というキーワードを意識し、行動が変わった。しかし、依然厳しい経済情勢の中で、意気消沈しそうになる可能性もある。そこで、“成長”し続けるための“仕組み”づくりに本気で取り組んだ。そして出来上がったのが『自創経営』である。
人も企業も厳しい経済環境の時こそ、鍛えられ育つ。しかし、この厳しい環境と同時に、“土壌”がしっかりしていなければ何も育たない。企業における“土壌”とは、組織風土である。
そこで人が育つ組織風土を創る事が、今、取り組むべき課題である。
具体的には、新入社員以外の全社員が、「誰かを育てている」という体制を整えるべきである。管理職以上の人だけが人を育てるのではない。2年目以降の全社員は、人を育てるという仕事を疎かにしてはならない。
「あなたは、“誰を”“何が”“どこまで出来る”ように育ててるのですか?」と聞かれて、新入社員以外の誰もが明確に答えられる状態である事が大切である。
そのために、年間目標の設定において、『業績・成果につながる仕事の目標(A目標)』と合わせて、『自己の職務拡大目標と人材目標(B目標)』『自己の能力向上目標(C目標)』を同時に掲げる仕組みが重要となる。
この年間目標を目に見える形にする道具として、「人材育成のための目標管理チャレンジシート」というツールを運用する “仕組み”があり、その年間目標を必達するために、月間、週間そして日々の行動へとブレークダウン出来る『ランクUPノート』というツールを活用する“仕組み”がある。
それぞれの道具を全社員が活用し、上司と部下、または社員同士で、“出来る方法を一緒に考える”『成長対話』を、年間、月間、週間、日々と行う“仕組み”がある。
この『成長対話』を行う前提において、人を育てる人は、育てる対象となる人の「夢実現」や、「成果を出す」という“成功期待”と、その成功を促すための“成長期待”を具体的に言葉に表わす事が出来るようになる事が大切である。
この“成功期待”と“成長期待”の声が飛び交う『成長対話』が行われている組織風土こそが、人が育ち、強い会社を創る要なのである。