昨年末に発表された税制改正は、私たち中小企業にとっては、よいニュースでした。
私が、以前から奨めている即時償却が延長されるからです。
もともと、今年の3月末までだったのが、2年間延長されました。
ただし、今回の改正で、これまでと違う点がコインランドリー等、本業とは全く関係なく、単に節税目的で行う投資対象は、即時償却の対象から外れる、という点です。
改めて、即時償却とは、投資した初年度に、機械や備品などの投資額を、すべて減価償却できる、という制度です。
キャッシュフロー経営の観点からは、必要な経費は、できるだけ早く、大きく計上したほうがよいです。
この意味で、即時償却という制度は、キャッシュフロー経営の申し子といえるのです。
私が考える、即時償却のメリットは3つです
①キャッシュフローがよくなる(現金が残る)
②将来何があるかわからないから経費を落とせるときに落とす
③総資産が増えない(ROAが改善する)
①即時償却をすれば、多額の減価償却費を計上できます。
通常、減価償却費は、損益計算書では、「売上原価」あるいは、「販売費および一般管理費」で計上されるため、その分、営業利益は減ってしまいます。
しかし、この即時償却というのは、特別な法律に基づいて、一時的に認められた制度です。しかも、金額が膨らみます。
この点、臨時的、かつ、多額の経費の場合は、損益計算書上では、特別損失に計上できます。
なので、これを特別損失で計上すれば、銀行や格付会社が気にする営業利益や経常利益を減らさずに、税引前利益を抑えることができます。
本業で利益が出ていれば、法人税を払うことなく、キャッシュが残ります。
②今期は、業績が良くても、将来業績がわるくなるかもしれません。
それなら、いまのうちに、落とせるものは落としておいたほうが、良いのです。
たとえ、キャッシュの支払がなかったとしても、業績がわるいときに、減価償却費を計上すると、営業利益、経常利益が少なくなります。
この①②は、コロナショックで、痛感した会社も多かったのではないでしょうか?
③即時償却をすれば、当然ながら、設備投資した金額が、資産に計上されることはありません。
つまり、総資産が増えずに、身軽な体質をキープできます。
以上、3点が即時償却をすすめるポイントです。
「長い目で見れば、どっちも同じじゃないですか?」は、税理士や経理マンの発想であって、経営者の発想ではないのです。
この即時償却には、A型、B型、C型、さらにD型があり、今回の改正では、そのすべてが、めでたく延長されることになりました。
経営者と話をしていると、即時償却は終わってしまった、あるいは、工業会から証明書をもらうA型しかない、と勘違いされている方が多いですが、そんなことはありません。
ですので、A型でも、B型でも、即時償却を活用していただきたいのです。
このうち、特に、私はC型を使うことをお勧めします。C型というのは、デジタル化のための設備投資です。
対象設備は、次のいずれかを実現するものです。
①遠隔操作
②可視化
③自動制御化
・デジタル技術を使って遠隔操作するための投資(センサーなど)
・直接、顔を合わさなくても、仕事ができるようになるための投資
・いつも出勤している場所以外でも仕事できるようにするための投資
・データの集約とか分析が可能になるような投資
つまり、人に頼らないための投資(システム化、IT化、AI化)が、C型の対象となるのです。
わが社でこれまでお手伝いした事例をあげると、
・在庫管理システムの導入
・請求管理システムの導入
・営業管理システムの導入
大きいものですと、
・基幹システムの導入/更新
などがあります。
こういったシステム投資は、A型が使えない場合が多いです。
そうすると、他の方法でとなります。B型でも申請はできますが、それよりも、C型のほうが、手間をかけずに、申請ができます。
私たちICOコンサルティングでは、手間がかかるB型はもちろん、このC型の申請もよくお手伝いしています。
つい先日も、「基幹システムの投資で、即時償却ができない!」という経営者がいました。
「なぜ?」と聞くと、「証明書がとれません」
「それは、A型の話でしょう!
C型でやったら取れますよ!」
とアドバイスをして、すぐさま、C型で申請して、承認を受けたという会社があります。
人手不足、最低賃金上昇など、私たち中小企業経営者を取り巻く労務環境は、これからより一層厳しくなります。
労務で苦しむ会社、全く苦しまない会社が、これまで以上に二極化するでしょう。
ここで考えていただきたいのは、いかに人を使わないか、人数を減らしてゆくか、併せて、1人当たりの給与を高めていくか?ということなのです。
そのために、是非とも、この即時償却制度、特にC型の即時償却を活用して、わが社のキャッシュフローを最大化させてください。