menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

戦略・戦術

第209話 「令和6年の税制改正」

強い会社を築く ビジネス・クリニック

令和6年の税制改正の中身をチェック!

昨年に与党から税制改正大綱が発表されました。

今回は、この税制改正大綱の中身をチェックしていきます。

 

最初に申し上げることとして、今回の改正、私たち中小企業にとっては「すごく影響がある」という改正にはなっていません。

 

税制改正があるたびに、いつも触れている即時償却については、2025年(R7年)3月末まで有効です。

来年の税制改正で、これが延長されるか、廃止になるかが明らかになりますが、とりあえずは、まだ1年以上続きます。

 

さて、ここからは、今回の税制改正のなかで、中小企業の経営者に影響がある項目について、見ていきます。

 

項目としては、

1.賃上げ促進税制の拡大

2.中小企業事業再編投資損失準備金の拡充

3.交際費等の損金不算入制度の延長・拡充

この3つです。

 

いずれも、すでに現在ある制度が、延長される、拡大される、という類の改正です。それぞれ詳しく見ていきます。

 

【1.賃上げ促進税制の拡大】

中小企業向けの賃上げ促進税制は、もともとありましたが、上乗せ措置を見直すことで、税額控除率が最大で40%から45%へ拡大されます。

(1)給与等の増加割合が2.5%以上

(2)教育訓練費の増加割合が5%以上 かつ 教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上

(3)次の認定を受けている:プラチナくるみん(子育てサポート)、くるみん、プラチナえるぼし(女性活躍推進)、えるぼし

 

これら(1)~(3)を満たす会社は、賃上げした金額の45%の税額控除となります。

 

【2.中小企業事業再編投資損失準備金の拡充】

これは、M&Aで取得した子会社株式に関して、一定割合を初年度に損金にできる、という制度です。

 

ただし、後からその損金にした分を利益(益金)に戻さなければいけない、というものです。

 

今回の税制改正で、

・株式を取得した際に損金算入できる金額は90%になった

・損金算入してから、10年経った後に、最初に損金算入した金額は、益金(利益)に戻す

という内容に変わります。

 

この制度を使う場合は、計画を申請して認定を得ることが必要です。

 

図にするとこのような感じです。10億円でM&A(株式取得)をした場合です。

左の部分は、一般的なM&Aのプロセスですが、仮に10億円で株式を取得することになった場合は、まず、9億円が決算時に損金にできます。

 

しかし、M&Aしてから10年後から、5年にわたって、毎年1.8億円ずつ利益に戻して、法人税を支払うことになります。

 

保険とよく似ていますね。初年度にたくさん損金にはなりますが、出口(11年目以降)を考えないといけません。

 

【3.交際費等の損金不算入制度の延長・拡充】

交際費の損金不算入制度が5,000円→10,000円になります。

 

これまでは、5000円以下の飲食費(※)は、交際費から除かれる、という制度がありました。

 

しかし、物価高などの状況に照らして、これを10,000円以下に引き上げる、ということになりました。2024年4月以後に支出する飲食費から、適用されます。

 

※なお、交際費から除かれる飲食費ですが、もっぱら、会社の役員、従業員等に対する接待等のための支出、いわゆる社内接待費は含まれません。つまり、社内の人だけの飲食費は、金額にかかわらず、交際費となります。

 

ただし、社内接待費の場合、会議費として落としている会社が多いですね。飲食すれば、必ず、仕事の話が少なからず出てくるでしょうから、簡単な会議メモをつくって、会議費で処理します。

 

なお、今回の5,000円→10,000円の拡大は、お土産代などは当てはまりません。飲食費が拡大されることになります。

 

また、交際費800万円までは、損金算入される、という制度自体は、3年間延長されています。

 

以上、内容的には、やや小粒な改正となっていますが、即時償却含めて、税制を活用するために、計画作成などのアドバイス、支援が必要でしたら、私たちICOコンサルティンググループにお問い合わせください。

第208話 「自社株を分散させてはいけません!」前のページ

第210話 「事業承継税制だけはやめなさい」次のページ

関連セミナー・商品

  1. 「第38期生」後継社長塾

    セミナー

    「第38期生」後継社長塾

  2. 井上和弘の経営の核心102項

    井上和弘の経営の核心102項

  3. 井上和弘『経営革新全集』10巻完結記念講演会 収録

    音声・映像

    井上和弘『経営革新全集』10巻完結記念講演会 収録

関連記事

  1. 第151話 「納税猶予はお勧めしません」

  2. 第65話 「今、経営者に求められる、雇用に対しての考え方」

  3. 第59話 「社員は会社第一主義で行動させよ」

最新の経営コラム

  1. #7 一流の〈講演会で覚えてもらう力〉-最前列の価値-

  2. 第81回『継続経営の真髄』~お客様に長く愛される経営とは?~

  3. 第54回 幾代も続く会社をつくる「一族のルール」

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 社員教育・営業

    第106回 コミュニケーション上手になる仕事の進め方27 仕事の改善
  2. マネジメント

    第44回 戦略なき理念は意味をなさない
  3. 戦略・戦術

    第107話 「ささやき税理士は、税務上の評価軸で会社をみている」
  4. 社員教育・営業

    第116回 コミュニケーション上手になる仕事の進め方37 生産性を上げるコミュニ...
  5. 製造業

    第316号 【急所44】仕事は、教え方まで含めて「仕組み化」せよ
keyboard_arrow_up