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製造業

第162 号 改善の痛み

柿内幸夫─社長のための現場改善

 下の写真は、このコラムの読者の方にはおなじみのマイジョギングコースです。うだるような暑さですが、負けずにジョギングを続けています。夏の強い日差しの下で走ると汗だくになりますが、気持ちがいいものです。まず健康!心も身体もしっかり鍛えていきたいものです。

●このコラムで何度もご紹介している自宅付近のジョギングコースです

kaki162-1.jpg 今回もコミュニケーションについてお話します。

 昨今の厳しい情勢の中で、多くの社長・リーダーが自社での大きな改革を実行するに当たり、「改革には痛みが伴うが…」のように「痛み」という言葉を使って話をされています。

 古い話になりますが、これは小泉改革の時にも日本国中で大いに話題になった言葉であり、その場にいる皆さんもうなずきながら聞いています。

 しかし、私はこの話を聞いた時に、皆さんが本当に社長と同じレベルでこの言葉を理解してくれているか…、は少々あやしいと思ってしまいます。

 というのも、「痛み」という言葉は分りやすいようですが、よーく考えてみるとかなり曖昧だからです。

 血がドクドク流れ出るようなものすごい痛みなのか、あるいはおでこを指でピンとされるデコピン程度の痛みなのか?

 痛みと一言でいってもとても幅が広いです。人によっては聞いたことがある言葉で、「知っている」というだけでうなずいている可能性もあります。

 この段階での理解がばらついていると、ほんのちょっとした壁にぶつかっただけでもすぐにめげたり諦めたりしてしまう人が出てきます。せっかくのいいスピーチもきちんと伝わっていなければ意味がないことになってしまいます。

 この時の「社長がおっしゃった痛み」はどんな痛みなのでしょうか?私の答はスポーツでトレーニングのレベルを上げた時の「すごい筋肉痛」です。決して病気や事故による痛みではありません。

 クラス対抗の競技会で一番の人が、もし国体に出ようとすれば練習の質も量も増えますから筋肉痛が出ます。

 同様に国体優勝者がオリンピックに出ようとすれば、あるいは出るだけでなくメダルを取ろうとすればその度に練習のやり方がレベルアップし必ず筋肉痛が起きるでしょう。

 しかし、これは目的がありかつ原因が分っている痛みです。時間が経って慣れれば必ず消え去ることが分っています。

 そしてその痛みを経験した結果、自身のレベルアップも約束されている痛みです。心配ありません、これによって死んでしまうことは絶対にないのです。

 現在の情況下では、すべての会社において変えなければいけないことがものすごくたくさんあると思います。

 しかし変えなければいけないと分かっていても、既に十分忙しくて実行はとても無理…、という理屈が通ってしまっては困ります。もし今の仕事がクラス対抗の競技会レベルであれば国体に、国体のレベルであればオリンピックにフィールドを変えなければならない時代です。

 痛みはすぐに来ますがそれはすべて筋肉痛です。計画を立ててみんなでコツコツと練習を積み重ねてレベルアップを図りましょう。ウォームアップもクールダウンもやり方を考えなければいけないね…、といった感じです。

 さて、今回は社長のスピーチの中によく出てくる「痛み」という言葉を例に使ってお話しましたが、ポイントはスピーチの具体性を上げることの必要性です。

 いつも話しているのだから今回も分ってくれるだろうという判断は危険です。改めてこれまでに行ってきたスピーチを振り返って、本当に分りやすい具体的な内容になっているかをチェックしてみてください。

 リーダーのレベルアップが組織のレベルアップに直結します。 

kaki162-2.gif

copyright yukichi

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net

 

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