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第18回 「自分の顔に責任を持つ」

社長の「氣」

 ちょうどこの原稿を書いている週に「Kiビジネストークセッション」というイベントを行いました。ビジネスの最前線で活躍される方をゲストスピーカーにお招きして、対談形式でビジネスにおける氣の活用を話し合うものです。
 今回のゲストは芸能プロダクションのホリプロの創業者である堀威夫様でした。堀様は二十年以上前より先代の藤平光一から「氣」を学ばれ、80歳を過ぎて心身統一合氣道を始められ、毎週、私が指導させて頂いています。
 
18.jpg
Kiビジネストークセッションの模様
 
 特に印象的だったお話が「人氣」についてのお話です。「勇氣」「元氣」「病氣」など氣にもいろいろあって、堀様が最後に辿り着いたのが「人氣」だったそうです。芸能の世界では勿論のこと、一般の人でも「人氣」は重要なものです。不可欠なもの。氣について学ばれるずっと前から、どうしたら「人氣」が出るのかを追求するうちに、「良い顔をつくろう」とお考えになったそうです。
 毎日生きていれば、嫌なこともたくさんあります。それを引きずったまま会社に来れば、その人には「人氣」は集まらないでしょうから、朝は鏡で顔をチェックしてから出社する。ホリプロの本社に入ると姿見があり、そこにも小さく「良い顔をつくろう」と書かれているそうです。
 自分の顔は自分でメンテナンスすべきで、良い顔をしていれば勝利の女神が微笑んでくれるのではないか。お通夜みたいな顔をしている人には絶対に女神は微笑んでくれないのではないか。そのように考えて実践されたそうです。
 当たり前のことのように聞こえますが、当たり前のことを当たり前に出来ていないことに問題があります。私の心に深く残りました。
 氣の訓練において、最もシンプルでありながら奥が深いのが「常にプラスの氣を堅持する」ことです。人間、調子が良いときにプラスの氣を発するのは簡単ですが、調子が良くないとき、逆境に直面しているときもプラスの氣を堅持するのは決して簡単なことではありません。
 「縁は人が運んで来る」のですから、プラスの氣を発していればプラスの人が集まりやすく、マイナスの氣を発していればマイナスの人が集まりやすい。物事が上手く運ばないときは、イライラしたり落ち込んだりしてマイナスの氣を発しやすいので、マイナスが近づいてきて、マイナスの悪循環に陥ります。
 物事が上手く運ばないときこそプラスの氣を発するべきで、これを無理に行うのではなく、氣の呼吸法や氣の意志法という具体的な方法で無理なく行うことが重要です。
 日本経営合理化協会主催の「藤平信一・氣の道場」でご縁があったある社長さんは「社員にどのような言葉をかけても思いが伝わらない」という悩みを持っていました。講習では常ににこやかな方でしたので、なぜ伝わらないのか理由が全く分かりませんでした。そこで、その会社を訪問することにしました。
 すると、間もなく理由が明らかになりました。会社に入った瞬間にこの社長さんは顔がこわばり、人を威圧するような表情に変わっていました。社員と挨拶を交わすときも、社員から報告を受けるときも、社員に指示を出すときも、いつも恐い顔をしています。これでは社員でなくても近づきたくありません。
 「人と接する前には必ずご自分の表情をチェックして下さい」と、私は小さな鏡を購入してこの社長さんにプレゼントすることにしました。もともと素直なご性格なので、さっそく実践されたところ、自分のあまりの形相にびっくり仰天したそうです。ご自分としては「真剣である」ことを示していたそうですが、それが完全に裏目に出ていたのです。
 それ以来、この社長さんはたくさんの鏡を購入して、自宅や会社のあらゆる処に置いてご自分の顔をチェックするようになりました。堀様が言われるように「自分の顔に責任を持った」わけです。
 以前は「社長室の扉は常に開けているのだから、相談がある人はいつでも来なさい」と言っているのに社員は誰も来なかったそうです。今では多くの社員が出入りするになり、思いも伝わりやすくなったそうです(と同時に、相手の思いも良く分かるようになったそうです)。
 当たり前のように聞こえますが、当たり前のことを当たり前に行うことが如何に重要かを示す良い例でしょう。これも氣の訓練なのです。
 
 
 

 

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