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戦略・戦術

第265号 世界のトヨタが注目する中小企業とは

社長のための“儲かる通販”戦略視点

 世界的な大企業であるトヨタ自動車社長の豊田章男氏が、ベンチマークにしている創業60年の中小企業がある。それが、長野県伊那市に所在する寒天メーカー「伊那食品工業」だ。この企業は、木が年輪を重ねるように、少しずつ確実に成長させる経営哲学を説いた『リストラなしの年輪経営』や、社員や地域の幸せを重視した経営を実践する中小企業を紹介した『日本で一番大切にしたい会社』などのベストセラー書籍により注目を集め、現在も、全国から多くの企業経営者が視察に訪れる有名企業である。

 私は、セミナーで代表取締役社長の井上修氏と知り合いになったことをキッカケに、先日、伊那市の本社を訪れ取材をさせていただいた。現在は、創業者のご子息である井上氏が2005年から社長に、年輪経営を確立した塚越寛氏が会長に、そして会長のご子息である塚越英弘氏が代表取締役副社長を務めている。そして時期社長は英弘氏、その次は井上氏のご子息が引き継ぐという流れが規定路線となっている。つまり伊那食品は、2つのファミリーが会社運営を担っている珍しい同族企業なのである。

 井上氏が同社に入社した当時は、社員数30名、売上10億円未満という典型的な地方の中小企業だったが、年輪経営を提唱・実践してきた塚越会長の功績により、売上200億円規模、社員数458名という優良企業に成長している。井上氏は、社長就任時の挨拶で「私は日本の中で一番目立たない社長を目指す」と宣言したそうで、今でもそのことを心がけていると語っていたことが印象的だった。

 約1時間のインタビューの後、社長自らの運転で、緑豊かな3万坪のガーデンに本社社屋や工場、アンテナショップ、美術館、ホール、レストランなどの施設が点在する「かんてんぱぱガーデン」を案内いただいた。中小企業でここまでの環境を整えている企業を他に見たことがない。あらゆる意味で、唯一無二の実にユニークな企業である。

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