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<事例―5 ニッサンGT-R(B2C)>フェラーリやポルシェを超えるクルマをつくるという命題に応えた取組み…それがニッサンGT-R

酒井光雄 成功事例に学ぶ繁栄企業のブランド戦略

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画像出典:日産自動車HP http://www.nissan.co.jp/

 

●ニッサンGT-Rとはどんなクルマなのか

 2003年12月に「ポルシェやフェラーリを超える性能を持った車を、開発期間3年、スタッフ50名(開発にかけるヒト・モノ・カネ・時間は従来の半分)で行う」とカルロス・ゴーンCEOが宣言した時から、ニッサンGT-Rの開発がスタートしました。
 
 ニッサンGT-Rの販売価格は875万7千円(現在の販売価格で税込み金額)・963万9千円・978万6千円の3タイプで、量産スポーツカーとしてニュルブルクリンクサーキットで世界最速の7分20秒台を記録し、アウトバーンを時速300キロで走っても助手席の人と会話ができるマルチパフォーマンスカーです。
 
●日産が同車を開発したプロジェクトの経緯
 
 ニッサンGT-Rの開発プロジェクトに参画した社員たちはエリート社員ではなく、経営不振から早期退職してトラックの製造しか知らない人が8割、日産のアウトローが2割という異例の構成です。エリートは失敗を恐れ、できない理由を挙げることに長けているので採用せず、捨てるものがなく新たな道を切り開けるアウトローを敢えてキャスティングしたそうです。
 
 彼らは「正直(事実)」と「基本(本質)」という2つの目標を掲げ、短期間に効率よく仕事を遂行するためメンバーの行動分析を行い、徹底して業務の効率化を図り、プロジェクトに取組みます。
 
●ニッサンGT-Rがブランド力を向上させた取組み
 
 大衆車と高級車を販売会社毎に分けているトヨタと違い、日産は軽自動車から高級車まで同じディーラーが販売しています。しかし800万円を超えるニッサンGT-Rでは、購入できる人が限られます。そこで彼らが採用した販売方法は、GT-Rの性能を維持できるサービス工場を持ったディーラー(日産ハイパフォーマンスセンター)で限定発売する方法です。
 
 またニッサンGT-Rの商品説明には開発責任者が顧客に直接説明し、ヨーロッパから中近東、そしてアジアまで彼らは出掛けて行きます。さらに中東では開発に携わったドライバー自らが運転するGT-Rに顧客を乗せ、性能を体験してもらうことまで実践します。
 
 さらに通常の車は5年サイクルのモデルチェンジが一般的ですが、毎年進化させる「イヤーモデル制度」を採用。しかも顧客が望めば最新モデルの性能や機能に進化させることができる「バージョンアップキット」も用意します。
 
 この対応は時間が経過しても価値が劣化しない恒久品(高級品であるだけでなく、恒久的価値を備えるという意味)としてのポジションを実現するためでした。
 
 過日2014年モデルの発表が行われ、価格は905万1000円からだと発表されました。また高性能スポーツ車ブランド「NISMO(ニスモ)」の基艦車種となる新型「GT-Rニスモ」の価格は1501万5000円で、年間販売目標は世界で200台、国内で60台です。
 
 
ニッサンGT-Rの事例に学ぶこと>
新型が登場すれば陳腐化する自動車市場にあって、「恒久品」という概念を導入し、最新モデルの性能や機能に望めば進化させられる「バージョンアップキット」というサービス商品を開発。さらに販路を限定し、商品説明には開発メンバーを登用するなど、徹底したこだわりがニッサンGT-Rの見えざるブランド価値を向上した。
 
 

<事例―4 リーデル(B2BとB2C)>購入頻度が限られる食の容器市場で、独自の方法で需要を喚起しながらブランド力を高めた企業・・・それがリーデル前のページ

<事例―6 東レのアルカンターラ(B2B)>高級車市場のシートや内装材に絞り込んで、ブランド化に成功した人工皮革…それが東レのアルカンターラだ次のページ

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