ご承知のように1947年に生まれた団塊世代の先頭が60歳になった年が2007年で、その50兆円ともいう退職金の運用先が注目されたのが2007年問題です。これに続き今、2010年問題が注目されています。
これは医薬品特許の有効期間が20年間なので、1990年代に開発され現在の稼ぎ頭である医薬品特許が、2010年から相次いで切れる問題を指します。問題は特許切れ医薬品に続く大型新薬の開発が滞っていることです。安価な後発薬に収益を圧迫される医薬品メーカーは、ますます研究開発費負担が重くなるという危機も意味します。
新薬開発が滞る原因は、第1に開発が容易な治療薬は開発し尽くされ、ガンやアルツハイマー等の難解な分野が残っていること。第2に安全規制が厳しくなり過ぎて、研究開発の時間と費用のハードルが高いこと。第3に合併による企業規模の大型化が研究開発者を医療現場から遠ざけ、ホームラン狙いの大型開発に研究体制も偏っていることです。
2010年問題により、ガンや認知症患者が待ち望む治療薬開発が進まない事態は、国民の期待からかけ離れています。マクロ経済面でも、効能の高い新薬を開発することで、膨張する医療費用を抑制して日本を支える予定だったにもかかわらず、医薬品業界が地盤沈下してしまっては、財政再建も科学技術立国も危うい状況となります。
医薬品業界は財務内容も優良な高配当企業が多数あるので、資産運用でも注目度の高い業界です。私たち個人投資家も2010年問題をしっかり認識すると同時に、日本が世界に誇るiPS細胞(新型万能細胞)研究等の成果を期待して待ちましょう。さらに、資産運用を通じて医薬品業界を応援することは、日本の科学技術立国の推進と社会的責任投資の道にも通じると言えるでしょう。