2008年9月のリーマンショックから早3年。立ち直りかけた世界経済でしたが、さまざまな理由から8月以降、世界の金融市場が混乱し、資産運用を取巻く環境に不透明感が増しています。現時点の主要なリスク(不確実性)要因を確認してみましょう。
1.米国国債の史上初の格下げ
連邦債務の上限引上げに関する政治的混乱等を理由に、元利支払の安全性に関する信用
格付けが最上級(AAA,トリプルA)だった米国国債の格付けが引下げられました。これを発端にドルの信認が低下し、投資資金が株式市場から引揚げられて世界同時株安になると共に、安全通貨と呼ばれるスイスフラン・円・金などへの資金逃避が起きています。
2.欧州諸国の財政問題がギリシア・ポルトガルから主要国へ拡大
過大な政府債務による財政破綻を心配するソブリンリスク問題は、ギリシア・アイルランド・ポルトガルなどから、より経済規模の大きなスペインやイタリアなどに波及しました。両国の国債利回りが急上昇し、その国債を大量保有する銀行が多い独仏にも動揺が拡大しています。抜本的な解決策が先送りされ続け、金融システム不安は今後も解消する目途が立っていません。
3.米国の住宅市場の低迷、失業率の改善遅れなどから景気後退か
世界同時不況の引金になった米住宅価格の下落が止まらず、失業率も9.2%と高止まり。一方、ガソリンや食品価格が値上りして個人消費が停滞しています。連邦政府も地方政府も財政悪化により景気対策に手詰まりで、金融政策も超金融緩和状態では効果が期待できず、景気後退入りが懸念されています。
4.新興国のインフレと中国の不動産バブル崩壊懸念
旺盛な内需に対し資源の供給制約もあって、中国やインドの物価上昇率が高まり、政策金利引上げによるインフレ抑制が続いています。特に中国は7月の消費者物価上昇率が6.5%に達し、購買力低下が景気の下押し要因になっています。不動産価格上昇を抑制するための金融引締め策も、急激なバブル崩壊を招かないよう微妙なかじ取りが求められます。
3年前に世界経済を大恐慌突入から救った先進国の大規模な財政出動は、その時のつけが回って財政悪化を招き、今回の危機の原因になりました。リーマンショック時、いち早く景気回復して世界経済を牽引した新興国経済が、今回は変調を来たしていることも現在直面する危機を手強いものにしています。