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第67回
当たってしまった「そんなバカな?」と思われた2016年《3大予言》
~「安値ミクス」「リーマン級危機」「イギリスEU離脱」が導火線で飛び火?!~

次の売れ筋をつかむ術

 

 
2016年の上半期に発表された、3つの「そんなバカな?」と思われた予言が当たってしまった。
 
●安倍ノミクスならぬ「安値ミクス」が2016年前半「ヒット商品」の横綱?
 
2016年6月8日に、「日経MJ」(日経流通新聞)が発表した、
2016年前半の「ヒット商品」の東の横綱に「安値ミクス」が選ばれた。
 
安倍ノミクスの安倍を安値に変えて風刺した日経による造語だが、
発表直後、突然出てきた「安値ミクス」という言葉に、ネット上は戸惑う声があふれた。
 
※実際の記事は以下の通り。
 
2016年上期ヒット商品番付――安値ミクス、価値つくる。
[ 2016年6月8日/日経MJ(流通新聞)] 低価格路線にカジ、マイナス金利の恩恵
 
アベノミクス?いえいえ今年は「安値ミクス」です。デフレ脱却どころか、
今年の消費者は支出を厳しく"精査"。
「安値政策」の外食や小売りに支持が集まり、消費増税も吹き飛んだ。
 
ただ、マイナス局面でも消費者はしたたかに「お得」と「楽しさ」を探し出す。
2016年上期(1~6月)のヒット商品番付は、逆境を価値へと転じるような商品・サービスを選んだ。

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東の横綱は「安値ミクス」。
アベノミクスで盛り上がった「ちょい高消費」はどこへやら、
消費者が再び安値を求める様子を命名した。
ユニクロの値上げはしくじり、しまむらやディスカウントストアなど安さが強みの店の客足が伸び、
外食は割安メニューが広がる。

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吉野家ホールディングスは、4月、豚丼を4年ぶりに復活させた。
牛丼より50円安い値段が人気を呼び、2カ月で年間計画の50%にあたる1000万食が売れた。
バーガーキング・ジャパン(東京・渋谷)が5月に発売した490円のセットメニューも、
想定の5割増しの出足だ。

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4月には電力小売りが自由化。
新電力への契約切り替えは5月末時点でまだ約100万件(全体の1・7%)だが、
各社がサービスを競い「家計の固定費も減らせるかも」との期待が膨らむ。

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割安な旅の足、高速バスも使いやすくなった。
新宿駅南口に誕生した「バスタ新宿」が東の大関。
19カ所に散らばっていたバスとタクシーの乗降場を集約。
飛行機や新幹線より低価格で300都市とをつなぎ1日2万~4万人が行き来する。

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(中略)
 
アベノミクスの高揚感が続いた2015年から一転、2016年は様々な不祥事も含め重苦しさが目立つ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
 
「日経MJ」の「安値ミクス」に関するニュースは、
日本経済新聞社系のテレビ東京の「WBS」(ワールドビジネスサテライト)でも大きく報じられた。

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発表直後、SNSは、主に異論であふれかった。
 
 「安値ミクスの違和感は私だけでは無いだろう」
 「横綱ワードに安値ミクスって単語が出て来てたけど、いつ流行ったの?」
 「安値ミクスって、これから流行らせようとしてる」
 「安値ミクスの"今作りました"感半端ねえな日経w」
 「いくらなんでも、横綱はないだろう?」
という声が大半だった。
 
 「日本経済新聞ともあろう経済情報中心のメディアが、
  再びデフレに誘導したいのか?自分で自分の首を絞めるだけだろう」
と思う人も多かっただろう。
 
しかし、その後の急速な円高と熊本地震による消費マインドの低下なども手伝い、
デフレに舞い戻りしそうな状況があちらこちらに見受けられるようになって来た。
 
今や全国各地で、「安値ミクス」に便乗した
GMS(スーパー)のチラシや小売店の店頭のサインが出て来ている。

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「安値ミクス」が2016年の「ヒット商品」の横綱だと断じた日経の予言は、
たしかに現実化しつつあるようだ。
 
 
●サミットでの安倍首相の「世界経済リーマン級危機前夜」発言に世界が失笑?
 
2016年5月26日、27日の2日間、安倍晋三首相が議長を務め、日本では8年ぶりのサミットとなる、
G7サミット・主要7か国首脳会議「伊勢志摩サミット」が、三重県志摩市の賢島で開催された。

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G7とはGroup of Sevenの略で、
フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7つの先進国のことだ。
 
イタリアとカナダが加わる以前は、
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本の5か国でG5と呼ばれていた。
 
1975年にイタリアが参加して、第1回サミット(先進国首脳会議)が開催されG6となり、
その後、1976年にカナダが加わって第2回サミットが開催されG7となった。
 
カナダ以外の6か国は20世紀前半までの帝国主義時代における列強国に当たり、
世界の"Great 7"でもある。
 
ただ、G7とは言っても、1980年代から90年代には、
この7か国が世界経済に占めるシェアは3分の2もあったが、
今や新興国に押されて全体の半分にも満たない。
 
現在では国際的関心もG20に比べると希薄になっており、
おじいちゃん・おばあちゃんになった老大国ばかりの"Grandparents 7"だという見方もできる。
 
しかし、腐っても鯛と言う通り、世界最大の政治経済ショーであることは間違いない。
 
伊勢志摩サミットのメインセッションに参加したのは、
7か国の首脳と、EU(欧州連合)の委員会委員長、および、理事会議長の9名だった。

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このサミット初日の世界経済をテーマとした第1セッションで、
安倍首相は、現状の認識に関する参考データを示しつつ、
「世界経済はリーマンショックの前と似た状況」だとの認識を示した。

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示されたデータは、エネルギー・食料・素材など商品価格が
リーマンショック前後での下落幅である55%と同じで、新興国の投資伸び率も
リーマンショックより低い水準まで低下しているとする以下のグラフだったとされる。

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安倍首相はこうした説明を踏まえて、
 「リーマンショック直前の洞爺湖サミット(2008年7月7日~9日、福田康夫首相当時)で
  危機の発生を防ぐことができなかった。その轍は踏みたくない」
と強調。その上で、
 「世界経済は分岐点にある。政策的対応を誤ると、危機に陥るリスクがあるのは
  認識しておかなければならない」
と話した。
 
この安倍首相によるリーマン級の経済危機再燃を警戒する発言については、
 「一体何をもってリーマンショック前と似た状況なのか理解に苦しむ」とか、
 「2017年4月の消費税率10%への引き上げ先送りの口実とする狙いが透けて見える」などと、
国内外から冷ややかな声が上がった。
 
海外の論調も、
 「2016年の年明けに急落した原油価格がやや持ち直し、
  金融市場の動揺は一服しており、アメリカは追加利上げを探る段階」
といった意見が多く、安倍首長が議長だったにもかかわらず、実際の首脳宣言では、
 「リーマン級危機前夜」の意見はまったくと言って良いほど取り上げられなかった。
 
 「世界経済は回復基調が続いているが、成長は引き続き緩やかでばらつきがある。
  新たな危機を回避するために、適宜、あらゆる政策対応を執ることを確認する」
といった穏健な表現に留まった。
 
欧米首脳もメディアも、この「リーマン級危機前夜」には一様に批判的だった。
 
先進国各国に経済対策を打ち出してもらいたいはずであるアメリカの主要経済メディアCNBCも、
「増税延期計画の一環」「あまりに芝居がかっている」などとする市場関係者らのコメントを伝えた。
 
安倍首相のこの発言があった経済セッション後の昼食会で、
財政規律を重視するドイツのメルケル首相は、ワインを傾けながら安倍首相に冗舌に反論した。
会合後も記者団に対して、メルケル首相は、「世界経済はそこそこ安定した成長を維持している」
と釘を刺した。

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フランスのルモンド紙は、
 「安倍氏は深刻なリスクの存在を訴え、悲観主義で驚かせた」
と報じ、
 「自国経済への不安を国民に訴える手段にG7を利用した」
との専門家の分析を紹介した。
 
また、首相が提唱した財政出動に関する協調については、
 「メンバー国すべての同意は得られなかった」
と総括した。
 
 
最も発言に対して手厳しきかった国の一つがイギリスだった。
キャメロン首相は、「危機とは言えない」と明言した。

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今や日本経済新聞社の傘下に入ったイギリスのフィナンシャル・タイムズも、同国政府幹部の話として、
 「キャメロン首相は安倍首相と同じ意見ではない。世界経済が着実に成長する中、
  安倍首相が説得力のないリーマンショックが起きた2008年との比較を持ち出したのは
  日本政府の増税延期計画を意味している」
と指摘した。
 
また、イギリスの公共放送局BBCは、
 「G7での安倍首相の使命は一段の財政出動に賛成するよう各国首脳を説得することだったが失敗した」
と報じた。そして、
 「安倍首相はG7首脳を納得させられなかった。今度は日本の有権者が安倍首相に賛同するか見守ろう」
とまで断じた。
 
しかし、奇しくも、そのイギリスのキャメロン首相が、
その後、たった1か月後に、退陣を余儀なくされることになろうとは、一体、誰が予測し得ただろう?
 
 
●「イングランド銀行を潰した男」が"暗黒の金曜日"を予言!
 
そう、ある世界的投資家はイギリスのキャメロン首相の退陣を暗に予言していた。
 
ウォーレン・バフェット氏、ジム・ロジャーズ氏とともに
世界3大投資家の一人とされるジョージ・ソロス氏だ。

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ソロス氏が好きか嫌いか、良いか悪いかはここでは論じない。
 
しかし、彼の投資哲学には一理ある。
 
「市場は常に間違っている」というのは強い私の信念である。

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「もっともらしい話は疑ってかかれ。予期せぬことに賭けるべし」

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ソロス氏と言えば、1992年9月のポンド危機、いわゆる、"ブラック・ウェンズデー"で、
ポンドの為替レートがドイツのマルクに対して過大に評価されているとの考えに基づき、
空売りを仕掛け、15億ドルもの利益を得た。
 
この結果、イギリスのポンドを欧州為替相場メカニズム(ERM)から脱退に追い込んだことから、
「イングランド銀行を潰した男」(The Man Who Broke the Bank of England)の異名を取る。
 
しかし、80歳を過ぎ、2011年にて、ダボス会議(世界経済フォーラム)で、
公式に投資から引退することを表明していた。
 
ところが、そのソロス氏が、2016年になって、85歳にして、突如、表舞台に復帰した。

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2016年6月23日に実施されたイギリスのEU(欧州連合)からの離脱か残留かを問う国民投票直前の20日、
イギリスのガーディアン紙に寄稿し、
「EU離脱が選択されれば、ポンドの為替レートは急落し、金融市場や投資、物価、雇用に、
 即、深刻な影響を及ぼす」と警告した。
 
そして、
「その際の通貨急落は、私のヘッジファンド顧客が幸運にもかなりの利益を得た
 1992年の15%の下落よりも大きく破壊的なものになるだろう」と語った。
 
また、
「イギリスの有権者はブレグジット(Brexit=英国のEU離脱)の本当のコストを大幅に過小評価している。
 あまりに多くの人がEU離脱に投票しても自らの財務状況に影響がないと信じている。これは甘い考えだ」
と述べた。

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ソロス氏は、「EU離脱が決まれば、今週末は"暗黒の金曜日"になる」と予想した。
 
ところが、6月23日の国民投票を目前にした16日、
EUへの残留運動に取り組んでいた労働党の女性議員、ジョー・コックス下院議員(41)が
男に銃で撃たれた後、刃物で刺され殺されるという痛ましい事件が起こった。
 
ロイター通信などでは、この殺害を受けて、土壇場で同情票が集まり、事件後の世論調査では、
移民問題でリードを許していた残留派が離脱派にわずかながら優位に立ったと報じられた。
 
ブックメーカー(政府公認の賭け業者)の大手でも、
ベットフェアの賭け率がEUに残留する確率は74・6%となり、17日時点の60~67%から上昇した。
 
6月20日には、最新の世論調査で残留支持が勢いを取り戻した結果が出て、ポンドは急上昇し、
1日の上昇幅が2009年以来最大となった。
日本やアメリカの政府や中央銀行も、離脱することはないだろうと高をくくっていた。
 
しかし、国論を二分した国民投票は、離脱が51.9%、残留が48.1%という大接戦の結果、
僅差でイギリスのEU離脱が決定してしまった。

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大方の予想に反する意表を突いた結果だっただけに、その衝撃は大きく、
直後から現在に至るまで世界経済を揺さぶり続けている。
 
 
●生の情報網を広げ、五感を研ぎ澄まし、常識を常に疑って考え、行動しよう!
 
その結果、2016年の上半期に発表された、一見バラバラだった3つの「そんなバカな?」と思われた予言が、
仕掛け花火のように導火線で飛び火し、炸裂した。

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イギリスのEU離脱は、すぐさま、ポンド安と世界同時株安を引き起こした。
 
ポンドは対ドルで、1985年以来の記録的な水準にまで下落した。そして、株式市場は、
日本が7.92%、ドイツが6.8%、フランスが8%、スペインが12.4%、イタリアが12.5%、アメリカが3.6%と、
大きく下落し、なおも混乱が続いている。

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世界各国の市場関係者は、「リーマンショック並みの衝撃」と口々に懸念を表明した。

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本当に、伊勢志摩サミットで安倍首相が述べた「リーマン級危機前夜」であるかどうかはまだわからないが、
少なくとも、世界の政治経済の枠組みを大きく変化させるきっかけと成り兼ねない、
歴史的転換点となる"危機"を招いたことは疑うべくもない。
 
皮肉にも、イギリス発の世界的出来事によって、
「リーマン級危機などあり得ない」と安倍首相の予言を揶揄したキャメロン首相は退陣を余儀なくされた。

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ロンドン発の大津波は、地球の反対側から、すぐさま、東京に押し寄せた。
 
円は対ドルで、一時、2013年11月以来の1ドル=99円台に突入し、
日経平均株価は1300円を超える下落を記録した。
 
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急速な円高は、当然、輸入商品価格を下落させ、デフレに逆戻りするリスクをはらんでいる。
 
また、イギリスの離脱が停滞局面におけるシンボリックな出来事となり、
消費者や企業のマインドに影響し兼ねない。
 
ドル・円相場が、いわゆる、"黒田バズーカ"と呼ばれた日銀の量的緩和政策の実施前に逆戻りし、
消費や設備投資の面でデフレマインドを再燃させる恐れもある。
 
報道や他人の言うことに一喜一憂してはならないが、
昔からの投資の格言にある通り、「人の行く裏に道あり花の山」である。
 
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私自身、毎週末、健康管理を兼ねて、定点観測で都内のまちを歩き回っている。
そうすると、明らかにデフレが復活し、「安値ミクス」が来ていることは肌で感じていた。
 
また、行きつけのジムやアイリッシュパブなどで顔見知りのイギリス人の友人から、
英国内の移民に対する反感が相当に根深いことを度々聞かされ、
「これは日本人の想像以上にかなりヤバい」と思っていた。
 
イギリスのEU離脱が決すれば、急激な円高は避けられないのは明らかだった。
 
自分自身の生の情報網を広げ、五感を研ぎ澄まし、
常識や固定概念や既成概念を常に疑って考え行動することが大切だ。
 
日経MJ・安倍首相・ソロスによる、「そんなバカな?」と思われた2016年《3大予言》が
連動して実現したことは、その教訓を如実に表している。
 
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