インフォマートはBtoBプラットフォームに特化した企業で、BtoBプラットフォームでは国内最大級の取引先を抱える企業である。現時点の主たる顧客は外食産業と業務用卸であるが、食品メーカーや食品とは無関係の業界にも顧客層は広がっている。
サービス別に売上規模の大きい順に見ると、受発注(外食と卸間)、請求書(ES事業)、規格書の順であり、前期は3事業とも二ケタの伸び率となった。特にES事業が26.9%増と大きく伸びたことが業績をけん引した。同社ビジネスは低価格でパッケージを販売し、月額課金型のシステム使用料で稼ぐパターンであり、売上増がストレートに利益増に結び付く。また、カスタマイズを押さえることで、サービス使用料が安いため、継続的に使用する顧客が多い。
商談の電子化からスタート
現在、7つのプラットフォームを提供しているが、スタートは21年前の商談からである。販路を持つ顧客と製品を持っている顧客をネット上で結び付けることからスタートした創業事業であるが、現時点の売上規模は小さい。
その後、商談の顧客基盤に対して、順次、受発注、規格書、請求書などのサービスを売り込むことで成長してきた。直近では2015年1月にサービスを開始した請求書が柱の一つとして収益化のめどが立ち、さらに2018年7月に開始した契約書もスピーディーな立ち上がりを示している。請求者からは従来の顧客基盤である外食産業や業務用卸以外の食品と無関係の顧客へのすそ野を広げている。
同社の創業来の考え方は、顧客の不便をいかにローコストで解決するかということである。そのコンセプトで、次々とプラットフォームを開発することで、前期までの9年間に年率11.2%の売上成長と13.9%の営業利益成長を遂げてきた。
有賀の眼
業種分けということを考えた場合、一般的なイメージは、建設株、化学株、小売り株、卸株、外食株、電機株、サービス株、自動車株などと並んで、ネット株があるというイメージでとらえられているかもしれない。
しかし、実際は、リアルな市場に小売り、卸、サービスなどがあるのと並行して、ネット市場に小売り、卸、サービスなどがあるイメージが正しいものである。つまり、従来ある市場をネット技術によって奪って行くというイメージが理解しやすいだろう。
もちろん、リアルにはない市場を作るネット企業というものもあるが、企業数で言えば、むしろリアル市場を代替する企業の方が多いと思われる。その意味では、一見ネットビジネスとは無縁のビジネスでも常にネット企業の研究は怠れない。なぜなら、ある日突然、ネット企業がリアルビジネスのライバルとして出現するかもしれないからである。
さて、同社はこの10年ほどで高成長を遂げてきた会社であるが、同社のビジネスの成り立ちを考えると、まさに顧客の不便や不満をネット技術で解決しようという意図が読み取れる。その顧客の不便や不満をネット技術によってローコストで解決しようという試みである。
これはまさにリアルなビジネスにも相通じるものであり、顧客の不便や不満を解決することこそまさにビジネスの王道と言えるものであろう。その結果、長期にわたって着実な高成長を遂げられたわけである。