「今、フィンテックが熱い!」
そう言われても、今一つピンと来ない方もいるかもしれない。
しかし、そんなあなたもPayPayやLINE Payなどキャッシュレス決済は当たり前のように使っていないか。
Amazonのリコメンド商品を思わず買ってしまった経験は?
或いは、クラウドファンディングで今までにないアイテムを手に入れた。
このような、ほんの数年前までは想像も出来なかった行動が今では当たり前になって来ている。人々の行動様式を変えて、ビジネスの在り方そのものまで変化させている、その原動力となっているのがフィンテックなのだ。
今後のビジネス展開を考える上でも、フィンテックの中身を知る事は重要である。
フィンテック(Fintech)とは、Finance(金融)とTecnology(技術)を組み合わせた造語であるが、発端は、2008年のリーマンショックによってリストラされた金融エンジニアたちがフィンテック開発に向かった事がきっかけと言われている。そして、ちょうど同じ時期にiPhoneやAndroid端末が発売され、スマートフォンが普及する波にも乗って一機に拡大してきた。
一口にフィンテックと言っても様々あり、大まかには下記の11分野に分けられる。
・スマート決済
・投資・資産運用・ロボアドバイザー
・仮想通貨
・家計管理・アドバイス提供(PMF:Personal Financial Management)
・ソーシャルレンディング
・クラウドファンディング
・保険
・融資・ローン
・会計・財務
・送金・割り勘
・金融情報
一つ一つの内容説明については割愛するが、フィンテックが拡大普及している全体を通してのキーポイントは5つある。
① スマホ仕様
フィンテックがこれほど普及してきた背景としては、みんながスマホを持つようになり、そのスマホで使える仕様のサービスを開発提供してきたところにある。
スマホ1台あれば、キャッシュレス決済からECサイトでの買い物、投資やクラウドファンディングへのエントリー、インターネットバンキンなど簡単便利に使う事ができる。
スマホを通じて一人一人が金融取引を身近なものと感じ、簡単便利に活用できるようになった事は大きい。
② 簡単決済
フィンテックによって目に見える形で簡単便利になったのが決済だ。キャッシュレス決済は現金を持ち歩くことを不要にし、ネット上での決済もさまざまな方法が生み出されて簡単になり、ECサイトでの買い物だけでなく、地方の隠れた名産品を手に入れたり、逆にオリジナル商品を広くネット販売することも容易になるなど、決済の進歩が購買行動の幅、ビジネスの領域を広げている。
③ 小口大衆化
フィンテックは、様々な金融取引や商取引を小口化や分割払い形式(サブスクリプション)にして個人での参加を容易にしている。例えば株式投資では、貯めたポイントや数百円といった小銭の単位で株に投資出来るようになったおかげで、女性や若者といった新たな顧客層の獲得につなげている。クラウドファンディングも少額からの参加・支援を広く募集するものが多く、小口大衆化で成り立っている。
④ データ活用
フィンテックが成長している背景にはテクノロジーの発展があるが、中でもデータ分析技術の進歩による成果は大きい。
Amazonによる商品リコメンドなどもデータ分析によるものであるが、融資における審査をAI分析で行っている金融機関も出てきている。AI自身が口座の資金の動きを学習し、融資の貸し倒れの確立を算出して融資可能かどうか、金利をいくらにするかまで判断しているという。
フィンテックによる取引や情報は全てデータとして蓄積可能なことから、これから更にデータを活用した新たなサービスも生まれてくるだろう。
⑤ 新興ベンチャー企業の活躍
フィンテックは元々、リストラされた金融エンジニアたちが開発を始めたことは既に述べたが、今でも新興ベンチャー企業の参入が続いている。政府としてもフィンテックを成長戦略と位置付けており、既存の金融機関に対してもオープンAPIによる外部企業との連携を促している。ビジネス領域の拡大も続き、まだまだ新規参入の余地は大きい。
ユーザー目線での新たなサービス開発は、既存の大企業よりも新興ベンチャー企業の方が柔軟性もあり、強味を発揮している。
フィンテックの効果と活用
このようにフィンテックは、スマートフォンの普及という時代の大きな転換点をテコに、ユーザー目線の斬新な発想と最新テクノロジーの活用によって、使い勝手の良い、取り入れやすいサービスを開発し、日々の生活の中に浸透してきた。
金融取引というものは難しいもの、面倒なものという印象を、簡単便利で身近なものというように変化させ、この変化が人々の購買行動に広がりを持たせ、新たな金融取引を活性化させている。
そしてこれから、この流れの勢いは更に強くなり、様々な新たなサービスが生み出され、マーケットは拡大するだろう。
フィンテックとの相性の良し悪しはビジネスによってさまざまあるが、人々の行動様式の変化をしっかり認識し、自社事業に活かすことは重要だ。